『アステリズムに花束を』を読んで(1)

 『アステリズムに花束を』という百合SFアンソロジーを現在読んでいる。タイトルに「読んで」と書いているくせにまだ読了していないのはなかなか詐欺臭いが「アンソロジーだし分割して書けばいいじゃん」ということでお目こぼしいただきたい。現在までに読み終えた4作のうち2作についてちょろっと書いていこうと思う。

キミノエスケープ

 主人公であるあなた以外の人間が消えてしまった世界。日々他人の家に泊まりあてもなく移ろうあなたはあるとき自分以外の人間の痕跡を見つける。それ以降あなたは「自分以外の人間」を追うこととなる。
 世界は時たま崩壊していく。他人が居ないうえに理由もなく起こるこの現象の不気味さが個人的には好きな世界観だ。主人公は見つけた他人からのメッセージがこれらの現象同様に無から生まれたものではないかと疑心暗鬼になるも、メッセージ以外の痕跡からその存在が妄想ではない確かなものだと信じて近づいていく。最後は砂浜にごく最近つけられた足跡を発見したことで確信へと至り後ろを振り向かない決心をして幕が下りる。
 この物語は徹底して一人称視点で話が進む。そして主人公は「あなた」である点が特徴的だ。そして何よりもう一人の存在は痕跡のみで直接的な描写は存在しない。その人物は徹底して一人称は「I(英語の一人称)」であるところに作為的なものを感じた。またこのことからこの人物が男か女かの情報があまりない。強いて言うならスキンケア用品の描写ぐらいだろうか?描写外の情報から対象が女性であると思わせるのは我々の先入観からかあるいは…。対象の人物のことしか考えていないあなたは実質対象に恋してるんだぞ、という作品でした。

四十九日恋文

 死んでしまった人物の霊魂と携帯を介して四十九日以内であれば短い文でやり取りできるという世界が舞台。事故で死んでしまった恋人と文通を行いながら四十九日を過ごす内容。送れる文章が1日1文字ずつ減るという制度のため、最初の49文字からやり取りできるテキスト量が減るのがポイント。やり取りの合間から二人の仲の良さがすごくよく伝わる作品で好きです(語彙力)。詩的な短文から何気ない質問、日常会話のようなやり取り、痴話話で1カ月を使い、そこから寂しがるのはちょっとリアリティがあるのかもしれないと思わされた。最後はお互い同じ考えだったのか同じ一文字を送信しあう。メール特有の送信できなかったよメッセージで繋がりが完全に切れたことを認識させられるのもリアリティを感じた。しっかりお別れが出来る世界観に魅力を感じました。

 時間の都合で速足+語彙力不足になったのでそのうち書き足すかも。もっと何回も読み込んでから書けよという話でもあるが。社会の歯車になった私には残念ながらそんな余裕はないのですよ。悲しい。やっぱり時間の有効活用できてねーじゃんというお話も…。うーん、悩ましいですなぁ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?