『名牝系』華麗なる一族 〜ケイティーズ(Katies)編〜活躍馬まとめ

競走馬の世界には牝系という概念があります。

牝系とは、家族の考え方を競走馬の世界に落とし込んだもので、『母』や『母の母』、『母の母の母』というように母方だけを辿っていく概念になります。

そもそも何故この考え方をするのというと、

サラブレッドには

『thorough』[完璧な、徹底的な]『bred』[品種、育ち]

という意味があり、より優秀なものを生産していくというのが目的であるため、1年に1頭しか産めない牝馬と違い、牡馬は種付けすれば父親になれるので、優秀な馬しか父親になれないという理由があります。

優秀な馬しか父親になれないという事は、父親で大きな差は生まれにくく、母親で差が生まれることになります

それは何代続けても同じ事が言えるので、結果的にこの牝馬は、、からこの牝系は、、という考え方になっていきます。

結果的に牝系ごとに評価される事となり、優秀だとかそうでないとかという話になります。

セリなどではその評価の差が価格に反映され、大きな差が出ます。

たとえ母親が競走馬として優秀ではなくても、牝系が優秀だと高値で取引されます

そういった馬から強い馬が現れるのはサラブレッドの世界では日常茶飯事なので、バイヤーはあまり気にしないですし、むしろ活躍していない事から少し安くなるので多くのバイヤーが狙う馬にもなります。

牝系について長々と書いてきましたが、この記事では、女傑ヒシアマゾンの母でもあるケイティーズから始まるケイティーズ牝系についてまとめています。


ケイティーズについて

ケイティーズ Kaities [愛]

父 ノノアルコ 母 Mortefontaine 母父 Honeyway 生年月日 1981年04月22日

通算成績:愛英10戦4勝 (4-2-1-3)

主な実績:愛1000ギニー(G1)1着、コロネイションS(G2)1着、クイーンエリザベス二世S(G2)2着

代表産駒:ヒシアマゾン、ヒシピナクル、ケイティーズファースト

現役時は、イギリスを中心に重賞戦線で活躍し、愛1000ギニーを勝利した。

現役を引退してからはアメリカで繁殖入りし、13頭を産み落とした。

『ヒシ』の冠名でおなじみの阿部雅一郎氏が6/13頭を所有し、その中には女傑ヒシアマゾンや重賞で活躍したヒシピナクル、ヒシナイルなどが含まれる。

一番仔であるケイティーズファーストが同牝系の発展に多大な影響を与えており、同牝系を代表する活躍馬であるアドマイヤムーンやエフフォーリアはケイティーズファーストの枝葉に属する。


牝系の活躍馬

  • メイショウショウブ

父 ダイワメジャー 母 メイショウスズラン 母父 キングカメハメハ 生年月日 2016年03月06日

主な実績:デイリー杯2歳S(G2)2着、ニュージーランドT(G2)2着、阪神C(G2)3着

  • メイショウゲキリン

父 キズナ 母 メイショウスズラン 母父 キングカメハメハ 生年月日 2019年03月27日

主な実績:きさらぎ賞(G3)

  • ゴーステディ

父 トニービン 母 ケイティーズファースト 母父 Kris 生年月日 1997年04月10日

主な実績:日刊スポ賞中山金杯(G3)3着

アドマイヤムーン

父 エンドスウィープ 母 マイケイティーズ 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2003年02月23日

主な実績:宝塚記念(G1)1着、ジャパンC(G1)1着、ドバイデューティーフリー(G1)1着

代表産駒:ファインニードル、セイウンコウセイ、ハクサンムーン

クラシック戦線では人気に推されるも結果を残す事は出来なかったが、4歳になり好メンバーが揃ったドバイデューティーフリーで初G1勝利。この勝利によりレーティング125を獲得した。

その後宝塚記念とジャパンCのトップG1を2勝したことにより2007年度年度代表馬に選出され、WB RR(ワールド・ベスト・レースホース・ランキング)では125の総合7位タイにランクインした。

種牡馬となった本馬は、その実績から初年度の種付料は500万円に設定されたが、期待ほどの成績を残す事はできず種付料は逓減していった。

自身は中距離馬だったが種牡馬としては、ファインニードルやハクサンムーン、セイウンコウセイなど活躍馬はスプリンターが中心で晩成の産駒が多くなっている。

後継種牡馬としては実質的にファインニードルの1頭で、父系が繋がるかはファインニードル次第と言えるだろう。

  • ロジハービン

父 ハービンジャー 母 ファーストチェア 母父 ジャングルポケット 生年月日 2019年03月23日

主な実績:京成杯(G3)2着

  • プレイ

父 ロックオブジブラルタル 母 マイケイティーズ 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2008年01月29日

主な実績:弥生賞(G2)2着、京成杯(G3)3着

  • ケイティーズプライド

父 ディープインパクト 母 ケイティーズギフト 父 フレンチデピュティ 生年月日 2010年03月19日

主な実績:函館記念(G3)2着、チャレンジC(G3)3着

  • グレイスアン

父 ディープブリランテ 母 ケイティーズベスト 母父 ファルブラヴ 生年月日 2009年03月14日

主な実績:フェアリーS(G3)3着

  • ヴィッテルスバッハ

父 ルーラーシップ 母 ケイテーズジェム 母父 ディープインパクト 生年月日 2016年02月21日

主な実績:ニュージーランドT(G2)3着

エフフォーリア

父 エピファネイア 母 ケイティーズハート 母父 ハーツクライ 生年月日 2018年03月10日

主な実績:皐月賞(G1)1着、天皇賞(秋)(G1)1着、有馬記念(G1)1着、東京優駿(G1)2着

エピファネイアを代表する産駒で無敗のまま皐月賞を勝利。日本ダービーでは圧倒的1番人気に支持され馬群の真ん中から先に抜け出すも、シャフリヤールの強襲にあいゴールのタイミングが悪かった事もあり10㎝差の2着と惜敗する。

秋緒戦の天皇賞(秋)では、コントレイルとグランアレグリアと本馬の3強対決となったがこのレースを完勝し現役最強の称号を得た。

その後、有馬記念も勝利した事により、その年の年度代表馬に選ばれた。

  • リーサルウェポン

父 ディープインパクト 母 クイックコマンド 母父 Gold Legend 生年月日 2011年03月04日

主な実績:愛知杯(G3)2着

  • ベルーガ

父 キンシャサノキセキ 母 アドマイヤライト 母父 Kris S. 生年月日 2015年05月29日

主な実績:KBSファンタジーS(G3)1着

スリープレスナイト

父 クロフネ 母 ホワイトケイティディド 母父 Nureyev 生年月日 2004年02月07日

主な実績:スプリンターズS(G1)1着、CBC賞(G3)1着、高松宮記念(G1)2着

ヒシアマゾン [米]

父 Theatrical 母 Katies 母父 ノノアルコ 生年月日 1991年03月26日

主な実績:阪神3歳牝馬S(G1)1着、エリザベス女王杯(G1)1着、オールカマー(G2)1着、有馬記念(G1)2着

1993年JRA賞最優秀3歳牝馬、1994年JRA賞最優秀4歳以上牝馬、1995年JRA賞最優秀4歳以上牝馬と3年連続牝馬のJRA賞を受賞した名牝であった。

2戦目まではダートレースに出走していたが、3戦目に芝重賞である京成杯3歳S(G2)に出走し、そこで1着とクビ差の2着だった事から芝路線に切り替え、以降芝レースのみに出走となった。

次戦は阪神3歳牝馬S(G1)(現阪神JF)で2番人気に推されたが、終始手応えに余裕がありエンジンの違いを見せ、2着に5馬身を付ける圧勝でその年の最優秀牝馬に選出された。

そこからは外国産馬でクラシックに出走することが出来なかったため、重賞戦線で連勝するもG1に出る事はなく、初のG1が11月のエリザベス女王杯となった。

日本のクラシック戦線は本場イギリスを模倣しており、当時は牝馬クラシック戦線の3冠目である秋華賞がなかったため、このエリザベス女王杯が3冠目の扱いとなっていた。このレースには外国産馬である本馬も出走が可能だった。

G1初挑戦ではあったものの、前哨戦で他の人気馬に勝利していた事から、単勝1.8倍の圧倒的1番人気に支持され、レースは後方から進め大逃げする馬がいた事もあり難しい展開ではあったが4コーナーに向け進出し、最後に2着のチョウカイキャロルをハナ差捉え勝利した。

その後、その年の総決算である有馬記念に出走したが、同年の牡馬3冠馬ナリタブライアンが出走していたため、同年の秋天を勝利したネーハイシーザーや菊花賞馬ライスシャワーなども出走していたものの、ナリタブライアンが圧倒的1番人気の単勝1.2倍に支持され、1強の様相であった。

レースは、ツインターボが大逃げしたものの4コーナーでは馬群に飲み込まれ、有力馬が殺到していく形になったが、ナリタブライアンが能力の違いを見せ、2着の本馬に3馬身差を付ける完勝でオッズ通りの結果となった。

ナリタブライアンには完敗だったもののそれまでの実績や本レースのパフォーマンスから最優秀4歳牝馬に選出された。

5歳の1995年は、春にアメリカ遠征を試みたがレース前に脚部不安のアクシデントが発生したため出走せず帰国し、復帰緒戦は高松宮杯(G2)となったが精彩を欠き5着に敗れ、生涯初の連対を外す事になった。

その後は調子を戻しG2を連勝し、ジャパンCに挑む事になる。

1番人気はナリタブライアンとなったが、怪我の影響で本来の能力ではないということもあり差のない2番に支持された。

当時のジャパンCは外国馬優勢でなんとか打ち負かそうといった様相であったが、本馬やタイキブリザードも外国産馬であり、人気馬の中に日本産馬はナリタブライアンしかいない状態であった。

レースは後方から進め、最後の直線で大外から差してきたものの半馬身届かず2着に敗れたが、先述した状況を鑑みればかなり善戦したと言える結果だった。

その後は順調さを欠き、エリザベス女王杯でも2着入線するも7着降着になったりと噛み合いが悪く、7歳シーズンの1997年も現役で出走する事になっていたがケガにより引退となった。

引退後は1年目にヒシマサルを種付してからは、生まれ故郷のアメリカの牧場で繁殖生活を送った。

繁殖牝馬としては目立った成績を出す産駒には恵まれなかった。

  • ヒシナイル [米]

父 A.P.Indy 母 Katies 母父 ノノアルコ 生年月日 1994年04月15日

主な実績:フェアリーS(G3)1着、フラワーC(G3)3着

  • ヒシピナクル [米]

父 Theatrical 母 Katies 母父 ノノアルコ 生年月日 1996年03月17日

主な実績:関西TVローズS(G2)1着、秋華賞(G1)3着


まとめ

いかがだったでしょうか。

この牝系は少し変わっており活躍馬から活躍馬が出ず、活躍できなかった馬から活躍馬が出ている傾向にあります。

今後はエフフォーリアが社台SSにスタッドインするはずなので、エフフォーリア産駒が走るとさらにこの牝系が広がる事になりますね。

アドマイヤムーンの産駒自体も多いので、この2頭によってケイティーズのクロスを見かける事も増えてくるのではないかと思いますので要注目です。

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