RELEASE THE SPYCE secret fragranceの1年間の足跡とこれからの展望について


先日TVアニメ RELEASE THE SPYCE(以下リリスパ)を原作としたソーシャルゲーム RELEASE THE SPYCE secret fragrance(以下リリフレ)のサービス終了が告知された。

この記事は広大なサブカルの荒野に咲いたリリフレというソシャゲの1年間の足跡を一人でも多く覚えていてもらいたい、またリリスパというプロジェクトの今後の展開を予想するのがテーマである。

想定読者はリリスパは何となく観ていたがリリフレはやってなかった。結局どんな感じだったのか知りたいという人に向けて書いているつもりだ。

祝え!高坂信誕生の瞬間を!(ロンチ~6月)

2019年2月12日リリフレはアニメ放送間もない内に産声を上げて有象無象のソシャゲ市場に乗り込んだ。

当初はモウリョウを倒してから雪師匠が記憶を消す間まで(日付に直すと8月18日から9月3日まで)のお話という体裁で物語が組まれると告知された。

ここで既におかしな点に気付いただろう。

そう、記憶を消した雪師匠をツキカゲメンバーとして出しながら新しい話を展開したいという矛盾を解消する為の設定なのだが、劇中に明確な日付が出てるので実際は1ヶ月間ちょっとということになりこの時点でかなり無理が生じているのだ。アニメDBのナメック星が5分で滅ぶと良いながら話数で9話、実時間では2ヶ月間かけたような超圧縮時空展開である。

だが安心して欲しい、この設定もすぐに無かったことになる。というのも他のソシャゲ同様季節イベントに準じた期間限定ミッションとストーリーが配信されるのだが、2月にロンチした影響で最初のイベントはバレンタインである。

雪師匠が記憶を消したのは9月だろ!!!!!!

しかしあくまでそういった間の出来事としてあるので、ツキカゲ全員とソシャゲから追加されたキャラ(後述)は出るが、本編より前の時間軸で死亡した藤林長穂や最終回のCパートで登場したモモの弟子である才賀伊智香がメインストーリー並びにイベントに登場することはないし、ましてやプレイアブルキャラとして出ることはなかった。

今思えばドリーム時空でいいから出来る限りプレイアブルキャラは増やしておいた方が良かったんじゃないかと思う。個人的にはリリスパはたまにシナリオが雑だけど勢いとエモーショナルで乗り切るのがウリと思っていたので。

序盤はバレンタインデーでホモを倒したり、エロいというかだっせぇボンテージスーツきた雪師匠が透明人間になるイベントしたり父親が同じコンテンツが違う次元からコラボしたりとリリスパらしさを活かしたソシャゲといった感じだった。

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とりあえずバトルから入るゆゆゆコラボ、かなり春映画指数が高い。

そして私の中でのターニングポイントが訪れる、高坂信の誕生日イベントがついに6月に開催されたのである。

ん...?お前、高坂信を知らなかったのか。次は俺が相手だ(豹変)。

ここで念のため高坂信(以下信様)というキャラについて補足しておく、アニメだけ観た人は知らないキャラだろう。彼女こそアニメ劇中で一瞬だけ言及された八千代命の師匠その人である。

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え?なんかめっちゃ可愛くない?と思ったそこのあなた。是非前日譚を描いたノベル版「GOLDEN GENESIS」(以下GG)を読んでほしい。なぜ「様」呼ばわりされているのかも分かるので。

4話まで無料公開されている。

GGは八千代命のオリジン、師匠の長穂が死んでから荒れていた時期の半蔵門雪が描かれているので、アニメの副読本としてとてもクオリティが高く非常におすすめである。

さて話を戻すと私がリリスパで一番好きなのが他でもない信様なのである。しかし当初ゲームでは信様の復帰も大きく宣伝してたのにも関わらず、実に4ヶ月の間SSR実装が無かったのである。そしていよいよ登場したSSRがこれだ。

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結婚?????????

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いや、推しと推しが結婚したらひれ伏すしかないよね、全く...ちなみにこの時のヴィランは「誘拐シチュの百合を撮影したいから人身売買組織と手を組んでたカメラマン」という例に漏れず変態だった。

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怒涛の全キャラ水着イベ、そして暗雲へ...(7月~9月中旬)

さて夏と言えばソシャゲでは水着のイラストをピックアップして大きく稼ぎたいところだがリリフレはどうだったか、もちろんやったのだが問題はその数とイベントの内容である。

なんと全キャラの水着を4回に分けてほぼ2ヶ月間、インターバルほぼ無しでランキングイベントを開催したのである。

厳密には最後だけはランイベでは無かったのだが、はっきり言うとかなりゲームプレイに疲労が出ていた時期だったと思う。そして何が起こったか

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こちらから引用

そりゃみんなの水着出せば誰かの推しに引っかかる以上お金使うから翌月以降控えようってなるでしょ!!!

つまり水着にかこつけてランイベを連発した結果プレイヤーが疲弊してしまったのではないかというのが私の仮説だ。

それと関係があるか定かではないがこれ以降サービス終了までランキングイベントが開催されることはなかった。

そしてもう一つ、リリフレはコストを消費してプレイヤーの任意で放つ技が2種類あり、より高コストの方を「スパイスバースト」と呼称している。いわゆる必殺技でアニメ演出がカットインで挟まるリッチな仕様だったのだが、この水着イベのピックアップを境に消滅した。

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つまりこの頃から売り上げは上の予測値以上に採算が取れなくなっており、削れるところを削ろうという方針になっていた可能性が極めて高いのだ。

リリスパとゆるゆり 決して交わってはならない...(10月~11月)

夏も終わり残暑がまだまだ続く9月、ゲーム運営に変化が起きた。なんとステップアップガチャに無料石を使っていいよと言い始めたのである。

普通ステップアップガチャとはピックアップ排出を担保する代わりに有償石に限定して売り上げを確保するために設けられると思うのだが、デイリー指令やイベントをこなしていればそれなりに無料石が貯まるリリフレでは益々売り上げを上げるのが難しくなってしまうのではないかと懸念されていた。

そしてついに一部ファンの間で期待されていたイベントが開催される。

ゆるゆりとのコラボである。

ゆゆゆが父親を同じコンテンツとするならばゆるゆりは母親が同じコンテンツだろう。

富山から川崎に修学旅行行くことある

ソラサキに来たごらく部一同が、歳納京子が偶然Wasabiに入り「オリジナルカレーはちみつ抜きガラムマサラマシマシ」の合言葉を偶然言ってしまったせいでツキカゲ候補生としてリリスパメンバーと絡むという平和なお話だった。個人的にはゆゆゆコラボよりもシナリオが好きである。

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この間のイベントは動物の密輸を阻止しようとしたら急に正義の味方のはずのキャラが突如蛮族性を発揮したり、ハロウィンを知らないので妖魔が跋扈していると勘違いした田舎おばあさんがそこら中に塩と灰をまき散らしたりと相変わらずの面白さだった。

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別に皮肉とかじゃなくて本当にイベントのストーリーは面白かった。奇天烈なヴィラン達と牧歌的なキャラの絡みはリリスパのアニメの面白かった点をそのままゲームとして落とし込む事に見事に成功していたと思う。

そしてもう一つこの時期に大きなアップデートがなされた。新組織「ZET」の登場である。

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ZETは愛知を拠点とする私設諜報機関であり作中世界におけるロボットの「人形」の世界的企業の社長でありながら、自らパワードスーツを身にまとって戦う敷島来夢とその妹の敷島真瑠瀬、そして完全自立型アンドロイドのアミィで構成された組織である。

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赤いパワードスーツだし多分アイアンマンを意識したんだろうけど、追加時期が10月なせいでゼロワンにしか見えない。タイミングが悪すぎたんだ...

クリスマスとお正月とサービス終了(12月~現在)

そして本来なら迎えるはずのない雪師匠の誕生日を皆で祝うというドリームイベントや、ロリコンのサンタクロースというカトリックに喧嘩売ってるとしか思えないようなイベントを経て年内のイベントは終了。
時は2020年、信命楓が振袖で初詣に行くという微笑ましいイベント、そして違法カジノ摘発イベントが行われている最中にサービス終了が告知されて今に至る。

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叶わぬ願いとなってしまったね...

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この時期さらなる予算削減が行われた。イベントストーリーはこれまで12話構成だったのだが、8話まで縮小されたのだ。さらに結果的に最後のイベントになってしまったカジノは最後のピックアップ(一番右のキャラ)にキャラクターストーリーが与えられなくなってしまった。(SSRには全3話の個別ミニストーリーが存在していた)

以上がリリフレの1年間である。見てきた通り時間が経つにつれプレイヤー側にも分かってしまうくらいには運営の四苦八苦が見え隠れするような変遷があった。特に大きく売り上げを落とした9月以降はどうにかして立て直せないかと試行錯誤を重ねて様々な策に打って出ていた。
まさに瞬間瞬間を必死に生きてきたのだ。

別に悪口を書くつもりは毛頭なかったのだが、ここまで書いて大分悪口っぽくなっていることに気が付いた。
念のため言うが筆者はこのゲームを第一義でとても愛している。だからこそこの記事を書いているのだ。
そこで1年間何が良かったかを書いていこうと思う。

キャラの絡みが良い

やはりまずはこれに尽きるだろう。
私自身は信様推しではあるが、その他の師弟関係、またゲームから追加されたキャラにもおいしい組み合わせがいくつもあった。

デザイナーベイビー×元敵組織の幹部

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これはゲームから追加された「凪の部隊」という組織の宗近飛粋と乱獅子ゆらの組み合わせだ。凪の部隊は国家直属の組織であり4人構成だが、それぞれが人間離れした超能力を持つ(ツキカゲはスパイスでブーストしているが、あくまで極限まで鍛え上げた普通の人間である)

飛粋は国家プロジェクトのデザイナーベイビーとして育てられ、他人の動きを完璧にコピーする能力を、ゆらは組織の人体実験の副産物として大けがも瞬時に治癒する能力を持っている。
そしてゆらは最初から凪の部隊ではなく、敵の首領の娘だったので最初は大幹部として対立していた。しかしひょんなことから飛粋と無人島で漂流する羽目になり見事陥落、「信じてくれた飛粋の為に」凪の部隊に寝返り家族の愛情を良く知らない女同士という、ツキカゲにはなかった関係性を我々に見せてくれた。

優秀な姉×コンプレックスの塊の妹×アンドロイド

先述したZETは主に姉の来夢が兵器を作ってしまうほど優秀なので妹の真瑠瀬はあくまで秘書やサポート役としての立場にある。

そこでZETの個別ストーリーにおいて嫉妬心を積もらせた妹が裏切るという展開があるのだがなかなか複雑な感情を見せてくれるのだ。

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ちなみにZETのメンバーにもコードネームがある

来夢→ノブナガ
真瑠瀬→ミツヒデ
アミィ→ヒデヨシ

もうちょっと捻ろうよ!!!

来夢は女の子へのセクハラが趣味(原文ママ)であり妹はもちろん、部下のエンジニア達も全員女性(来夢ガールズと呼んでいる)という筋金入りである。
真瑠瀬も普段はおはようのセクハラ(なんだそれ)を嫌がっているのだが

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まぁそういうことである。

余談だが私服のアミィはしっぽにリボンが結んであって可愛いと思う。

高坂信の復帰

これはどちらかというと自分得みたいなバイアスはかかったていると思うが、それ以上にGGの展開を踏まえたエモーショナルが存在している。

アニメでは「ケガで離脱」とだけ言われたが、もう少し言うと毒を振るう敵から八千代命をかばって腕が腐食、カトリーナの協力でアメリカで治療を受けるために離脱したという経緯がある。

雪師匠とは対照的に記憶を消さずに「必ず戻ってもう一度命の歌を聞く」と約束をし、そのために命は駅前で弾き語りを始めた。そして師匠の存在が大きすぎたために弟子を取ることが考えられないと思っていた命の前に現れた運命の相手が相模楓なのである。

是非GGを読破してからアニメ4話を観てもらいたい、これだけでも当作品の見方が変わるはずだ。

そしてアニメで果たせなかった約束を見事ゲームのストーリーの中で回収されたわけである。小説から追っていたファンとしてはこれ以上ないバリューであった。

イベストが面白かった

先述の通りイベストは奇妙奇天烈なヴィランとゆるくも熱い絆で撃破していく展開というのがフォーマットとなっており、これは個人的にはリリスパのゲームとしては正解だったのではと思う。

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名前を変えたくてそのための資金を稼ぐために違法カジノを運営してた山田高司さん改めマウント・田・ハイ司さん

残された謎T /  リリスパの今後

さて1年で終わったリリスパだが当然大往生な訳なく、やり残された話がいくつか存在してる。

Tファイル

アニメでダブルスパイとして信頼を得るために命が天堂に送ったツキカゲの個人データは通称Tファイルと呼ばれ闇社会に流通しているらしい、ゲームではそれが物語の大きなカギを握ると宣伝されていた。

モモの父親の死の真相

主人公の源モモは1話時点で警察官の父親が殉職してシングルマザー家庭という設定が明かされていたが、どうやらただのキャラのバックグラウンドではなく1枚噛んでいるらしいということがメインストーリーの最初に言及されていた。

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(源モモは生まれる前からツキカゲの資格者だった...?)

今後の可能性

現状展開しているリリスパのメディアがゲームしかない以上、ゲームの終了をもってプロジェクトの凍結と見るのが妥当なところかもしれないが、希望としてはノベル版で今後の話を紡いでいくのが(続ける気があるのなら)現実的な路線になるだろう。
一応ファンブックに続編っぽい小説が少しだけ掲載されていた。モモの弟子伊智香は射撃に優れたスパイという設定らしい。
弾丸をロボットの関節にピンポイントで当てて動きを止めるという超精密射撃の持ち主だ。(余談だがこの時の敵は聴覚が不自由なので人間の「耳」に造形的美を見出し、綺麗な耳の人間の耳を噛みちぎってはガムみたいにクチャクチャするのが趣味という敵だった)

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今後ノベルでやりきれなかった話を補完してもらえるとファンとしてはありがたい限りである。

最後に

初めてのnote記事のくせに長々と書いてしまった。
最後まで読んでいただいて、まずは感謝を申し上げたい。

時間が不可逆に流れていき、決して元にはもどらない。みんなが長い人生の中で少しずつ変わっていく。死んだ藤林長穂が生き返ることはないし、半蔵門雪は記憶を消すという選択をして全てを忘れた。だが最終的にどういう結末になってしまってもツキカゲが戦国時代から積み上げてきた歴史の一部であったということに変わりはないのだ。

それと同じく私たちがリリスパを好きになった時間も否定されたわけではないのである。だからこの記事なりアニメなり小説なり二次創作なりでなるべくリリスパを今後も記憶の片隅に置いておくことがこのコンテンツへの餞になると私は確信している。

覚えている私たちの心の中にRELEASE THE SPYCEはいつまでも存在しているのだ。


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