胚盤胞が1個しかない患者にとって、PGT-Aは有益?

What to advise to patients with only one good quality blastocyst, PGT‐A or not? Outcomes of 2064 cycles

参照論文
Kahraman S et al. What to advise to patients with only one good quality blastocyst, PGT-A or not? Outcomes of 2064 cycles. J Assist Reprod Genet. 2022 Sep 20. doi: 10.1007/s10815-022-02617-7.

生検や移植に利用できる胚が1つしかない場合にPGT-Aを行うかどうかという問題は、ジレンマに陥ることがあります。生検中に胚が損傷するリスクが非常に小さいことでさえ、不安を生じさせます。一方、やみくもに胚を移植すると、自然流産や新生児の染色体異常のリスクが高くなります。流産の再発、異数性妊娠の継続、着床不全を繰り返すことは、カップルにとって非常に苦痛であり、それ以上の治療さえ躊躇することも考えられます。一方では、追加サイクルが可能でない限り、1個の胚が妊娠する唯一のチャンスである可能性であり、しかしながら流産は、子宮および子宮内膜に物理的な損傷を与える可能性があり、将来の妊娠に向けてリスクにさらされる可能性があります。以前にPGT-Aの真の利点は、無益な移植とそれに伴う時間の損失、流産や進行中の異数体妊娠の精神的負担を回避すると提案している論文もあります。そこで本論文では、胚盤胞が1個しかない患者にとって、PGT-Aは有益かどうかを評価しました。

結果

1個の胚盤胞しか得られなかった患者の、PGT-A群とNon PGT-A群の妊娠成績の比較解析を行なっています。
胚移植あたりの着床率は、PGT-A : Non PGT-A = 63% : 39.3%(p<0.001)。
胚移植あたりの生化学妊娠率は、PGT-A : Non PGT-A = 71% : 44.8%(p<0.001)。
胚移植あたりの臨床妊娠率は、PGT-A : Non PGT-A = 63% : 38.6%(p<0.001)。
胚移植あたりの流産率は、PGT-A : Non PGT-A = 25.3% : 31.2%(p=0.49)
胚移植あたりの出生率は、PGT-A : Non PGT-A = 51.1% : 29.6%(p<0.001)。

次に、妊娠率や流産率、出生率を決定する変数を、母体年齢やBMI、反復流産の有無、AMHの数値、卵巣予備能低下の有無、PGT-Aなどで調べて見ますと、母体年齢とPGT-Aが有意な変数であることがわかりました。
妊娠率では、母体年齢が35歳以下では43歳以上と比較して、臨床妊娠率が5.548倍、出生率が5.85倍高く、PGT-A群では、臨床妊娠率は3.907倍、出生率が3.45倍高く高いことがわかりました。流産率はNon PGT-A群では、1.943倍高いことがわかりました。

考察

PGT-Aでは、異数性胚移植のキャンセルにより、効果のないリスクの高い移植を防ぐことができ、結果として、治療期間の短縮、治療費の節約も期待できます。
本論文では、PGT-A群の80%の症例が胚移植を行わなかったため、開始された周期あたりを考慮すると、周期あたりの成果はNon PGT-A群と比較して低くなります。しかし、この数字は80%の胚が移植に適さなかったことを示しており、PGT-Aは無駄な移植、流産や、子宮や子宮内膜への物理的ダメージのリスクを防いだとも考えられます。臨床妊娠率および出生率は、PGT-A群がNon PGT-A群に比べ有意に高く。流産率はPGT-A群で少ないことが判明しています。胚盤胞が1個でもある場合のPGT-Aは、年齢に関係なく、臨床妊娠率や出生率を高め、流産率を減少させます。さらに、異数性胚移植の中止は、効果的でない、潜在的にリスクの高い移植を防ぐことができます。

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