不審狸認定

枝豆って止まらない、枝豆と昆布のおにぎりが
一番好きです。
一番をいっとうって言い換えるだけで
何か尊みを増してこめられる気がする、
ごきげんよう。

たぬは獣と一緒に暮らせる建物に住んでいます。
だいたいお犬様とお暮らしのニンゲンの方が
多いですが、タイミングがいいと
窓辺に黄昏るよそのお家の
お猫様を拝見できます。
メゾネットタイプなので、
やはりお猫様は2階で黄昏れてることが
多いですね。
両隣はお犬様なんですが、
とてもお行儀のよろしかった
ティーカッププードル様が
お引越しされまして、
寂しさを感じていましたが、
今度はコリー様のような方が
引越して来られました。
生活リズムがなかなかあわず、
きちんとご挨拶できてはいないのですが、
さすがコリー様、深夜にたぬが帰宅しますと
しっかりカーテンの隙間から
警戒されてるんですね。
不審な目はむけるものも
特にたくさん吠えられている様子もなく
なんてご立派なお犬様でしょう、
お近づきになりたいものです、と
常々思いながら過ごしていました。

先日、ご主猫様が体調を崩し、
病院を予約しました。
大変混んでおられる病院様でしたので、
順番になって呼ばれた時は
日も暮れておりました。
察しのいいお猫様に気取られぬよう
一瞬の隙をつき、キャリーバックに
入っていただき、
さぁ、移動は車です、
お連れ致しますね、と
お外に出た瞬間、
なんと無礼なと言わんばかりに
非常に臆病で繊細なご主猫様ですので、
それはもう命の危機を感じるほどに
お鳴きになりました。
この日は暑く、窓を開けていらっしゃる
ニンゲンの方が多かったんですね。
つい、いつものクセで
窓辺にコリー様を探して
目線をあげてしまったんですね。
おとなしいと思っていたコリー様は
当家のご主猫様の悲痛な声を聞いて
窓辺にいらしたんでしょう、
心優しいコリー様でいらっしゃいます。
そう、たぬと目が合った瞬間、
それは猛然とお吠えになりました。
ええ、それはもう、いつぞや
101匹わんちゃんで
お犬様が大変な剣幕でお吠えあそばされるのが
伝播されていくように
コリー様をはじめとして
近隣のお犬様が一斉に
異変をお吠えになられました。
まるで、ここに猫攫いがおる!
悪者が逃げるぞ!
というようでした。
逃亡する罪人のような早さで
車を発進させざるを得ませんでしたね。

なんとか診察を終え、
戻ってくると
やはりコリーさまがこちらを警戒しているのが
横目に見えましたので
今度は目を合わせぬよう
そして、ご主猫様は空気を読んでくださったのか
帰りはお鳴きになりませんでしたので
コソコソと駐車場から玄関にまわりますと、
ドドドドドドドドッと
コリー様が階段を駆け降りて
コリー様宅の玄関からの
侵入を阻止せんばかりの
警戒心を感じながら
そっと自宅に忍び込みました。

それ以来どんなに深夜こそっと
帰宅しても、ふと見上げると
コリー様がこちらを警戒して
見下ろしておられます。

真っ当に静かに生きていくのは
難しいですね。
近所のお犬様方から不審狸認定されてしまったな、と
しょんぼりしております。

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