PGDIS POSITION STATEMENT 2021

PGDIS Position Statement on the Transfer of Mosaic Embryos 2021

PGDISは2016年、2019年に続く、モザイク胚移植の2021年版ガイドラインを発表しました。モザイク胚移植の意味合いについては依然として不確かで、その結果、多くのクリニックがモザイク胚移植を回避しています。一方でモザイク胚移植後の転帰に関するデータは、2,500例以上の追跡調査が報告されてきました。このガイドラインは、検査機関、クリニック、医師、遺伝カウンセラーに最新のモザイク胚移植に関する最新の情報を提供することを目的としています。

OVERVIEW OF NEW KNOWLEDGE

Incidence of mosaic embryos

胚盤胞の段階で、NGS法を用いた際のモザイク胚の発生率は、クリニックによって大きく異なり、2-40%と高いものまであり、ほとんどは5-15%と報告しています。特定のクリニックにおける高いモザイク胚の発生率は、治療方法や患者の背景も考えられますが、一方で生検技術に問題があるかもしれません。

Transfer outcomes from mosaic embryos

モザイク胚移植の妊娠成功を報告した最初の研究から、多数のモザイク胚移植の結果が報告されてきた。最近の研究では、低モザイク胚(<50%)は、正常胚と比較して私欲成績の悪化は見られなかったと報告したが、他の研究では、モザイク胚移植が着床不成功や流産率の上昇と関連している可能性があり、さらに高モザイク胚では、成績の悪化が見られます(下図)。モザイク胚移植は着床や妊娠可能で、出生率は正常胚移植と同様であるかもしれませんが、着床率の低下、流産率の上昇、または両方と関連している可能性を示唆しています。モザイク胚移植によって、関連する異常を持つ児が出生した例は少なく、現在のところMounts(2019)Kahraman(2020)Schlade-Bartusiak(2022)の報告しか見ていません。

How does this affect aneuploidy testing in clinical practice?

TE生検のほとんど(>85%)が、正倍数性(Euploidy)、もしくは異数性(Aneuploidy)の核型を示します。ごく一部の結果、一つ以上の染色体についてモザイク(Mosaicism)を示す場合があります。モザイク胚移植からの異常出産のリスクは比較的低いと思われますが、移植不成功や流産率は正常胚移植よりも高くなる可能性があります。

FOR THE TESTING LABORATORY

  • 染色体コピー数を再現性よく推定できるプラットフォームを使用すべきです。また様々な試料を用いてモザイク検出実験を行うこともできます。

  • 多くの検査施設はEuploidyは<20%、Aneuploidyは>80%としていますが、一部の検査施設ではEuploidyは<30%、Aneuploidyは>70%にカットオフ値を設定しています。この場合、モザイクの報告は減り、高ノイズを許容することになります。

  • モザイク胚を完全な異数体として分類してはいけません。モザイク胚を移植に適さないと分類することは、その後の選択肢を制限する可能性があります。

  • 検査報告書には、モザイクの結果、モザイク率、正倍数性、モザイク、異数性の判定に使用したカットオフ値、検出した染色体異常の報告を含むようにすべきです。

FOR THE IVF CLINIC

  • 胚を侵襲性を最小限にするように、5-10細胞を生検することが推奨されます。

  • 生検細胞のチュービングや細胞を洗浄する際には注意が必要です。

  • モザイクの発生率が高いのであれば、プロトコールや技法を調べるべきです。

FOR THE GENETIC COUNSELLOR OR CLINICAL SUPPORT GROUP

  • TE生検は胚の一部の領域に限定され、胚全体の核型を示していないかもしれません。

  • モザイク胚が同じ染色体異常を持つ児の出産につながるリスクは低いです。

  • 個々の患者さんにとって状況は異なりますので、モザイク胚移植の意思決定プロセスについては、専門家と十分に話し合う必要があります。

  • モザイク率の割合が高いほど移植成功率は下がりますが、移植の対象として特定のカットオフ値を設定するべきではありません。

RECOMMENDATIONS FOR THE CLINICIAN

  • PGT-A のように少数の細胞に基づく検査は、胚の染色体状態を診断するのに、100%正確ではないことを患者さんに説明すべきです。

  • 同意書はモザイク胚の記載も含めるべきです。

  • 一般的に、モザイク胚よりも正常胚の移植を優先させるべきです。

  • モザイク胚移植は、流産など、正常胚に比べてリスクが高いことを患者に説明する必要があります。正常胚を得るために次の周期に移る方が望ましい場合があります。

PRENATAL OPTIONS

  • PGDISでは、PGT-Aまたは体外受精後のすべての妊娠に出生前検査を推奨しています。

  • NIPTの場合、全染色体法を使用する必要がありますが、日本の認可施設は13, 18, 21番染色体のみの検査になります。

  • 羊水検査は、胎児の状態を知ることができますが、リスクも伴います。

SUGGESTED RECOMMENDATIONS TO ASSIST IN THE PRIORITIZATION OF MOSAIC EMBRYOS CONSIDERED FOR TRANSFER

  • 高レベルモザイク胚移植は、低レベルモザイク胚移植よりも悪い結果をもたらすリスクが高いです。モザイク率は、特定の染色体よりも予測因子になると考えています。

  • モザイク率が同等の胚が2つ以上ある場合、形態学評価に基づいて移植優先度を決定すると良い成績になるとの報告があります。

  • またモザイク染色体異常の種類としては、モザイク異数体の方がモザイク欠失や重複よりも移植成績が良いよの報告があります。

参考論文
Leigh, D. et al. PGDIS Position Statement on the Transfer of Mosaic Embryos 2021. Reprod Biomed Online (2022) doi:10.1016/j.rbmo.2022.03.013.

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