PGT-Aの効果

PGT-A: who and when? Α systematic review and network meta-analysis of RCTs

PGT-Aの効果の有無については、PGT-Aが30年近く試行されているにもかかわらず、その有効性についてはまだ論争が続いています。2019年にPGDISは、PGT-Aが着床率、妊娠率、出生率を改善したと結論付ける見解を発表しています。一方でPGT-Aの効果に疑問を持つ方も多く、これまでにPGT-Aの効果を明らかにするために、多くのRCT(ランダム化比較試験)が行われてきました。今回はPGT-AのRCTをまとめたレビュー論文を読んでみました。2010-2020年に報告されたRCTで、生検はDay3かDay5、染色体の解析法は、全染色体を解析する手法(qPCR, aCGH, SNPアレイ, NGS)です。

参考論文
Simopoulou, M. et al. PGT-A: who and when? Α systematic review and network meta-analysis of RCTs. J Assist Reprod Gen 38, 1939–1957 (2021).

結果

Live-birth dat per patient (患者あたりの出生率)
出生率に有意差は認められなかった(RR: 1.15, 95% CI: 0.94-1.41, n=1513)。年齢別に解析すると、35歳以下でPGT-Aを実施した場合、両群間に統計的有意差は認められなかったが(RR: 0.97, 95%CI: 0.70-1.36, n=666)、35歳以上の年齢層では、PGT-Aは生児出生率を改善した(RR: 1.29, 95% CI: 1.05-1.60, n=629)

Miscarriage rate per clinical pregnancy(妊娠あたりの流産率)
流産率が有意に低かった(RR: 0.36, 95% CI: 0.17-0.73, n=912)。年齢別に解析すると、35歳以下の女性でPGT-Aを採用した場合、有意差は認められなかった(RR: 0.86, 95% CI: 0.38-1.95, n=412)。35歳以上でも、有意差は認められなかった(RR: 0.24, 95% CI: 0.12-1.37, n=263)。

Clinical pregnancy rate per patient(患者あたりの妊娠率)
妊娠率に関して有意差は認められなかった(RR: 1.14, 95% CI: 0.95-1.37, n=1824) 。年齢別解析の結果、35歳以下の女性では、有意差は認められなかった(RR: 0.96, 95%CI: 0.68-1.35, n=769)。35歳以上も同様に有意差が認められなかった(RR: 1.07, 95% CI: 0.89-1.28, n=627)。

Cumulative live-birth rate per patient(患者あたりの累積出生率)
PGT-Aはコントロールに比べ、患者一人当たりの累積出産率が向上した(RR: 1.36, 95% CI: 1.13-1.64, n=580)

Live-birth rate per ET(胚移植あたりの出生率)
PGT-A後に出生に至ることが有意に高い(RR: 1.32, 95% CI: 1.04-1.66, n=1334)。35歳以下の女性では、有意差は認められなかった(RR: 0.94, 95%CI: 0.80-1.11, n=511)。35歳以上では、PGT-Aは胚移植あたり出生率を改善した(RR: 1.51, 95% CI: 1.02-2.23, n=495)。

Clinical pregnancy rate per ET(胚移植あたりの妊娠率)
PGT-A後の妊娠率が有意に高い(RR: 1.28, 95% CI: 1.12-1.46, n=1673)。サ35歳以下では、有意差は認められなかった(RR: 1.02, 95% CI: 0.90-1.15, n=614)。35歳以上では、PGT-Aが妊娠率を改善した(RR: 1.29, 95% CI: 1.07-1.55, n=440)。

結論
PGT-Aは患者一人当たりの出産率や妊娠率が改善しないことがわかりました。これは特に、35歳以下の女性にPGT-Aを適用しても効果が現れず、有効でないことに起因すると考えられます。逆に35歳以上では、PGT-Aは妊娠率や出産率を向上させるようですまた流産率は、PGT-A施行後に有意に低くなりました。これらの結果から、35歳以下の女性では、PGT-A実施によるメリットは少ないように思えますが、35歳以上の女性に対しては、受精卵あたりの染色体異常率の増加により、流産率の増加や、妊娠率の低下が予想されますので、PGT-Aの効果は大きいと考えられます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?