PGDIS POSITION STATEMENT 2019

PGDIS Position Statement on the Transfer of Mosaic Embryos 2019

Background

PGDIS position statement 2019の目的は、現在の情報を見直し、モザイク胚の移植に関する事項を2016のposition statementから更新することです。

OVERVIEW OF NEW KNOWLEDGE

Incidence of mosaic embryos

モザイク胚の発生率は2-40%と様々ですが、多くは5-10%と報告しています。また一部のクリニックにおけるモザイク胚の高い発生率は、染色体以外の要因(アーティファクトによる)も考えられます。

Transfer outcomes from mosaic embryos

モザイク胚移植の最初に発表された研究では、いくつかのモザイク胚移植の結果、健康な生児が報告されています。この報告以降、多数のモザイク胚移植の研究が実施されました。モザイク胚は正常胚移植と比較して、健康な生児を獲得する可能性はありますが、着床率や妊娠率の減少および流産率の増加と関連している可能性が示されました。モザイク率40%未満の移植は良好な成績を示しましたが、モザイク率40-80%の胚は妊娠に至る可能性が低い結果となりました。

Genetic analysis of mosaic blastocysts

異数体と診断された胚を再解析する研究では、再解析結果と元の結果の高い一致率(>95%)を示しています。最初の検査でモザイク率が高い場合(40-80%)、再検査でも同様にモザイクが見られるました。しかし、モザイク率が低い場合(<40%)、再検査の一致率が低く、多くの胚が正常核型と判定することになりました。

Technical considerations

技術的影響の結果として、モザイクを誤って示す(アーティファクト)可能性を示唆する事として下記の3つの事柄が考えられます。

  • 生検技術の不備によるもの。

  • NGSのデータ解析におけるアルゴリズムによるもの。

  • 低品質のDNAによるもの。

How does this affect aneuploidy testing in clinical practice?

TE生検の結果のほとんど(>90%)は、正常胚か、完全な異数胚です。しかし、一部の胚では、モザイク胚の可能性があります。モザイク胚が移植可能な唯一の胚であることもあります。モザイク胚は、妊娠や出生に対して臨床的な影響を持つ可能性があるため、これらの胚の移植は、患者への適切なカウンセリングと代替案が検討された後にのみ実施されるべきものです。

Comments for the laboratory

  1. 生検技術の不備がPGTに与える影響を理解すべきです。5-10細胞の生検が好ましい。細胞数が少ないと、増幅やモザイク検出に影響を与えるかもしれませんし、細胞数が多すぎると胚のダメージが考えられます。

  2. 検査機関は、モザイクレベルの検出力や定量限界は、基礎実験により定義しておくことを推奨します。多くの検査機関では、モザイク率のカットオフ値を20-80%としています。また検査機関からARTクリニックへ、解析能やモザイク胚のレポートについて説明する必要があります。

  3. モザイク胚とリスクについて、モザイク率20%(低リスク)から80%(高リスク)までの連続したリスク勾配であると考えています(下図)。

  4. 検査報告書の書式はモザイクの報告、モザイク率のカットオフ値、同定された染色体異常の性質を含むようにすべきです。


Recommendations for the clinician

  1. PGTのような少数細胞のサンプリングに基づく検査は、100%正確ではないことを患者さんに説明する必要があります。

  2. PGT-A検査のための患者情報および同意書は、モザイクの結果の可能性と、移植する場合の潜在的なリスクを含み、患者に説明する必要があります。

  3. 正常胚の移植は、モザイク胚の移植よりも優先されるべきです。

  4. モザイク胚の移植を検討する場合、以下の選択肢について患者と話し合う必要があります:(i)正常胚を獲得するために、さらに次の周期へ進む(ii)適切なカウンセリング後、低レベルモザイク胚を移殖します。

PGT後の妊娠が成立した場合、出生前診断を行うことが強く推奨されます。特にモザイク胚移植後に適用されます。染色体を検査する手法として、羊水検査は、胎児の核型を最も反映しています。全染色体を検査するNIPT法も検討できますが、日本のNIPT認可施設では13, 18, 21番染色体しか見ませんので注意が必要です。

Suggested recommendations to assist in the prioritization of mosaic embryos considered for transfer

胎児及び胎盤モザイクに関する知識と、最近のPGT-A及び移植研究から得られた知識に基づき、モザイク胚移植を検討する際の指針になります。

  1. モザイク率が高い胚は有害な結果をもたらすリスクが高いため、モザイク率が低い胚が望ましいとされています。モザイク率は、特定の染色体よりも予後を予測するのに適していると思われます。特定の染色体は染色体疾患と関連しているため、ケースバイケースでカウンセリングを受ける必要があります。

  2. モザイク胚移植する場合は、染色体疾患に関する知識とモザイク率の両方に基づいて選択する必要があります。UPD、子宮内成長遅延の可能性に関連する染色体のモザイク胚の優先度は低くてもかまいません。

Overview

多くのPGT-Aのデータから、モザイク胚移植は比較的安全な選択肢であり、妊娠に悪影響を及ぼすリスクは低いと考えられます。しかしながら、モザイク胚移植は、患者への適切な遺伝カウンセリングの後にのみ検討されるべきです。モザイク胚の移植に関する懸念と、妊娠後のフォローアップを患者に提案すべきです。

参考論文
Cram, D. S. et al. PGDIS Position Statement on the Transfer of Mosaic Embryos 2019. Reprod Biomed Online 39, e1–e4 (2019).


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