第6章:製造部のOKRに挑む
山田、田中、そして佐藤の3人は、製造部の改善に向けたミーティングや打ち合わせを頻繁に行っていた。カフェや製造現場、時には昼休みの食堂などで業務の合間に集まり、熱心に話し合う日々が続いていた。特に山田は、製造部の課題に関して田中に助言を求めることが多くなり、田中も快く対応していた。
「このOKRの目標、もう少し大胆に設定するべきだと思うんだよね」
と、ある日のミーティングで山田が言った。彼は製造部の目標設定について悩んでいたが、まだ具体的な案がまとまっていない。
田中は考えながら、ゆっくりと答えた。
「そうですね、山田さん。OKRのObjectiveは、ただの目標じゃなくて、野心的なものにする必要があります。業界全体をリードするような大きな目標です。たとえば、こういうのはどうでしょう?『業界をけん引する最高品質の製品を独自技術を磨きながら作り出す』。これくらいのインパクトがある目標を掲げると、製造部全体が一つの方向に進みやすくなると思います。」
山田はその言葉にじっくりと耳を傾け、深く頷いた。「確かに…大きな目標があれば、みんなの意識も変わってくるかもしれない。よし、その方向で考えてみる。」
佐藤も賛同して、「俺もそのほうがいいと思うよ。で、Key Resultはどうするんだ?」と尋ねた。
翌日、山田は製造部のOKR案を練り直していた。田中の言葉を受けて、彼はObjectiveを「業界をけん引する最高品質の製品を、独自技術を磨きながら作り出す」に設定することに決めた。しかし、Key Resultがまだ曖昧な状態だった。
「しかし、これをどう具体的に測ればいいんだ…」と、山田はデスクに座り、製造工程のデータを眺めていた。思案するうちに、彼は田中に相談することにした。
「田中、ちょっといいかな?」
山田は軽い調子で田中を訪れた。田中はすぐに応じ、
「もちろんです、山田さん。どうしましたか?」
と資料を受け取った。
「Objectiveはあれでいいとして、Key Resultをもっと具体的にしたいんだ。たとえば、製造工程のどこを改善すべきかとか、数字でどう測るかとか。」
田中は資料をじっくりと見ながら、指摘を始めた。
「まず、製造工程の特定部分を改善するのがいいですね。たとえば、特殊ネジの製造工程で時間を10%短縮する、あるいは廃棄率を5%削減する、といった具合に、具体的な数値目標を設定することが大事です。そうすることで、進捗がはっきりと見えるようになります。」
山田はペンを走らせながらメモを取った。「なるほどな…じゃあ、Key Resultは製造工程の時間短縮と廃棄率削減を目指すべきか。」
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社長!目的はなんですか!?
かつての栄光を失い、風に揺れる古びた看板が象徴する中島鉄工所。新しい風を起こすべく、若き社員たちはOKRという手法を武器に立ち向かう。内気…
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