ライブイベントで短編集の読後感を得た

VTuber、Vシンガー、その他たくさんのバーチャルアーティストに焦点を当てたライブイベント「 #全国Vイベ 」その第二回、「全国Vイベ VTuber Music Festival vol,2」が先日開催されました。

そしてそのDay2ぶいおれんす!にて素敵なDJを披露してくれた皐月渚さんのDJにて表題のような感情になってしまったわけです。

セットリストはそれぞれの曲が独立して物語を想起させる空間を作り出しつつも皐月渚の手によってこの短編とも言うべき物語が纏め上げられていました。
配信全体を通してそれぞれの物語の期待、不安、まとわりつく焦燥感、諦め、達観、自己嫌悪、それでも手放せない期待、決意、さまざまな感情をその曲の追体験のような、あるいは届かないことを理解しながらもどこかで諦められない思いを主題とした短編集のような、およそ私が知っている「DJ」とは言い難い空間が流れていました。
その正体はVTuber、Vシンガー、バーチャルアーティストの仮想に対する解像度の高さやその経験から作り出される痛いほどに現実的な感情の立体化による、作品の浸透圧の高さにあるんじゃないかと考えさせられました。いずれの曲も激しい感情の起伏や劇的な展開を求めるものではなく、静かに流れる空間の中で確かに存在する数多の曖昧な感情をインスト、歌詞、動画そして歌唱力で見事に表現しています。
共通した要素を持ちつつも全く異なるストーリーを紡ぎ出す17曲を繋ぎ一つの作品として形作られるためには最後に流された2曲の存在が大きいでしょう。この2曲が他と一線を画しているのは決意、別れ、未来といった要素が曲中や作品そのもの、そしてその曲が持つ文化的側面に含まれ、与えられ、発現していることにあると思いました。特にOne Last Kissではメタモエさんによるカバーによって穏やかで且つ強かな表現がされていてシン・エヴァンゲリオン劇場版を見た私としては特別な感情を抱かざるを得ませんでした。
さながら短編集を一本読み終えたような読後感に浸ることができた今回の配信、DJや配信イベントに対する私の中の考え方を大きく変えたものになりました。

全国Vイベは無事終了しましたがtwitchにてアーカイブが残っていたり残っていなかったりします。3日間とも素晴らしい配信ばかりです。ぜひ覗きに行って感情になりましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?