本当の反復着床不全は?:3回連続した凍結正常胚移植の結果

Rate of true recurrent implantation failure is low: results of three successive frozen euploid single embryo transfers

参考論文
Pirtea, P. et al. Rate of true recurrent implantation failure is low: results of three successive frozen euploid single embryo transfers. Fertil Steril 115, 45–53 (2021).

反復着床不全(RIF:repeated implantation failure)は、体外受精において、40歳未満の方が良好な受精卵を4個以上かつ3回以上移植しても妊娠しないことを言います。反復着床不成功の原因として最も考えられるのは、受精卵側の問題(特に染色体異常)、そして子宮側の環境の問題、免疫学的異常が考えられます。最近では、PGT-Aにより正常胚を移植しても妊娠率が50%程と妊娠に至らないケースが多く、子宮側の環境の問題や免疫学的異常が予想よりも多いのではないかと言われるようになっています。そのためか子宮内の環境を調べる遺伝子検査(ERAや子宮内フローラ検査)が台頭しています。そこで本論文ではPGT-Aにより正常胚を3回連続して移植した際の妊娠率を調べたという内容です。つまり反復着床不全の患者さんにおいて、子宮側の環境の問題や免疫学的異常はどれくらい割合なのか調べることを目的としているわけですね。この論文は2020年のASRMで発表があって興味を持っていましたが、論文で読むことができるようになりました。

結果

2012-2018年のARTクリニックにおいて、4,429名の患者がエントリーしました。平均母体年齢は35.4±4.2歳でBMIは25.46±5.36kg/m2です。PGT-Aの結果、正常胚と判定された凍結胚移植を行った結果の移植率(Implantation rate)は、1回目の移植で着床に至ったのは3094/4429(69.9%)で、2回目の移植で着床に至ったのは457/764(59.8%)、3回目の移植で着床に至ったのは79/131(60.3%)でした。3回連続しての累積着床率は95.2%でした。同様に出生率(Birth rate)を見てみました。1回目の移植で出生に至ったのは2870/4429(64.8%)で、2回目の移植で出生に至ったのは481/885(54.4%)、3回目の移植で出生に至ったのは92/170(54.1%)でした。3回連続しての累積出生率は92.6%でした。心拍確認後の流産率は、1回目(7.2%)、2回目(8.8%)、3回目(12.7%)と移植回数で差はありませんでした。

考察

この論文では子宮形態異常を持たない患者において、正常胚移植することにより、子宮側の環境の問題、免疫学的異常が原因による反復着床不全の割合を算出しました。著者は、反復着床不全の発生率は不明であり、その病因に関与するとされる多くの因子の関連性は、まだ確定されていないと述べていますが、PGT-Aにより正常胚を3回移植すれば、92.6%の方が出生に至ることができており、子宮側の環境の問題、免疫学的異常が原因による反復着床不全は予想よりも低いかもしれません。着床不全患者のための様々な検査がありますが、過剰な検査を勧めないように患者様に適した検査を提供したいと思います。


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