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2025 昭和💯百年 004


パズー先輩は学年で言うと4つ上だから、
生きておられるなら51歳になられている。

1986年小学3年生だった私からすれば、
13歳で職業に就き、毎朝ラッパを吹き、
テレビもファミコンもない日常をひたすら
たくましく生きていることに本当に圧倒される。

そこに、誘拐と戦争と強盗という犯罪の
玉手箱に巻き込まれていくみたいな事が、
多重債務のように起きては繰り返す。

そんな非日常をパズー先輩はすんなり受け入れ
何なら解決していくのだからもう無理だ。

「えらいことになったな」普通はそう思う。

観ている間ずっと私は戸惑っていたのだが、
パズー先輩は構わず、他責にせず、焦らず、
当事者意識が異常に高すぎるあまり、
シータの家庭の事情にも深入りし、
ついにラピュタに到達してしまうのである。

これには参る。
トラウマになってしまう。

E.T.に対しては、
「そんなわけないやろ!」とツッコミつつ
志村けんには「志村うしろー!」と
手に汗を握って育った私なんかにとって
パズー先輩の腕白ぶりは異次元過ぎた。


数年後、
夏目漱石の『坊ちゃん』が、
腕白だとか、
二階から飛び降りてどうのこうのと
授業で習ったがパズー先輩に比べたら…。

ありふれた田舎の、しかも裕福なガキの、
小さい武勇伝に過ぎない気がして
ちょっと物足りなく思っていた。

昭和60年

二本立てで観たのが「火垂るの墓」だ。
私も妹がいる兄だが、あんな兄は反則だ。

節子は衰弱し、
清太さんが苦心して手に入れたスイカを 
最期は食べ切れず亡くなってしまう。

清太さんは、
悲しみと絶望の淵にあって、
節子の分とは別の自分の分なスイカを
食べ切ったのが壮絶過ぎて怖い。

まだ昭和は終わっていない。

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