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中国史ぷち講座

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美作市作東B&G海洋センターで行った『中国史ぷち講座』の欠席者・復習者用テキストデータです。お気軽にご覧ください。
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2024年1月の記事一覧

【春秋戦国編】第8回 斉の明暗 その3【火牛之計 逆襲の戦神】

 不世出の名将・楽毅によって大国・斉の領土はわずか2城のみとなりました。しかし、楽毅の侵攻によって眠れる獅子が眼を醒まします。  そして、両雄の戦いは意外な結末をもたらし、戦国時代は新しい局面を迎えます。 無名の男  田単という男はその名前からわかるとおり、斉の王族の出身です。しかし田氏は傍系の者も多く、田単は首都・臨淄の市場で働く小役人に過ぎませんでした。  転機となったのは紀元前284年に発生した済西の戦いでした。斉軍の敗北を知った田単は安平という町に避難しました。

【春秋戦国編】第8回 斉の明暗 その2【先従隗始 進撃の軍神】

 東方の超大国として春秋戦国時代のメインプレイヤーの一角を担っていたのが斉です。紀元前300年ごろ全盛期を迎えた斉でしたが、一人の名将によって滅亡寸前まで追い詰められます。  弱小国・燕の将軍・楽毅。世界史上最高峰の名将はどのようにして超大国を蹂躙したのでしょうか。 子之の乱  現在中華人民共和国の首都は北京ですが、春秋戦国時代の政治・文化の中心地は黄河流域で、現在の北京周辺は辺境の地でした。  北京周辺を支配していた燕は周王朝のに連なる家柄でしたが、辺境の中小国として記

【春秋戦国編】第8回 斉の明暗 その1【鶏鳴狗盗 華麗なる王族の功罪】

 周の伝説的軍師・太公望や春秋五覇の一人桓公と大宰相・管仲の時代を経て強国として君臨し続けたのが斉です。斉は戦国時代の序盤に家臣である田氏に国を乗っ取られてしまいますが、田氏の斉・田斉もまた経済力を背景に繁栄しました。  そんな斉の絶頂期にひとりの英雄が出現しました。 田氏の繁栄  田氏は斉の王族であり、斉の要職は彼ら一族で占められていました。孫臏をスカウトした田忌もそうです。  田氏は非常に多産であったため、多数の田氏が官職に就くことで斉国内の支配力を強めていきました。

【春秋戦国編】第7回 割拠する群雄 その3【胡服騎射 英雄王の栄光と悲劇】

 商鞅の改革以降発展を遂げる秦に対して、魏と楚は脱落していったのはお話したとおりです。  秦への対抗馬として鎬を削ることになるのが趙です。元々趙は北を異民族が多く住む地域に接し、人口でも経済でも他の七雄に劣る弱小国でした。しかし、ひとりの英雄王の出現が世界の歴史を大きく変えていきます。 辺境の小国  紀元前325年、趙では武霊王が君主として即位します。史記にはこのときは年少であったため、先代からの遺臣・肥義の支えがあったとされています。  当時の趙はかつて晋だった地域の北