1Mb解像度で解析したPGT-A

Segmental aneuploidies with 1 Mb resolution in human preimplantation blastocysts

論文
Xie, P. et al. Segmental aneuploidies with 1 Mb resolution in human preimplantation blastocysts. Genet Med (2022) doi:10.1016/j.gim.2022.08.008.

現在のPGT-AにはNGSによる解析が主流でして、IlluminaやThermo, Perkin ELmer, VitroLifeなどから販売しているPGT-Aキットでは、トリソミーやモノソミーなどの異数体はもちろん、染色体の部分欠失や重複などのSegmental aneuploidy(SA)である10Mb以上のコピー数異常の検出を可能としています。一方で、PGT-Aにおいて10Mb以下のSAの検出は困難でした。そのため、胚盤胞期の受精卵において、SAがどの程度存在するかはまだ明らかになっていません。新生児や出生前診断でのSAの頻度は、例えば、出生前診断においてSAの頻度は1.6%、さらにSAの84%は5Mb以下との報告とあります。そのため受精卵にもSAが多く含まれていることが予想できますので、PGT-Aで微細なSAを精度高く検出する意義はあるかもしれません。本論文では、10Mb未満のコピー数異常を検出する技術を用いてPGT-Aを行い、微細なSAの頻度や特徴、病原性などを調べました。

結果

SAの内訳

15,411個の胚盤胞を対象に、PGT-Aを行いました。染色体異常(異数体および >1 MbnのSA)の頻度は42.5%(6551/15,411)でした。5420/6551個の染色体異常胚全異数体を持っていました。1-204 MbのSAが1658個(10.7%)、SAのサイズ中央値は17.6 Mb、10Mb以上のSAは915個(915/1658, 55.1%)、1-10 Mbは667(667/1658, 40.2% )でした。
次に、SAが親から遺伝したものか、それともDe novoで発生したのか調べて見ました。SAのサイズが大きくなると、De novo SAの頻度が高くなる傾向にあり、SAのサイズが1-2Mbで遺伝性SAは85.9%、2-3Mbでは67%、3-4Mbでは40.5%でした。8Mb以上では、遺伝性のSAはありませんでした。また遺伝性SAは大部分が重複(77.6%, 142/183)で、染色体の中間部に位置していました(93.4%, 171/183)。1-10Mbのde novo SAの34.2%が染色体の中間部に位置していたのとは異なり、10Mb以上のSAはほとんどすべてが染色体末端に位置していました。

SAの病原性

10Mb以上のSAはほとんどすべてPathogenicであり、健常者では観察されないことを考慮し、10Mb未満のSAのに臨床的解釈を行いました。遺伝性SAの73/396個, 18.4%がPathogenicもしくはLikely pathogenicと判定され、他はVOUSと分類されました(病原性の判定方法については省略)。一方で、De novo SAsの20/231個, 51.9%がPathogenicもしくはLikely pathogenicと判定されました。

SAの発生メカニズム

一部の染色体異常胚で、再生検を行い、異常の一致率を算出したところ、異数体での一致率は45/46個、97.8%でした。一方でSAでは、44/72個、61.1%と低い一致率でした。このことからSA(つまり欠失や重複などの染色体構造異常)の発生は、精子や卵子などを作る配偶子形成過程ではなく、受精後の早い段階で発生していることを予測します。(本当かなー?、この実験系の精度が高く、微細な染色体異常を正確に検出できているのであれば、正しいと思うんだけど。。。)

考察

胚盤胞期における受精卵で10Mb以下のSAを検出する臨床的意義に関する研究を行っています。その結果、胚盤胞の1.4-1.8%がPathogenicもしくはLikely pathogenicのSAsを有していました。PGT-AにおいてSAを正確に検査し臨床的に解釈することは、PGT-A後の移植率や妊娠率の向上、流産率を減少するためには必要になりますし、患者へ正確な情報を伝えるために必要なプロセスです。今後はより高解像度なPGT-Aが出てくるのかな?そうなると微細なSAの臨床的解釈も必要になってくるけど、ClinGenやDecipherなどのCNVの臨床解釈ツールも完全ではないので、そこは要注意です。


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