最近は小説を書いているのですが「何もない部屋」という作品で、第6回ことばと新人賞の佳作をいただきました。「八代亜紀の正しさ」についての小説。 10月下旬刊行の「ことばと」vol.8に掲載されますので、手に取ってもらえたらうれしいです。 http://www.kankanbou.com/books/kotobato/0624
「物語ることの反撃 パレスチナ・ガザ作品集」には、23の「物語」が収録されています。 ここではそれを順番に読み、その感想などを一つずつ書いていこうと思います。 本が成立した経緯などについてはあえて触れず、出来うる限りテキスト自体を読むことに徹し、その時々のパレスチナの現状についてもあまり踏み込まないつもりです。 これがあえて「物語」であることの、遠くへ向かって投げられた射程を想定しながら読んでみようと、そんなふうに考えています。 1.「Lは生命(ライフ)のL」ハナーン
梶井基次郎「闇の絵巻」は「物語」がほとんどない小説である。 実際に起こる出来事としては、主人公である「私」が山間の療養地の闇の中を歩いて旅館まで帰るというだけの作品だ。登場人物も「私」ひとりなので、誰かと誰かが会話するような場面すらない(幻覚のようなものを除いて)。 しかし、それゆえにむしろ「私」がその場に臨んでいる闇に対する実感のようなもの、身体感覚それ自体に焦点があたっている。 「私」はひたすらに夜を歩き、そこにあるものを見続ける。その言及は視覚にとどまらず、聴覚・嗅
2024/9/25〜10/6におこなわれるせんだい21アンデパンダン展2024に、映像作品『iPhone3G、乃木坂のVR、震災遺構』を出品します。会場はギャラリー ターンアラウンドです。 『iPhone3G、乃木坂のVR、震災遺構』 2024/3分/シングルチャンネル・ビデオ 撮影・編集・テキスト・朗読:福原悠介 音楽:澁谷浩次(yumbo) 制作:ペトラ <コンセプトシートより> この作品は、iPhone(3G)で撮影した震災当日の写真をきっかけにした「記憶とイメー
※この文章は映画公開直後の2011年に書いたものです。かなり長いです(約12,000字)。 映画の命令と不自由 映画『なみのおと』(2011)のファーストカットは、砂浜である。いくつかのゴツゴツとした岩。固定されたカメラは、波の動きをとらえている。静かなさざ波が寄せては返し、やがてそれは一度大きくうねって、小さな岩場はまるごと波に飲み込まれる。その映像は否応なく、東日本大震災で町を襲った大津波を思い起こさせる。 これは、わざわざ撮らなければ映らない映像だ。 まず、さざ波
2024年2月23・24・25日におこなわれた上映会とトーク「まちとまなざし」におこしいただいたみなさま、ありがとうございました。 お寄せいただいたアンケートのなかから、webでの公開に了承をいただいたものなどをまとめました。 NO. ご覧になった作品 本文 1. 『人形と動くもの』 『老人と家』 「人形を通じて自分の何かが出る、シンプルだけど足りた感じになる」というのは『人形と動くもの』の中で工藤夏海さんの言葉ですが、日常の中には、人が感情移入できるモトとかコトとか
『ヒノサト』は、近年、濱口竜介『偶然と想像』などの撮影で知られる飯岡幸子の、2002年の監督作品である。 特定の人物が映されるわけではなく、ある土地の風景が点描され、おそらく誰かが書いた日記のような言葉が映し出され、その人の描いた絵がいくつかあらわれ、またその土地に返っていくように終わりへ向かう映画。 『ヒノサト』は、当時映画美学校のドキュメンタリーコースに通っていた飯岡の修了制作として作られた作品で、「身内を撮ってはならない」というルールを無視して自分の祖父をテーマに制
会期 2024年2月23日(金・祝)、24日(土)、25日(日) 会場 ギャラリー ターンアラウンド (仙台市青葉区大手町6−22 久光ビル1階) 料金 1プログラム 1,000円 要予約・各回定員15名 ※下記アドレスまで「お名前」「人数」「予約する日時」をお知らせください。 fukuhara at petrajp.com 上映会について 「まちとまなざし」と題されたこの上映会は、わたしたちの暮らす「まち」とは何か、そこで表現するとはどういうことかについて、ドキュ
「セントラル劇場」閉館から5年 仙台の映画館「セントラル劇場」が閉館してから、2023年6月30日で丸5年になります。 1979年に開館した「セントラル」は、大手映画館の二番館(新作を少し遅れて上映する)として運営されていましたが、2002年からはミニシアター系の作品を上映する劇場として、あわせて40年ちかくも仙台の映画文化の一旦を担っていました。 わたしは小学生のころから親に連れられていった記憶があるのですが、特に高校生になって以降は、当時やっていた「土曜レイトショー
オタール・イオセリアーニ映画祭 チネ・ラヴィータで先週からはじまった「オタール・イオセリアーニ映画祭」に日参しています。 ジョージア出身で今年89歳になるイオセリアーニの作品をまとめて見てみると、この作家の特異性と普遍性とに、本当に驚かされます。 今回の特集は、短編含め監督作全21作品を上映するという大変貴重な機会なのですが、ひとまず自分の感想として、イオセリアーニの映画がどうしてこんなに面白いのかあらためて考えてみました。 「いつ終わってもおかしくない」映画 イオ
上映のお知らせ 3月12日の16時から、せんだいメディアテーク7fシアターでおこなわれる「星空と路」で『鈍行旅日記』が上映されます。 昨年、鈍行列車で三週間ほどかけて、三里塚、広島、水俣などを巡って、各地の記録に触れながら書いた日記と、その朗読とiPhoneで撮った旅先の風景によるエッセイ映画です。 ※2024/01/31追記 せんだいメディアテーク2fライブラリでDVDの貸出がはじまりました。 https://recorder311.smt.jp/movie/6639
上映と展示のお知らせ 昨年、鈍行列車で三週間ほどかけて三里塚、広島、水俣などをめぐった旅行の日記「鈍行旅日記」の朗読と、旅先で撮ったiPhoneの映像によるエッセイ映画『鈍行旅日記』を、3がつ11にちをわすれないためにセンターの上映会「星空と路」で上映します。 現在、予告篇代わりに映画の冒頭10分間を公開しています。 星空と路(2023) 日時:3月12日(日)16:00〜17:30 場所:せんだいメディアテーク7fスタジオシアター 無料・予約不要 また「星空と路」では
※この文章は以前、美術家・菊池聡太朗さんの制作を記録した『void』という作品の上映に際して書いたものを再編集しています。また、作品の冒頭の5分間を予告篇として公開しています。 「絵」というものがよくわからない 『void』は、美術家・菊池聡太朗さんが風景画を描いている制作のようすを記録しています。 私は、以前から菊池さんの描く風景画が好きでした。 しかし、自分は「絵画」というものがよくわからないという自覚があり、なぜ例外的に菊池さんの絵に惹かれるのか、それもわからない
「民話ゆうわ座」について 来月、12月11日にせんだいメディアテークで「民話 ゆうわ座」が開催されます。この催しは、震災後からメディアテークで活動をしている「民話 声の図書室」が例年おこなっているもので、今回で9回目です。 民話ゆうわ座 第九回 「伝承のみちすじをたどる ー永浦誠喜さん、伊藤正子さんの語りから」 ■日時:2022年12月11日(日)13:00-16:00 ■会場:せんだいメディアテーク1fオープンスクエア ■参加方法:入場無料、直接会場へ https://
『ロッツ・オブ・バーズ』について 12月15日と21日、東京ドキュメンタリー映画祭2022の短編コンペティションで、監督作『ロッツ・オブ・バーズ』が上映されます。 仙台のバンド・yumboの澁谷浩次さん、ソロアルバムの記録です。 「東京ドキュメンタリー映画祭2022」 短編8『ロッツ・オブ・バーズ』 12月15日(木)16:20 / 12月21日(水)10:00 会場:新宿ケイズシネマ 今回、映画祭での上映に際して、予告編代わりに冒頭の5分間を公開しましたので、よかった
濱口竜介監督の映画『偶然と想像』を見てから、八ヶ月くらいが経ちました。フォーラム仙台という劇場で二回見ました。三つの短編のうちの最後の一話は、私の住んでいる仙台で撮影されています。 このあいだ、ロケ地として出てくる「かつどん家」に久しぶりに行ったら、映画のポスターが貼ってありました。 とんかつ定食を食べながら眺めていたら、『偶然と想像』って結局どういう意味だろうと、そのとてもシンプルな題名が逆に不思議に思えてきました。 「喫茶ホルン」に置いてあったパンフには、監督のこのよ