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広角レンズって気持ち悪い?正体は2種類の歪み。

写真において「歪み」と呼ばれるものには大きく分けて2種類あるのはご存知でしょうか。それは「光学的な歪み(歪曲収差)」と「パースペクティブ(遠近感)による歪み」です。今回はこの2種類の歪みについて詳しく解説していきます。
広角レンズを使った写真で感じる「歪み」には、独特な気持ち悪さや違和感を覚えることがあります。特に建築写真や風景写真、さらにはポートレートにおいても、この「歪み」が作品の印象を大きく左右することがあります。この歪みの正体を理解し、どう対処すべきかを知ることで、広角レンズをより効果的に使いこなすことができるようになります。

初めましての方はじめまして!
いつも読んでくださってる方はこんにちは!こんばんは!
どうも、建築フォトグラファーの藤川です。
Xでは建築写真キャット🐈というアカウントで活動しています。
建築写真撮影を生業としており、普段は住宅や店舗の竣工写真や不動産物件写真など関東を中心に建築を撮って生きております。

では早速本題です!



1. 光学的な歪み=歪曲収差による歪み

まずは「光学的な歪み」について説明しましょう。光学的な歪みはレンズそのものの設計や特性に起因するもので「歪曲収差(ディストーション)」と呼ばれます。これはレンズを通過する光の屈折によって発生し、特に広角レンズで顕著に見られる現象です。

歪曲収差の種類

光学的な歪みには、さらに以下のような種類があります。

樽型歪み
画像の中心が膨らんで、四隅が内側に引っ込むように見える歪みです。広角レンズで最も一般的な歪みで、直線が弧を描くように見えるのが特徴です。
糸巻き型歪み
画像の四隅が外側に引っ張られるように見える歪みで、特に望遠レンズやズームレンズのテレ端で見られます。広角レンズではあまり見られないものの、一部のズームレンズでは広角側でもこの歪みが発生することがあります。
陣笠型歪み
樽型と糸巻き型が混ざり合った歪みで、直線がS字を描くように見えるものです。ズームレンズや特殊な広角レンズで発生することがあります。

これらの歪曲収差はレンズの設計や製造の段階である程度コントロールされていますが、完全にゼロにすることは難しいため、撮影後に画像編集ソフトで補正することが一般的です。
ミラーレス時代となった現在ではこれらのディストーションをカメラ内で電子補正をかけることを前提にレンズを設計することも増えてきました。

電子補正前:樽型収差が目立つ写真
電子補正後:歪曲収差の目立たない写真

歪曲収差の気持ち悪さの正体

光学的な歪みが写真に与える「気持ち悪さ」の原因は、普段の視覚体験と異なる視覚情報を脳が処理しようとするからです。特に建物の直線が歪んでいると、見慣れた構造物が違和感を持って見えてしまいます。このため、建築写真では歪曲収差の補正が非常に重要になります。

歪曲収差は無くすことのできる歪みです。あえて歪ませようという意図がない限りは丁寧に修正するようにしましょう。

2. パースペクティブによる歪み=遠近感の描写による歪み

次に「パースペクティブによる歪み」について説明します。この歪みは光学的なものとは異なり、「遠近感の描写」によるものです。広角レンズは視野角が広いため、画面内の被写体の大きさや形状が大きく変化します。これが「遠近感の歪み」として感じられるのです。

パースペクティブによる歪みの特徴

広角レンズでは以下のような特徴的なパースペクティブ効果が現れます。

被写体の誇張
広角レンズを使うと、近くの被写体が大きく見え、遠くの被写体が急激に小さくなるという「誇張された遠近感」が生まれます。

左下のカメラに近い部分ほど伸びた印象になる
本来はこのような写真は避けたい
このように手前に写り込みを無くすことで
遠近感による違和感を減らすことができる

垂直線の収束
垂直なライン(例えば建物の縦のライン)が、画像の上方や下方に向かって収束していくように見えることがあります。これが「逆台形」や「台形歪み」として表現され、特に高い建物を撮影したときに顕著です。

見上げて(アオって)撮った写真
下側・手前は遠近感により伸びている

パースペクティブによる歪みの気持ち悪さの正体

パースペクティブによる歪みは、人間の視覚的経験と大きく異なるため、「気持ち悪さ」や「違和感」を引き起こします。特に見慣れた被写体(建物や人物など)が意図しない形で誇張されてしまうと、写真を見る人が「現実感が損なわれている」と感じる原因となります。逆にこれを利用してダイナミックさを表現することも可能で、主に風景写真やポートレートなどで用いられます。

垂直を整えて撮った写真

パースペクティブによる歪みは歪曲収差と違って基本的に補正することはできませんが軽減する方法が3つあります。
・なるべく広角を使わない
・カメラの近くに目立つ被写体を配置しない
・トリミングで伸びている部分を無くす
これは完全には消せない歪みですが違和感に直結するものなので悪目立ちしないように心がけましょう。

3. 広角レンズの歪みと上手に付き合う方法

広角レンズの歪みを完全に無くすことはできませんが、上手に付き合うことでその「気持ち悪さ」を軽減し、むしろ作品に活かすことも可能です。

撮影時の工夫
被写体の配置や構図に工夫を凝らし、歪みを意識的に利用してダイナミックな表現を行うことができます。例えば遠近感を誇張することで、迫力ある風景写真を撮影することが可能です。
編集ソフトでの補正
撮影後にPhotoshopやLightroomなどの編集ソフトで歪みを補正することができます。特に建築写真やポートレートでは、直線を正しく表現するために歪曲補正を行うことが重要です。ポートレートにおける歪曲収差は被写体が通常より太って見えてしまう場合もあるので注意が必要です。
レンズ選び
歪曲収差の少ない高品質なレンズを選ぶことで、光学的な歪みを最小限に抑えることができます。また、シフトレンズを使用することでパースペクティブによる歪みを抑えつつ、正確な構図を保つことができます。

結論:広角レンズの歪みを理解して、表現の幅を広げよう

広角レンズによる歪みは写真表現において強力な武器にも、厄介な問題にもなり得ます。その正体を理解することで、撮影時や編集時に適切に対処し、意図的に歪みを利用することが可能になります。

「歪曲収差による歪み」と「パースペクティブによる歪み」のそれぞれの特性をしっかりと理解し、それらを無くすのか、それとも活かすのか、その写真にとって最適な表現をできるようになり、より魅力的な写真を撮っていきましょう。


今後も初心者の方向けの記事から、プロの建築フォトグラファーとしての専門的な記事まで幅広く発信していきますので、フォローといいねを是非お願いします!
それではまた次回の記事でお会いしましょう!!
みなさま、良きカメラライフを!!!

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