見出し画像

内藤市長が遠藤前市長に4.58億円もの請求ができる根拠はあるのか? 新町西地区開発のあゆみを振り返ります

遠藤前市長個人宛4.58億円もの請求書内藤市長が舵取りを担う徳島市から送りつけられました。この問題の発端となった新町西地区開発のあゆみを今一度振り返ってみたいと思います。

小池市長〜原市長〜遠藤市長〜内藤市長までの流れ

「新町西地区開発」は小池市政時代から構想が上がっていました。小池市政から内藤市政までの流れを追ってみましょう。

《小池市政時
1991年 
地元の商店街振興組合が再開発構想を策定
※小池正勝氏は「ホール建設」を公約に掲げ当選、その後 徳島市はホール建設血を「動物園跡地」と表明しました
原市政時
2005年
原秀樹前市長が新町西地区再開発事業の中核としてホールを建設する方針を表明
  ↓
2008年
財政問題を理由に知事が計画に同意せず、頓挫
  ↓ 
2012年
徳島市が新町西地区の再開発事業を都市計画決定
法改正で知事の同意が不要になったため
  ↓
2014年
市を含めた地権者で事業の実施主体となる再開発組合が発足
  ↓
2015年8月
総事業費が従来より3割程度増え、225億円に達することが判明
  ↓
2015年12月
市が再開発関連予算案とホール取得費156億円の支出を約束するための債務負担行為を見送る
  ↓
2016年2月
組合が「権利変換計画」を決定
  ↓
2016年3月
再開発計画の白紙撤回を公約した遠藤彰良氏が徳島市長に初当選
  ↓
2016年4月
原前市長の残りの任期中、再開発組合が権利変換計画の認可を市に申請
遠藤市政時
2016年6月
遠藤市長が権利変換計画の不認可と負担金の撤回を決定
  ↓
2016年8月
権利変換計画の不認可は違法として、再開発組合が徳島市を提訴
  ↓
2016年10月
ホテルやマンションなど民間の力を生かした新町西地区の新たな活性化策を市が有識者会議に提案
  ↓
2017年5月
有識者会議での検討を経て、市が新たなホールの建設候補地をJR徳島駅西側とし、18年3月末までに基本構想案をまとめる方針を決定
  ↓
2017年6月
権利変換計画を巡る行政訴訟が徳島地裁で結審
  ↓
2017年9月
地裁が再開発組合の訴えを棄却。再開発組合が控訴を決定
  ↓
2018年2月
高松高裁で控訴審の初弁論
  ↓
2018年4月
高松高裁が再開発組合の訴えを棄却
  ↓
2018年5月
再開発組合が上告を申し立て
  ↓
2018年8月
経済的な損害を受けたとして、再開発組合が6億5448万円の損害賠償を市に求めて提訴
  ↓
2019年2月
権利変換計画を巡る行政訴訟について最高裁が再開発組合側の上告を不受理
  ↓
2019年3月
経済的・精神的な損害を受けたとして、再開発地区の地権者26人が損害賠償を求め市を提訴。
6月には、さらに4人が追加提訴し、原告は計30人に(係争中)
  ↓
2020年3月
再開発組合による損害賠償請求訴訟が徳島地裁で結審
《内藤市政時》
2020年5月
徳島地裁が再開発組合の訴えを一部認め市に3億5877万円支払い命じる判決
  ↓
2020年6月
徳島市が一審の3億5877万円支払い命じる判決を控訴
市側の控訴理由は「組合側と対話を深めて解決策を探る上で、控訴期間の2週間では対話を尽くせないため」
https://mainichi.jp/articles/20200602/ddl/k36/040/384000c
  ↓
2020年10月
徳島市一審の破棄と請求棄却を求め控訴。組合は和解も視野
https://mainichi.jp/articles/20201003/ddl/k36/040/373000c
11月に和解案を提示
  ↓
2021年2月
控訴審で徳島市と組合は和解へ 4.1億円支払い
https://mainichi.jp/articles/20210209/ddl/k36/040/367000c
  ↓
2021年4月
徳島市4.1億円の和解金を組合へ
https://mainichi.jp/articles/20210409/ddl/k36/040/379000c
徳島市が組合へ和解金を支払う
https://mainichi.jp/articles/20210429/ddl/k36/040/458000c
  ↓
2021年6月
徳島市監査委員会が遠藤前市長に求償を求める勧告
https://mainichi.jp/articles/20210629/ddl/k36/040/408000c
  ↓
2021年7月
再開発の訴訟費用、遠藤前市長に賠償請求
https://mainichi.jp/articles/20210703/ddl/k36/010/381000c
  ↓
2021年7月
遠藤前市長が反論
https://mainichi.jp/articles/20210707/ddl/k36/040/374000c

それでは、遠藤前市長が徳島市より4.58億円もの請求書を送られることとなった都市計画設定や当時の市民の動きを具体的に見ていきましょう。


多くの市民から反対の声が上がった「新町西地区開発」

「新町西開発」事業は2012年11月都市計画設定されました。

その後、この事業に反対する地権者や市民「住民投票の会」を結成し、当時の原秀樹市長の選挙での得票数を上回る数の署名を徳島市に提出しました。

けれども2013年6月徳島市議会はこの「住民投票」を否決しました。

新町西再開発、住民投票条例案否決 徳島市議会
http://daijiminade.cocolog-nifty.com/blog/files/tokushjima_130626_.pdf


反対する地権者や市民は否決された直後「新町西開発の白紙撤回を求める市民の会」を結成し、宣伝や署名で世論を広めていきました。

----------

地域住民も開発計画に「反対」していた!

スクリーンショット 2021-08-13 15.17.13

「白紙撤回を!」と書かれた立て看板を新町西地区の元再開発計画区域だった地域で見かけます。
西新町で長年武道具店を営む新居さんの店舗前にはこのように書かれた看板が掲げられています。

市は私たち家族が暮らすこのビルを、相談もなく、勝手に再開発食い区域に組み込みました。
私たち家族は、生活の糧である武道具店(創業明治元年)を取り上げられたら、途方に暮れてしまいます。
みなさんこの白紙撤回に協力してください。

スクリーンショット 2021-08-13 15.18.34

また同じ通り沿いでレストランを営むKさんの看板にもこのように書かれていました。

原徳島市政は、この店を強制的に再開発区域に組み込みました。私のほかにも、この地域で真面目に営業し、生活している10軒余りの方々を、強制的に追い出すのが新町西開発です。この店を存続させるため、強力な応援をお願いいたします。

スクリーンショット 2021-08-13 15.20.39

----------

長い歳月シャッター街と化した西新町アーケード

こうして西新町に根ざして商売を営んでおられる方々がいる一方で、多くの店がシャッターを閉め「シャッター通り」と化しているのが長年の西新町の状態です。
こうした地域を西新町の地権者らでつくる再開発組合施行者となり「第一種再開発事業※」で、地権者の3分の2の同意があれば反対する地権者を強制的に追い出すことができるという再開発計画を立てたのです。

第一種事業「権利変換方式」
土地の高度利用によって生み出される新たな床(保留床)の処分(新しい居住者や営業者への売却等)などにより、事業費をまかないます。従前建物・土地所有者等は、従前資産の評価に見合う再開発ビルの床(権利床)を受け取ります

スクリーンショット 2021-08-13 16.07.29

----------

ゼネコンと徳島市が主導、跳ね上がる再開発費用 と徳島市の負担額

原秀樹市政時徳島市は、再開発の計画区画にある生命保険会社のビルを2億円で購入し、再開発区域で最大の地権者にのし上がりました

スクリーンショット 2021-08-13 16.10.57

なお、遠藤前市長の記者会見によると、徳島市の税金で2億円で購入したこのビルは、不動産のプロが鑑定すると「6000万程度の価値だと言われたとのこと。


そして、西新町再開発組合「随意契約(※)」竹中工務店事業請負契約を結びました。

随意契約
随意契約とは、国や地方公共団体などが公共事業・備品調達・外注などにおいて、競争入札によらずに任意で決定した相手と契約を締結すること、または締結した契約のことをいう。

契約や施行は「西新町再開発組合」であるけれども、この再開発事業を主導したのは最大の地権者である徳島市と竹中工務店でした。

2012年にこの都市計画決定がなさてたとき、総事業費154億円でそのうち徳島市負担116億円でした。
それが2014年に再開発組合が設立されると、総事業費168億円(当初より+14億円)市の負担額132億円(当初より16億円)に膨れ上がりました。
さらに驚くことに、その1年後の2015年には総事業費が225億円(当初より+71億円)市の負担額181億円(当初より+65億円)と、大きく膨れ上がりました。

----------

「新町西開発の白紙撤回」を公約した市長が選挙で当選!

そして、2016年3月に徳島市長選挙が行われました
この新町に西開発は最大の争点となり、「計画の白紙撤回」を掲げた遠藤彰良氏立石量彦氏の2候補で74%もの票を獲得
41073票という圧倒的な支持を得て、遠藤彰良市長が誕生しました。
市議会住民投票署名が否決された2年9ヶ月後でした。

スクリーンショット 2021-08-13 15.12.27

新町西地区開発の「推進」を掲げた原秀樹氏は次点の新人候補立石氏の得票数にも届かず、落選しました。

-------------

市長選4ヶ月前に原秀樹市長の強引なやり方に、
裁判所から「待った!!」がかかる!!

わずか2.4万票しか獲得できなかった原秀樹市長ですが、市長選までにホールを買い取る契約を締結させ、再開発を後戻りできないようにする算段でいました。そのため、強引なやり方で事業を推し進めてきました

例えば、都市計画法が「知事に協議しその同意を得なければならない」から「知事に協議しなければならない」に変更されたことで、対市交渉などで「市長の権限でなんでもできる」と担当部が発言しはじめました。

都市計画法が変更になった2012年に徳島市の都市整備部長を務めていたのが現在 徳島都市開発株式会社社長を務める鈴江祥宏氏です。

その最たるものが、「都市計画の変更もせず、小ホールの場所を大きく変えた」ことです。
これに対し市民は「公金の支出の差しどめを求める住民訴訟」を起こしました。
その判決の中で「小ホールの変更は都市計画の変更手続きを要する」とされ、こうした原市長の強引なやり方に待ったがかかりました
市長選挙を4ヶ月後に控えた時の出来事でした。

-------------

原秀樹氏は落選後に悪あがき?

「都市計画の変更をしない」「国かの公費金がない」「県との協議がない」状況の中で、徳島市竹中工務店および西新町開発組合「権利変換計画」の策定縦覧手続き強引に進めました

そして、原秀樹氏は、落選後も"悪あがき"をしました
遠藤氏が市長に就任するまでの20日間の空白期間「権利変換計画書の認可申請」を徳島市に受理させてしまったのです。

-------------

「ホールは買い取らず事業撤退する」と
市議会で堂々と所信表明をした遠藤市長

「新町西地区開発の白紙撤回」を公約に掲げて当選した遠藤市長は、選挙で得た圧倒的多数の民意を尊重し、初議会の本会議で「ホールは買い取らない」「補助金は支出しない」と述べた上で「新町西地区再開発事業から徳島市は撤退する」と所信表明を行いました。

そして議会閉会後、権利変換計画を不認可とする処分を行い、新町西地区開発事業は中止されました。

2016年の選挙では、「白紙撤回」を掲げていたもう1人の候補者・立石氏を支援していた日本共産党徳島市議団遠藤市長を支持することを決めました
日本共産党徳島市議団 加戸悟 市議は当時を振り返り「すごい市長が誕生したことを実感した」と述べます。

平成28年6月議会議事録より
(遠藤彰良氏)

私はさきの市長選挙におきまして、新町西地区市街地再開発事業は白紙撤回することを市民の皆様とお約束して、当選させていただきました。再開発事業につきましては、多くの市民の意思を裏切ることなく、ホールは買い取らない、補助金は支出しないことにより、現事業計画から本市は撤退する方針で進めてまいります。
http://voices.city.tokushima.tokushima.jp/voices/CGI/voiweb.exe?ACT=200&KENSAKU=0&SORT=0&KTYP=2,3&KGTP=1,2,2&TITL_SUBT=%95%BD%90%AC%82Q%82W%94N%91%E6%81@%82R%89%F1%92%E8%97%E1%89%EF%81%7C06%8C%8E06%93%FA-07%8D%86&SFIELD1=HTGN&SSPLIT1=+%2B%2F%21%28%29-&KGNO=125&FINO=566&UNID=K_H28060600073

-------------

再開発組合は提訴するも、遠藤市政が全面勝利!

遠藤市政が行った「権利変換計画の不認可処分」に対し、再開発組合は処分の取り消しを求める裁判を起こしましたが、地裁・高裁で再開発組合の主張はすべて退けられ、遠藤市政が全面的に勝利しました。
そして最高裁は再開発組合の上告を「不受理とする」決定を下し、地裁・高裁の判決が確定しました。

判決の骨子
・都市計画の完了もせず
・国からの補助金も受けられない状態
・ホールの売買契約も認められない
・徳島県が事前協議を拒否し続けている
などを挙げた上で、権利変換計画を不認可処分した「市長の裁量権」を認めたものでした

-------------

新町西地区開発を「中止」にできたのは
市民が「あきらめずに」運動をつないだから

「新町西地区開発」事業の住民投票が市議会で否決された時、市議会議員選挙まで2年、市長選まで3年ほどあったため「展望が見えない」という声も少なからず出されました。
けれども、再開発計画に反対する地権者をはじめ多くの市民はあきらめませんでした。

「新町西開発の白紙撤回を求める市民の会」を結成し、住民投票をされた方々の話を、チラシ配布宣伝でさらに広めていきました。
こうした「あきらめず」につないできた運動が、裁判で事業に「待った」をかけ、遠藤市長の誕生で事業を中止させる結果を作り出しました。

-------------

民意によって当選し、
公約を守った市長になぜ4.58億円もの請求ができるのか?

ここまでの歩みを振り返ってわかるのは、新町西地区開発は多くの徳島市民の民意で「不要」であると判断されたということ。
遠藤前市長はその民意を汲み取り、選挙戦で「白紙撤回」を公約に掲げ、行政手続きに則り誠意を持って市民との約束を守るために行動しました。

なのに、なぜ内藤市長は個人が到底払うことができない4.58億円もの請求書を遠藤氏に送りつけたのでしょう。まったく理解ができません。

遠藤前市長への支払期限がまもなく迫ってきています。
遠藤前市長は「払う必要はない」と明言しています。
内藤市長はどのような対応を行うつもりなのでしょう。


参考資料

徳島市の新ホール整備を巡る主な経過
https://www.topics.or.jp/common/dld/pdf/9f6f9cf3f684bc5d4d06f4cf74e74e66.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?