自分の考えを整理する(アンケまとめ)


0.はじめに

0-1.お礼

・アンケートフォーム

・アンケート結果

 上記アンケートに回答して頂きありがとうございました。10件くらいしか集まらないかなと思ってたんですが、50件近くも集まって嬉しかったです。改めて、回答・拡散してくださった方々ありがとうございました!

0-2.本記事の内容について

 本記事は、上記アンケート作成者(以降、私)のAIツールに対する考えを整理するための文章になります。私のAIツールへのスタンスを簡潔に述べると、「どの分野においても将来的には安心して使いたい」です。そのため、本記事では得られたアンケート結果を咀嚼しつつ、生成AI(特に画像生成AI)の現状を理解しなぜ自分が反生成AIではないかについて考えていきます。現実的な解決策や改善策は素人には考えられるはずもないので、そういう話は特に無いです。そのため、そもそも創作分野に限らずAIツールを使用したくない・使用する気がない人は本記事を読まない方が良いと思います。アンケートの結果と簡単なまとめ自体は上記リンクから確認できますので、そちらをご覧ください。

 繰り返しになりますが、本記事を読む際は、特定の創作論やAIツールの是非を問うものではなく、誰かを不快にさせるために書いているわけでもなく、AIに対する自分の考えをまとめ今後どうやってAIツールをポジティブに活用していくかについての私見を述べているだけである、ということを常に心に留めておいてください。特定の人間に対して加害性のある内容ではない(考えが足りてないことは多々ある)と思いますが、不快になったらその時点で読むのをやめてくださいね

 また、なるべく嘘は書かないようにしているつもりなのですが、記事内容が不正確な場合があります。なので、私の文章を鵜呑みにするのではなく自分の目で直接参考文献などを読んでください。この注意事項、生成AIっぽいですね。

0-3.事前に読んでおくことをおすすめしたい資料

本記事では基本的にこれらの内容をある程度読んでいる前提で話が進みます。著作権については後ほど簡易的にまとめた内容を記載していますが、この際ですから読んでみてはいかがでしょうか。どれもわかりやすいので、退屈しないと思います。

(1)令和6年度著作権セミナー「AIと著作権Ⅱ」. 文化庁.2024/08/21(閲覧日2024/10/19) 
 
https://youtu.be/bD0Kp5PiP8o?si=Updr_io9ClCnAa5p
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_02.pdf

(2)『進化するAIと変わる著作権・肖像権』福井 健策. 2023/05/16(閲覧日2024/10/19)
https://youtu.be/qDOMPfJoEWE?si=xj10oOF4iLDijXEt


(3)イラスト生成AIに対するよくある誤解 . @Robot-Inventor. 2022/10/17(閲覧日2024/10/22)
https://qiita.com/Robot-Inventor/items/b01786235978a0bc38d9

0-4.自己紹介

 私は創作を生業としておらず、趣味においても生成系の創作をメインとしている人間ではありません。日常的に使用するAIツールとしては、翻訳機やDTMプラグイン、生成AI(ChatGPT:文章推敲、画像加工:現像時にセンサー汚れを消すなど)が挙げられます。めちゃくちゃ便利で助かってます。また、AIについてはド素人で、学習モデルなどの技術的な理解度はほぼ0に近く、法律的な知識も皆無でした。以下、属性をまとめます。

創作者(趣味)写真メイン、イラスト/文章/音楽は年に数作品程度(一次/二次)、AIツール使用、AI/法律は非専門

0-5.AIツールへのスタンス

 基本的に現状AIツールはどの分野においても肯定的に捉えています。ここでの肯定的に捉えているという意味は、手放しでAIツールの使用を認めるという意味ではなく、法律遵守で分野ごとにある程度適切なガイドラインを作成しその元で使用していく、ということを意味します。また、趣味の範囲での利用については、法律に違反しない限りOKというスタンスです。まとめると、気持ちよくAIツールを使えるなら使いたいし使いたくない人は使わなくてもいいような世の中であるべきだという立場です。一応このnote内での話は法律順守が大前提なので、それ法律違反だよってのがあったら教えてください。意見を変えます。

 また、現状創作分野における画像生成AIの利用については、ガイドラインが不十分なものの、趣味の範囲でなら特に問題ないと考えています。作品が類似していたり、特定の作家のなりすましをしていたりなど、著作権法違反や犯罪行為でない限り、この人は創作におけるツールとして生成AIを使用しているんだなという認識です。ただ、それに付随して生じるトラブルについては、自己責任だと思います。企業ですら説明責任が果たせていませんからね。

 さらに、成果物に対しAIツールが作成した割合が40%を超える場合、著作物にはなり得ないというラインを自分の中で引いています。ここでの40%というのは、明確な理由があるわけではありません。多くの大学で定期試験合格点が60点であることと同じような感覚です。あくまで、もし自分がAIツールを使用した場合にその成果物が著作物(自分が主体の創作物)であるかどうかを判断する目安です。ここら辺の話は、3-2.人間とAIの共創の項目でまた触れていきたいと思います。

0-6.AIツールへの個人的印象

 近年発達してきたAIというものは機械化(自動化やデジタル化)の延長線のようなものだと捉えていて、今後どのような分野においてもその存在は当たり前のものになっていくだろうと思っています。人間の生活をより良くする、より効率化する、楽をする。人間である限りこういった思考回路になるのは当然で、AIの技術が発展する以前に行われてきた機械化についても、コストの抑制、生産性の向上、労働力不足の解消などを目的として発達してきたと認識しています。

 そして、人間の生活をより良くするということは、何も産業に限った話ではないと私は考えています。そのため、私はそこにいわゆる趣味活動(以降、創作活動)が加わります。つまり、創作活動の過程においてAIツールを道具として使用し、ある程度の効率化を求めることに忌避感がない人間であるということです。極端な言い方をすれば、芸術分野における人間中心主義的な考えを重要視していないとも言えます。産業と創作、機械化とAI化についてはまた後ほど触れますが、こういった背景から、創作活動においてAIツール(特に生成AI)に対し否定的な考えを持っている人たちは、作品において生成AIが作成する割合、効率化や創作過程への考えの違いが大きいのではないのかな、と考えています。創作活動を職業としていない点も大きいですね。

1.アンケートについて

1-1.なぜアンケートを行ったのか

・AIツール、特に生成AIについての自分の意見を整理したいから。

・そもそも創作分野ではAI問わずどういった行為(特に作風について)が良くないことなのか知りたかったから。

・周りの人がどう思ってるのか気になったから。

 まず、私は現在話題となっているような画像生成AIを使用していません。そういった生成AIを使用しない理由は、4つほどあります。

①自分で手を動かした方が楽しいから。

②現状、創作を行う仲のいい友人らが生成AIにネガティブな感情を持っており、単純な好奇心で生成AIに触れて嫌われたくないから。

③知識不足で生成AIの何が良くて何が悪いのか正直わからないから。

④SNS上では生成AI反対派が多そうだから。

⑤話を聞く限り、自分が思い描く画像を生成するまでに学ぶべきものが多く、労力が見合わずめんどくさそうだから。

 とりあえずこういった理由で使用していないのですが、AIツールに対してはやはり使うかもしれないし使うなら安心して使いたいという気持ちが大きいため、未来のユーザーとして自分の考えの整理と世論の現状把握はやっておくべきだと思いアンケートを行いました。現状把握をするには圧倒的に回答数が足りないと思いますが、身近な人たちの様々な意見を聞いて理解しようとすることは少なくとも自分の考えを整理する上では非常に有用です。あとこの際最低限の法律理解はしちゃおう、という考えもありました。

 SNSで検索したらもっといっぱい意見出てくるんじゃないの?という方もいるかと思いますが、基本口調が強くて私があんまり長い時間読んでられないのと、私のずさんなアンケート以上に論点がバラバラで意見の収集・整理が大変なこと、画像生成AIに肯定的な意見を持っている人は匿名アンケートの方が答えやすいかなと思ってこの方法を取りました。
 あと、SNS上で話題になる議論って基本的にどの立場でも相手へのリスペクトがないことが多いですし、立場がひどく明確である必要性がありますし、結論ありきで歩み寄りの姿勢が無いので色々と悲しくなってきちゃうじゃないですか。そういった場所で自分の意見を表明することは大事ですけど、議論とかそういうのは無謀ですよね。

1-2.アンケートの質問の意図と反省

 アンケート作成者の意図と反省点を並べていきます。

 質問項目を考えるにあたって、SNS上で反応が多いものをいくつか参考にしました。その際に、画像生成AIに否定的な考えを持っている人は、絵柄の模倣無断学習の2点を特に問題として挙げていることが多いなと感じました。以降、各質問項目について述べていきます。

1-2-1.他者(非AI・AI)による作風の模倣

・意図
 
*無断学習前提での作風の模倣の許容度
 *生成AIが一部の創作過程におけるツールとして使用されることへの許容度

 この質問は、生成AIの問題以前に作品を構成する要素の内、特に作風について皆さんがどう思っているのか知りたくて質問に入れました。また、生成AIに否定的な人々が作風の模倣について言及していることが多かったことも理由の一つです。
 生成AIによる作風の模倣が問題だと考えているのか、そもそも人間でも作風の模倣は問題なのか、芸術・創作分野における作風の立ち位置が知りたかったということです。また、アンケート作成時、作風の模倣は人間でもAIでも許可を取っていないという意味で無断学習という理解だったので、そういう意味でもどのように感じるのかを問う質問でした。
 アンケートで、作風の模倣は生成AIの問題における本質でないのではないかというご意見を頂きましたが、その通りです。本アンケートでは生成AIの出現により形が変わってしまうであろう創作に対する理解を深めるという目的も含まれています。

・反省
 作風の模倣という意味と模倣の程度が曖昧だったと思います。特に、作風の模倣というのは、作品の模倣とは異なるものであるという理解だったのですが、AI生成物による模倣はそもそも複製であるといったような前提のズレがあったように感じます。そもそもズレなどなく、私の作風の模倣という定義が間違っている、と言われたら何も言えませんが。また、完全模倣という選択肢についても微妙だったのかなと思います。この質問項目は、回答者さんの中でも色々意見があったので、詳しくは3-2で触れたいと思います。

1-2-2.AIツールについて

・意図
 
*使用しているAIツールの把握
 *生成AI含めたAIツールへの印象

 特に深い意味はありません。皆さんどんなAIツールを普段使っているのかなという興味と、このツールは便利みたいなのがあればちょっと使ってみたいなっていう私利私欲でした。

・反省
 生成AIについての回答が多かったので、生成AI以外のAIツールについては別項目で質問を設けた方がよかったのかなと思いました。SiriやGoogle Assistantとかを使ってる人はもっと多そうですし。

1-2-3.非芸術・芸術分野における生成AIについて

・意図
 
*異なる分野での生成AIへの印象の違いの有無

 非芸術分野では割とポジティブに生成AIを使用している人が多い印象だったため、芸術分野と比べてどれくらい印象の差があるのかを知りたくて入れました。

・反省
 
非芸術分野と芸術分野で回答欄を2つにわけるべきでした。

1-2-4.芸術分野における生成AIに関する法整備や規則

・意図
 
*生成AIを利用するならしてほしい法整備や規制の有無

・反省
 ご指摘いただいた通り主語が無かったため分かりにくかったかもしれません。建設的とは誰にとって?という質問ですが、回答者さんの立場からでもAI賛成・否定派の立場からでもなんでもいいです。

2.最低限知っておいた方が良い法律知識

 AIツール、特に生成AIについて話をするとき、最低限知っておかなければならないと思った法律知識を挙げていきます。他にもこれ知った方が良いよっていうのがあれば教えてください。

2-0.AIとは

 法律知識の話をする前に、言葉の定義について一度整理します。一部のアンケート回答者さんから、アンケート全体を通してAIの定義がわからなかったという意見を頂きました。個人的には、そこまで厳密な定義を行わなくても一般的な解釈で回答可能なアンケートだと思っていたのですが、そうではなかったようなので遅ればせながらここで定義しようと思います。とりあえず以下の記事を共有します。1から4までの項目で大丈夫です。

生成AIとは?従来AIとの違いや仕組み・ビジネス活用例・やってはいけないことをご紹介!. 株式会社.コンピュータマネジメント. 2024/1/18(閲覧日2024/10/19)
https://www.cm-net.co.jp/blog/generative-ai/


 私の中での各用語の定義はこれらと同じものになります。以降この定義の元で単語を使用していきます。ただ、ご指摘いただいた方の回答を読む限りズレた回答にはなっていなかったので、回答者さんの解釈でも問題ないと思います。

2-1.著作権法:著作物とは

 ここから著作権の話になります。一応文化庁の著作権に関するpdf資料(1)を手元に置いて読み進めることをお勧めします。内容はpdf資料(1)の簡易的なまとめになるので、資料を読んだ方は飛ばして大丈夫です。

 pdf資料(1)のp.6-8, 58-64の内容です。まず、著作権法が保護する対象である著作物として以下のようなものが挙げられます。

・講演、レポ-ト、小説
・楽曲、歌詞
・ダンス
・芸術的な建築物
・地図
・映像
・写真
・コンピュータ・プログラム

思想や感情、単なるデータなどは著作物にはなり得ず、またアイデアや作風・画風、ありふれた表現についても文化の発展の観点から保護対象には該当しません

 また、AIによる生成物が著作物であるかどうかについても、同様の条件が必要になります。すなわち、AIが自律的に生成しただけのコンテンツや簡単な指示(プロンプト)だけで生成されたコンテンツについては、そこに人間の創作的な行為(創作的寄与)が無いわけですから著作物に該当しません。こういった著作物に該当しないAI生成物の例として、人間はボタンを押すだけでAIがランダムで生成したコンテンツや「サルの絵を生成して」といった簡単な指示だけによって生成されたコンテンツが挙げられます。

 こういった著作物になり得ないAI生成物に対し、創作意図があり創作寄与が認められる場合AI生成物は著作物に該当します。要はAIを道具として利用したと認められる場合は著作権が生じますよということですね。判断が難しそうです。

2-2.著作権法:作風に関して

著作権法における作風は、以下の通りです。

・作風が類似していても著作権侵害とはしない

詳細については、pdf資料(1)p.8を参照してください。

2-3.著作権法:著作権侵害(依拠性と類似性)

・著作権侵害の要件は、類似性と依拠性の二つ

詳細については、pdf資料(1)p.47-48や以下の記事を読んでください。

・イラストや画像の著作権侵害の判断基準は?どこまで類似で違法?. 弁護士法人咲くやこの花法律事務所.2023/10/17(閲覧日2024/10/19)https://kigyobengo.com/media/useful/203.html#i-2

・「現代アートの見方・捉え方 - 『アイデア』と『表現』の境界線」. 骨董通り法律事務所. 2021/2/26(閲覧日2024/10/19)
https://www.kottolaw.com/column/210227.html

2-4.著作権法:AI開発・学習段階

・AIの学習データのために著作物を無断で複製・学習するのは違法ではない
・追加学習で特定のクリエイターの作品のみを学習するのは違法となる可能性がある

 著作権法の第30条の4の規定内容によると、AI開発・学習段階での著作物利用行為は基本的に著作権者の許諾なしで利用可能です。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は違法になります。他にも結構色んなパターンがあって重要な部分だと思うので、pdf資料(1)p.31-44を読んでください。

2-5.著作権法:AI生成・利用段階

・人間の著作権侵害と同様の基準で侵害かどうか判断される
・著作権侵害の責任はAI開発者やAI提供者、AI生成者全員が負う可能性がある

ここも大事な部分なので、pdf資料(1)p.46-56を読んでください。

ついでに、AI生成・利用段階での著作権侵害が認められた裁判例について以下共有します。

AI が生成するウルトラマン画像の著作権侵害について生成AIサービス提供事業者の責任を認めた中国の裁判例. TMI総合法律事務所. 2024/03/04(閲覧日2024/10/19)
https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2024/15548.html


生成AI使用時の責任所在についても触れているので、読んでみると面白いと思います。

 他にも多分知っておいた方が良い知識はあると思うんですが、最低限という意味では上記5つなのかなって感じがします。詳細について知りたい場合は色々自分で調べてみてください。よろしくお願いいたします!

3.アンケート結果を見て思ったこと

  ここからは、参考文献から得られた知識と皆さんからいただいたアンケート結果を咀嚼しながらそれらを私の独断と偏見でまとめ、疑問点などを述べていきます。

3-1.芸術分野における規制について

3-1-1.行うべきだと思う規制

・AI開発・学習段階において、学習に使用されるデータセットを公開する時のガイドライン作成。
LAION-5B ⇒ Re-LAION-5Bのように、第三者機関がデータセットをチェックし修正要請したり公開基準をクリアしたりした上で、公的機関による許可制度にする。
国ごとに作るべき?この場合不適切なデータはどこからどこまで?無断転載画像などについて排除するのは技術的に無理そう?

・AI生成・利用段階における法的拘束力のあるガイドライン作成。
有識者の尽力待ち、喫緊の課題。

・生成AI利用者及び販売者の個人情報紐付け
嫌がらせ行為などを含む著作権侵害行為を摘発しやすい環境にする。抑止力にはなる?

・業界ごとの学習データセットの公式販売によるクリエイターへの還元。
日本イラストレーター協会や日本文藝家協会などの業界団体が公式でデータセットを販売、還元。
クリエイターさんへの還元、オプトインオプトアウト問題は追加学習段階では部分的に解決?協会に所属している学習許可済作家たちの作風が含まれるので、狙い撃ちも回避?AIモデル大本の基盤モデル(追加学習前)は結局無断学習だから無意味?

3-1-2.行うべきだと思うが現実的に無理そうな規制

・基盤モデルの学習元のオプトイン・オプトアウト
AIの学習モデルや学習データへの理解が中途半端なので、意味不明なことをいっているかもしれない。追加学習以前の段階での学習データについて、オプトイン・オプトアウト化することで生成AIの精度向上にどれくらい影響があるのかわからない。技術的に可能かつAI分野発展の妨げにならないのであれば行うべきだと思うが、可能なのだろうか?開発・学習段階は妥協して生成・利用段階で厳しくしばる方向性が現実的そう?

3-1-3.行うべきではない規制

・AI開発・機械学習の根本的な禁止
芸術分野だけで禁止することが難しそうなので、やるとしたら他分野を含めた画一的な禁止なる。そういう話ならあり得ないし、現実的に不可能だろう。

3-1-4.テキトーな提案

・あまりにも個性的で唯一性のある作風には独占権を与える。
作風を保護対象としない現行の著作権法で心配されている新たな創作や表現を阻害するということにどれほどの影響があるか読めないし、恐らく無理。現行の著作権法がどうしてこういう内容になっているかを軽視しすぎかも。

・イラスト・文章版JASRAC
生成AI登場以前にあってもいい組織だと思ったが、無いということはそもそもクリエイター側に不利益だったり既に実現不可能であるということ?もし可能なのであれば、無断学習の問題は許容前提になってしまうが、クリエイターへの還元の点はクリアできるだろうか。

・資格がないと営利目的で生成AI使用できないようにする
ガイドラインすら整備されていない現状では時期尚早?

・インターネット無料公開をやめる
無断学習を回避できない、クリエイターに還元しないのであれば、学習データになる前段階で回収しておく。クリエイターに還元されるし無断転載とかも含めて抑止力にはなりそうだが、特に二次創作の表現の場が著しく減ってしまうのでなし?AI学習利用禁止を明示しているアップロードサイトを利用し、既存のAI学習・AI生成物投稿可能サイトを使わないようにボイコットする方が大きな流れにはなりそう。世論には勝てない。

・データセットに使用されるコンテンツを時間的に規制
過去3年間のデータは使用禁止など。営利目的使用者であれば有効か?根本的な解決ではない。

3-2.気づきと疑問点

・芸術分野における生成AIが抱える問題点と私の認識

生成AIが抱える法律、経済、倫理観の三つの問題点について、アンケートを見ていると、意外と経済面への心配は少なかったように感じました。趣味で創作を行っている方からの回答が多かったからかもしれません。一方で、多くの方が倫理観に関して触れていました。生成AIを利用した創作物は本当に著作物なのか、そもそもそういう創作物を認めることは芸術分野における冒涜なのではないか、的な哲学的な話です。個人的に一番の問題は法律的な部分だと思っていたので、意外でした。こういう予想とのズレからもわかるように、やはり自分は文化に対するリスペクトが著しく低いのかもしれません。

・無断学習への嫌悪感

 アンケート内容を見て、真っ先に思ったのは無断学習ってそんなに嫌なんだ、ということです。1-2.アンケートの質問の意図と反省でも述べたように、学習速度に違いはあれど私は人間による学習も無断学習の一種だと思っていました。そして、作品を模倣しなければ非AI・AI問わず学習面で問題はないと思っていました。また、無断学習が結果的に生成AIによる嫌がらせを起こしやすくしていることから無断学習を嫌悪している人がいることは理解していますが、アンケート内容やSNS上の意見を見ていると、許可を取っていないことそのものに嫌悪感を覚えている方が多く、驚きました。ここらへんは、少しでも創作をかじっている人間としては良くない感覚なのかもしれませんが、中々意識を変えるのは難しいように感じました。

 また、追加学習以前で違法なデータを含んだ学習していることについては、自分は出来た人間ではないのである程度は仕方ないと思ってしまいました。インターネットに違法なデータがごろごろ転がっているからインターネットを使用しない、とはならない感じですかね。インターネットを利用している限り無断転載と同じでこういうリスクって付きまといますし、ある程度の妥協は必要なのかな、と。でも、可能な限りそれらを取り除く努力はするべきだし必須だと思います。また、この問題については現時点で生成AIが抱えてる問題点として明確に存在しているものであり、多くの人々がこの点に不快感を抱いているという事実を非反AIの立場の人々は強く認識すべきですし、仕方ないだけですませるのは考えを放棄してしまっているなと思います。

・創作活動(趣味)への熱意の差

 趣味で創作活動を行っている方って、めちゃくちゃ熱量があるんだなって思いました。基本的に私は、写真を撮るにしても絵を描くにしても文章を書くにしても音楽を作るにしても、自分がいいな面白いな見たいな読みたいな聴きたいなと思うものの実体化や記録という意味合いが強いです。特に二次創作ではそれが顕著です。具体的に言うと、推しがかわいいポーズしている姿を見て満足したいから絵を描く、ということですね。なので、私の創作物に私の思想や経験が組み込まれているかといわれたら、そういう感覚はあんまり無いです。一次創作だとしても、この構図で写真撮ったらめっちゃ良い!とか、このメロディ聴いてて気持ちいい!とかすごく単純な熱意で作っています。あと、完全に全部趣味です。だから生成AIを使うことに忌避感がないんでしょうかね。創作物を個体差のある産物・産業品なのだと思っているのかもしれません。

 別にこのスタンスで創作活動を行うことに恥や負い目があるわけではないですが、もしかすると自分は真の意味での創作者ではないのかもしれません。

・技術分野と芸術分野の相容れなさ

 効率化が美徳の技術分野と努力や経験の凝集が必要な芸術分野、分かってはいましたが水と油すぎて凄いですね。両方に精通してる方っててめちゃくちゃ凄いですわ。ただ、音楽分野を見ているとAIツールがアシストツールとして凄く上手く機能しているので、芸術分野での生成AI利用だって絶対上手くいくと思うんですね。というか、この先AIと関わらないことなんてないと思うので、上手く活用してもらわないと困ります。

・声の無断学習について

 音楽の話がちらっと出たので、今回アンケートではあまり話が出なかったAI音声について触れたいと思います。いったん私利私欲な意見を述べさせていただくんですが、声優さん。合成音声化しませんか!?昨今のAIによる音声無断学習へのカウンターとして、ガイドライン作成などは当然として、個人的には合成音声化がめちゃくちゃ有効なんじゃないかなって思っています。ぜひ、検討の程をお願いします!できればVOCALOID4で!

 さて、声の無断学習についてなんですが、ネットに転がっているものを見ると、特定の声優さんやキャラの声を再現しているものが多いなと感じます。そして多分これは追加学習にあたるので、ここらへんはイラストの無断学習(追加学習以外)とは違って法律的にアウトです。で、時々イラストの無断学習(追加学習以外)と音声の無断学習を同じものとして扱っている人を見かけるのですが、ちょっと違うんじゃないかなぁと思っています。ただ、今回著作権法とかを調べていく中で音声については詳しく見ていないので、嘘かもしれません。

・作品の模倣と作風の模倣の違い

 アンケート回答を眺めていると、作風の模倣と作品の模倣を混同している人がいた気がしました。私の想像している作品の模倣は、パクリとかオマージュとか作品全体が既存作品に類似しているものです。一方で、作風の模倣は作品の構図や題材などは似ておらず、画風のみが既存作品と類似しているものです。例えば、ゴッホみたいな絵柄で東京の街並みを描いた作品などです(伝われ)。二つの違いを理解した上で、「作風は作品を構成する最大要素であり作品そのものと同義である」という意味で使っていたらすみません。

・作風の模倣程度の定義

 私個人の勝手な定義として、完全な模倣というのは特徴的な作風において、その作品を匿名で見た時に、真っ先に思いつくような作家がいる、〇〇先生の絵柄じゃん!という感想がでるようなものでした。いわゆる野生の〇〇先生みたいなものです。次に、多少の模倣というのは、その作品を匿名で見た時に、作風のこの部分が〇〇先生の作品のテイストに似てるなぁ、という程度のものです。例えば色の塗り方であったりとか特徴的な目や口の書き方だったりとかそういった一部分の模倣を定義していました。すなわち、作品を見たときに程度はどうであれ特定の作家を思い出させるような作風は、偶然の一致を除き模倣した作風として考えていました。

 じゃあ○○さんだ!て思わないような、ここではあえて特徴的ではない作風と言いますが、そういう作風だったらどうなのって話になるんですが、考えてもわからなかったのでスルーします。

・作風の独創性、昔と現代について

 作風について考えていると、昔の芸術家って印象派とかキュビズムとか絵柄でくくられてるよな、現代のSNSにおけるアートとは全然違うよな、模倣問題とかなかったのかなという疑問が生じました。調べてると、XXを筆頭に多くの画家が追従した、みたいな解説多くないですか?昔ってそういう模倣に寛容だったんですかね。現代社会よりも思想が大切だったから絵柄の模倣とかは些細なことだったんですかね。話は逸れるんですが、さらに色々調べてると、アプロプリエーションというワードを知ってびっくりしました。かっこつけないで普通に流用・盗用って言いなさいよ!まあここらへんはコラージュなどの芸術作品における著作権の話になるので、面白い話なんですけど今回は置いておきます。

 話を戻します。アンケート回答を読んでいる内に、創作活動において独創性がどれくらい重要なのか気になりました。

 例えば、私がキュビズムに深い感銘を受けたとしましょう。様々な角度からみたものを一つにまとめた作風?幾何学的なパーツで構成されている作風?まあ有名なピカソの絵を思い浮かべてくれればいいです。で、この作風が大好きなので、これで東京の街並みや好きなキャラクターの絵をデジタルで描いていきたいと思います。塗りは、厚塗りとかにします。そして、実際趣味でその作風で描いた絵をSNSにアップするようになりました。みたいな設定にしますね。

 こうなった時、私という作家における作風に独創性は無いですよね。勿論、どこかで無意識的に独創性が生まれてそれが組み込まれていくことはありますが。で、この作風は多分どこかの層にはウケるし創作活動として特に問題はないはずです。作品については、赤い椅子に座って首を傾げてる金髪の女性やマンドリンを弾く女性のイラストを描いてしまったら類似性と依拠性の二点で著作権法違反ですが、そういう絵は描かないので、法律的にも問題ないはずです。

 で!ここで聞きたいんですけど、これって創作者としてどれくらいナンセンスなんでしょうか。私は全くナンセンスだと思いませんでした。私の場合、基本的に創作する時って何かにひどく感銘を受けた時なので、創作の根底には模倣があるんだと思います。

ちなみに、ピカソは作品をそこまで多く知っているわけではないですが、「マンドリンを弾く女」が好きです。どうやって描いたんでしょうね。私は想像力が足りないのでキュビズム的手法で絵を描くのは無理だなって思います。真似するならモネとかの方が簡単そう(舐めすぎ)。

・人間とAIの共創、生成AI使用表示について

 生成AIを創作に取り入れる際、3種類の共創が考えられます。

①作品の一部を生成AIが作製し、そのほかを人間が作製する共創

②プロンプトなどを入力し、生成AIが生成したものに人間が加筆して徐々に形作る共創

③生成AIが出力した成果物(not著作物)だけを使用して人間が組み合わせる共創(コラージュ)

 これらの共創が著作物であるか、また生成AIを利用したことを表示すべきかについて述べたいと思います。

 まず生成AI利用の明示についてなんですが、基本的に明示して困ることは無いので明示するでいいと思います。どの程度から、とかはまた難しい話になってきますし、努力義務にはなりそうですが。

 ①の共創について、例えば森の中で小鳥と戯れてるエルフの絵を描きたいとします。描きたい全体の構図は人間が決めました。森(背景)と小鳥は人間が描きました。でも人物絵が苦手なのでエルフは生成AIに描いてもらいます。この時のプロンプトは「片手をあげるエルフ少女」程度のものとします。人間による加筆修正なしかつシンプルなプロンプトなのでこのエルフについては著作物に該当しないです。また、作品全体に対してエルフが占める面積の割合は1/4程度だとします。
 これは、生成AIが主体の創作物でしょうか?私個人の意見としては、作品全体に対して生成AIの成果物が占める割合が低いことから著作物ですかね。ここで0-5.AIツールへのスタンスで述べた40%の話が出てきます。40%までなら、人間の創作工夫の方が多いからギリ著作物かな、みたいな感じで判断します。まあ①の共創については、生成AIというよりかは自分以外が作製した素材を多用したときにどこまで自分の作品であると言えるかって話になるんですかね。
 ちなみに、生成AIが出力したエルフについて、これが②の共創によって生成された場合は余裕で著作物だと思います。単純なプロンプト指示ではなくポーズ指定とか加筆するなら人間の創意工夫がありますからね。

 ②の共創について、個人的には特に悩む必要もなく著作物だと思いました。人間の創意工夫がありますし、プロンプトの指示ってプログラミングみたいなイメージがあるので、ソースコードに著作権があるならこれも著作物なんじゃないのかなって感じです。ただ、①も②も従来のイラストと比べると手法が特殊ですから、様々な場面での棲み分けは必須だなと思います。

 ③の共創については正直人間のやるコラージュでもよくわからないので、特に触れないでおきます。コラージュが許されるのならこれも著作物になりそうだけどなぁという感じですが。コラージュに関しては面白い判決例を6.余談で紹介しているので興味がある人は読んでみてください。

・アナログとデジタル、機械創作

 インターネットのおかげで、アナログイラストの価値が上がりそうですよね。贋作とかもありますけど、少なくともデジタルイラストより模倣しにくいですし、生成AIイラストに不信感を抱く人からしたら安心という意味で価値はぐっと上がりそうです。

 さて、デジタルイラストが台頭してきた時代、アナログで絵を描く人々はどう対応してきたんでしょう。アナログイラストに比べてデジタルイラストは、資金面でも学習面でも大きく効率化されたと思います。大量の画材を買わずに済み、ソフトウェアが手ブレ補正や色彩スポイト、レイヤー機能などの補助ツールとして大活躍していますよね。描き直しができるというのも圧倒的に便利な機能です。このようなデジタル化が、生成AIと全く同じような変化だとは思いませんが、作業時間の効率化という意味では似たような変化なのではと思います。デジタル化の究極版が生成AIみたいな感じですかね。いずれにせよ、デジタル化は芸術分野における大きな転換点だったと思います。イラストに限らず、3Dモデリングとか音楽とか全部含めて。それでもアナログイラストは残り続けていますし、音楽に関しては人間が演奏することがなくなったわけではありません。結局、生成AIに関してもそういう感じになってくんじゃないのって思います。

 あと画材屋さんって現状どんな感じなんでしょうか。デジタルイラストが普及して、昔より需要が減ってたくさん閉店しちゃったんですかね。それともさほど需要は変わってないんでしょうか。増えるってことはない気がするんですけど、ここらへん調べてもあんまり出てこなくてよく分からなかったので、知ってるって人いたら教えてください。

 ここから機械創作の話です。以前Instagramで機械がアナログの抽象画?デザインアート?を描いている動画を見かけました。実際の投稿のリンクを共有できなくて申し訳ないんですが(SNSはそろそろ投稿の閲覧履歴を導入すべき)、恐らく様々な色の絵の具を紙の上に適量配置し、筆付きの機械(AIとかではなくマジのマシーンという意)がその絵具の上から指定された経路に沿って動き絵具を引き延ばしていく、というものでした。これって、著作物なんですかね。それとも、産業品でしょうか。こういう創作物って、どういう判断になるんでしょうね。

・機械失業と人間の存在意義

 AIを含む機械が全て肩代わりしてもいい職業ってなんでしょう。レジ打ち、乗り物の運転手、ガイド、医者、クリエイター。私はどれもしっくり来なかったのですが、理由としては職業というものが「生きるために必要な労働」と「それ自体に価値があるもの」の2つの意味を含むからです。自動化・機械化は、「生きるために必要な労働」を楽にしていこうという考えで行われてきているはずですが、一部の人からしたらまずこの考えも困るでしょう。生きるためにお金を稼ぐ方法が消えてしまうわけですから。「それ自体に価値がある仕事」については、人間のQOLすなわち生きがいに関わってきます。これも当然、無くなってしまったら困ります。こうやって考えると、機械が全て肩代わりしてもいい職業って無いはずです。でもまあそんなことは言ってられないし、現代社会も様々な職業の廃業(?)によって成り立っています。なので、結局人間は機械にできないことを頑張るしかないんだなーって思いました。

 将来、「生きるために必要な労働」が全て機械に肩代わりされてしまったら、この世界はどうなってしまうんでしょうか。人間の物理的な活動は無くなってしまうのでしょうか。趣味が必須の世界になって、それがまた労働になるでしょうか。考えることだけを許される世界になっているかもしれません。人類皆哲学者の時代が到来するかも。SFの世界観でよく見るような、電脳活動だけで済んでしまうのかもしれません。それはそれでワクワクしますが、もしそうなるのなら肉体が衰えた老後だけにしてほしいものです。

 話を戻しますが、いわゆる芸術分野や創作に関連する職業は、「生きるために必要な労働」よりも「それ自体に価値がある仕事」の意味合いが強いです。そして、消費者もその創作が「誰」によって行われたかを重要視します。なので、長期的な機械失業はそこまでないのかな、と思います。また、現状生成AIを利用している企業に対してはユーザーからのあたりが強いですし、芸術分野ではなおさら商業的には需要が無いように感じます。ただ、そういう職業であっても、誰かに依頼されて指定されたものを創作しなければならないというような場合、これはクリエイティブの部分が少ないですから、AI学習段階での問題が解決すればそういった業務は減少するのかもしれませんね。

3-3.アンケート回答内の感想や意見、疑問への回答

以下は回答者さんの疑問点に対する私の回答です。

・便利だけど、翻訳もChatGPTも帰ってきた答えが本当に合っているかどうか分からないので怖い。
 これについては怖いという感覚を持っている方が正しいと思います。でも世の中結構100%の信頼度でこういうツールを利用している人っていますよね。基本的に便利なツールを使うときは、あくまで補助ツールであることを念頭に置いて利用した方が良いので忘れないでほしいです。あとはその情報のソースを自分で確認する癖をつけるべきですね。そういう意味では今のgoogle検索で強制表示される「AIによる要約」って結構いいと思うんですよね。要約の元になった記事のリンクが一緒についてくるので。

 あと、これ関連で面白い話があるんですけど、どこかの国の弁護士がChatGPT使って判例を集めてたら存在しない判例が含まれててそれをそのまま使ってしまったって事件です。普通にヤバイですよね。弁護士になれるくらいの脳みそ持っててもこういうことしちゃうんですよ、人間って無限の可能性を秘めていますよね。

・生成AIと翻訳機が一緒くたにされてるのがよくわからない
世間一般の人々が、その二つを同じようなAIツールとして位置付けているのがわからないということであっていますかね?そういう話であれば、多分どっちでも翻訳できるからじゃないでしょうか。汎用型AIと特化型AIみたいな区分かもしれないです。両者の違いについて、基盤モデルや学習方法の違いについて述べているのであれば、私は無知なので解説が分かりやすかったNECの機械翻訳の解説を共有します。

AI翻訳(機械翻訳)とは?仕組みやメリット、デメリットを解説. NEC.(閲覧日2024/10/28)
https://www.nec-nexs.com/service/lp/clovernet_mtss/artificial-intelligence-translation.html

・生成AIについて、なぜ研究室の外に出したのか。中でやっていればよかったのにと思う
 一応マジレスしておくと、絶対に便利で人間生活をより良くしてくれるものだから、ですよね。まあここら辺については基本的に悪用する人間が悪いので研究者ではなくそっちに怒ってほしいなって感じです。でも、人間のためなら権利を侵害されそうになっているクリエイターのことも考えて研究開発してくれよって話ですしその通りだと思うので、これ以上研究者側を擁護するのはやめておきます。
 ただ、今回の件でAI技術による特定分野への利益相反がこんなに問題になったことはポジティブに考えるべきだと思いました。今後、新技術の発展に合わせて現行の法律の見直しなど積極的に行う事例が出来たからです。よりよい未来のために、なんとかなってほしいですね。

・画像生成AIは学習元が不透明だから毛嫌いしてるのに、ChatGPTは使ってしまっている
 真面目ですね!でも、そういう考えは別に悪いことじゃないと思います。生成AIでディベートしているわけではないですから。あと、そういう矛盾をなくそうと新技術を気持ちよく使おうとするためにみんなが頭を悩ませて現状を改善していくからどんどん世の中が良い方向に向かっていくわけじゃないですか。一律規制かやりたい放題かの過激派よりよっぽど建設的だと思います。

 ただ、部分的にでも生成AI反対の立場を掲げてSNSで意見を述べる場合、嘘でもChatGPTは使ってないって言った方が良いかもしれませんね。インターネットの有象無象が群がってくるので。SNSって素人のこういう曖昧な立場に厳しすぎる!

3-4.アンケート回答内の意見への質問

以下は回答者さんの回答・意見への質問・疑問点です。

・AI開発・学習段階の問題点(特に違法コンテンツの学習)は技術的にどこまで改善可能なのか、どこまで改善すれば許容されるのか。

・AI開発・学習段階の問題点が解決した場合でも、どんな形であれ生成AIを使用したくないのか。

・AI開発・学習段階の問題点が解決した場合、人間とAIの共創はどこまで許容できるのか。

・「検索汚染対策として、検索条件などで生成AIの出力物を分離できるデータ上の刻印を生成時につけることをサービス提供者側に義務付け徹底」という意見について、これは出力物のほとんどを生成AIが作成し人間の手が加わっていないコンテンツだけなのか、文章の推敲などに生成AIを使用した場合も含めるのか。

もしここまで読んだ人がいて、さらにいくつか質問に答えてやるよっていう人がいたら、お題箱からこっそり教えてください。

4.まとめ

私自身ついては以下の通りです。
<開発・学習段階>
・無断学習への嫌悪感がほとんどない
・追加学習以前の学習に関しては現状大きな問題はないと考えている
・追加学習については、少なくとも趣味で創作を行っている自分の作風に関しては問題ない
<生成・利用段階>
・趣味の範囲内での利用は基本的に問題ない
・生成AIを用いることが問題なのではなく、作品が類似していることが問題
・著作権法って奇跡的なバランス
・生成AIが関わった著作物に関しては現行の著作権法の解釈でもよいと思う
・法規制などについては専門家さんたち頑張ってほしい
・著作権侵害については、人間AI問わず判決事例を積み重ねていく必要性がある
・ガイドライン制定やなりすまし対策などは喫緊の課題
・作風の模倣による著作者への経済的不利益あたりが結局わからない
・創作分野に関しては棲み分けは確実に必要

生成AIの使用に部分的でも反対な立場の意見については以下の通りです。
<開発・学習段階>
・追加学習以前の学習で違法データを含むものを廃棄するべき
・追加学習以前の学習がそもそも許可取りが必要
・追加学習段階の学習での許可取りが必要
・AIによる学習は学習ではなく複製
・クリエイターへの還元が必要
<生成・利用段階>
・作風の模倣が問題
・作品の模倣が問題
・AIによる生成物は生成ではなく複製
・AIによる生成物は著作物ではない
・なりすまし被害など問題点が多いため現状使用を規制すべき
・そもそも芸術分野にAIツールを取り込む必要はない

5.感想

 センシティブなテーマだったので、回答数が30超えたあたりでたいぶビビっていたんですが、めちゃくちゃ楽しかったです。ただ、やっぱり生成AIに関する意見を述べるとき、問題点がぐちゃぐちゃになってしまいますね。回答者さんの回答も、恐らくご本人の中ではある程度綺麗にまとまってたんでしょうが、私のおおざっぱな質問のせいでぐちゃらせた感じがします。

 でも、興味深い回答ばかりでしたし、自分の考えをたいぶ整理できたと思います。皆さんに感謝です。皆さんもなにか新たな疑問質問発見提案あれば、お題箱に投げてくださいね。

 AIに関する問題は、今後インターネットを使用する場合避けては通れない問題だと思うので、この機会に皆さんもAIについていろいろ調べてみてほしいです。調べていく内にAIに対するスタンスが変わってくるかもしれません。私も数か月後にはAIツールの使用に否定的になっているかも。

6.余談

著作権法や生成AIについて調べていく中で、いろいろ興味深い記事と出会えたので共有したいと思います。

法律関連

・意匠法改正
AI関連の法改正が思ったよりも早くされるみたいでびっくりしました。
https://www.47news.jp/11726734.html

・コラージュ作品の裁判例
著作権について調べていると、色んな芸術作品のこれはいいのか?みたいな疑問が出てきます。私は特にコラージュとか気になったので調べてみたら、興味深い裁判例があったので、共有します。長いんですけど、難しいことは書いてないので全部読んでみてください。
https://www.ip-bengoshi.com/archives/1714

AI関連

・生成AIによるDNA配列設計
これ凄く面白かったです。完全新規の人工的な制御配列の設計が出来るようになって、なおかつ自然配列に比べて細胞特異性が凄く高いっていう研究です。
論文大元
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08070-z#Sec8

日本語簡単要約
https://www.techno-edge.net/article/2024/11/05/3806.html

・臭いに関するAI
AIよりも人間が有利なことを考えた時に、やっぱり脳と連動する身体があるのはデカイよな、そういえば臭いってAI苦手じゃない?まだ開発全然進んでないんじゃないの^^と思ったら普通にちゃんと開発されてました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000038832.html

・AIおばあちゃん
凄く面白い記事でした。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2411/17/news072.html

・SNS大移住・AI学習対策諸々
私が必死にアンケートをまとめている間に、世間ではSNS大移住及びAI学習対策の話が激熱になっていました。個人的に分かりやすかったなと思ったものを共有しますね。
https://twitter.com/kaya_n_web/status/1847126510785962271

SNS大移住やAI学習対策についてはまたもや大論争が起きていますけど、別にしてもしなくても個人の自由なんでやりたいと思った人はやればいいし必要性を感じなかったらやらなくていいと思います。なんでこんな話題でもケンカしちゃうんだろうと思いつつ、これが生成AIの罪?弊害?か、と思ったり思わなかったり。自分の住んでいる町の治安が悪化してきたから、防犯対策を強化する。普通のことです。一方で、してない人がいても被害が無ければ問題ないですし、被害にあってしまったら次から対策しようねって言えばいいだけなんでね。ケンカしないでほしいものです。

7.参考文献

(1)令和6年度著作権セミナー「AIと著作権Ⅱ」. 文化庁.2024/08/21(閲覧日2024/10/19)  https://youtu.be/bD0Kp5PiP8o?si=Updr_io9ClCnAa5phttps://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_02.pdf

・『進化するAIと変わる著作権・肖像権』福井 健策. 2023/05/16(閲覧日2024/10/19)https://youtu.be/qDOMPfJoEWE?si=xj10oOF4iLDijXEt

・イラスト生成AIに対するよくある誤解 . @Robot-Inventor. 2022/10/17(閲覧日2024/10/22)https://qiita.com/Robot-Inventor/items/b01786235978a0bc38d9

・2024-01-08: 画像生成AIツールの実社会普及における現況と課題への考察. 塀. 2024/01/08(閲覧日2024/11/19)
https://note.com/tonarinohey/n/n2fe9aa0eea78?sub_rt=share_sb

・AIのLoRAとは?その仕組みや作り方、StableDiffusionでの導入方法を解説. AI総合研究所. 2024/08/30
https://www.ai-souken.com/article/ai-lora-explanation

・AIに自分の絵食わせてみた結果. 情熱的. 2024/11/15(閲覧日2024/11/15)
https://note.com/passionnelles/n/n0bf6b7529f78

・Stable Diffusionにも使われるデータセット「LAION-5B」に児童性的虐待コンテンツが見つかり開発元がリンクを削除した「Re-LAION-5B」をリリース. Gigazine. 2024/09/02(閲覧日2024/10/19)https://gigazine.net/news/20240902-re-laion-5b/

・イラストや画像の著作権侵害の判断基準は?どこまで類似で違法?. 弁護士法人咲くやこの花法律事務所.2023/10/17(閲覧日2024/10/19)https://kigyobengo.com/media/useful/203.html#i-2

・「現代アートの見方・捉え方 - 『アイデア』と『表現』の境界線」. 骨董通り法律事務所. 2021/2/26(閲覧日2024/10/19)
https://www.kottolaw.com/column/210227.html

・AI が生成するウルトラマン画像の著作権侵害について生成AIサービス提供事業者の責任を認めた中国の裁判例. TMI総合法律事務所. 2024/03/04(閲覧日2024/10/19)
https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2024/15548.html

・【AI】声優と生成AIの法的論点. 福岡真之介. 2023/09/29(閲覧日2024/10/28)
https://note.com/shin_fukuoka/n/n33a915e312e9

・AI翻訳(機械翻訳)とは?仕組みやメリット、デメリットを解説. NEC.(閲覧日2024/10/28)
https://www.nec-nexs.com/service/lp/clovernet_mtss/artificial-intelligence-translation.html

・ChatGPTで資料作成、実在しない判例引用 米国の弁護士. 日本経済新聞. 2023/05/31(閲覧日2024/10/28)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN30E450Q3A530C2000000/

・生成AIの「知財」侵害を防ぐ 特許庁、26年に意匠法改正へ.47NEWS. 2024/11/05(閲覧日2024/11/06)
https://www.47news.jp/11726734.html

・コラージュと著作権侵害、テナントの著作権侵害と賃貸人の責任. 知財弁護士.COM(閲覧日2024/10/21)
https://www.ip-bengoshi.com/archives/1714

・Gosai, S.J., Castro, R.I., Fuentes, N. et al. Machine-guided design of cell-type-targeting cis-regulatory elements. Nature 634, 1211–1220 (2024).(閲覧日2024/11/05)
 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08070-z

・この世に“存在しない”DNA配列をAIが創造。生成した人工DNA配列をマウスや魚に組み込む(生成AIクローズアップ).techno-edge. 2024/11/05
https://www.techno-edge.net/article/2024/11/05/3806.html

・REVORN、”においの再現”へ向けて、AIが画像からイメージされるにおいのレシピを生成する新機能をリリース. PR TIMES. 2023/09/06(閲覧日2024/11/12)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000038832.html

・詐欺電話に延々と応対し時間を浪費させるAIおばあちゃん、O2が開発. ITmedia NEWS.  2024/11/17(閲覧日2024/11/18)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2411/17/news072.html

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