『名牝系』華麗なる一族 〜ドイツSライン(Schwarz Kutte)編〜活躍馬まとめ

競走馬の世界には牝系という概念があります。

牝系とは、家族の考え方を競走馬の世界に落とし込んだもので、『母』や『母の母』、『母の母の母』というように母方だけを辿っていく概念になります。

そもそも何故この考え方をするのというと、

サラブレッドには

『thorough』[完璧な、徹底的な]『bred』[品種、育ち]

という意味があり、より優秀なものを生産していくというのが目的であるため、1年に1頭しか産めない牝馬と違い、牡馬は種付けすれば父親になれるので、優秀な馬しか父親になれないという理由があります。

優秀な馬しか父親になれないという事は、父親で大きな差は生まれにくく、母親で差が生まれることになります

それは何代続けても同じ事が言えるので、結果的にこの牝馬は、、からこの牝系は、、という考え方になっていきます。

結果的に牝系ごとに評価される事となり、優秀だとかそうでないとかという話になります。

セリなどではその評価の差が価格に反映され、大きな差が出ます。

たとえ母親が競走馬として優秀ではなくても、牝系が優秀だと高値で取引されます

そういった馬から強い馬が現れるのはサラブレッドの世界では日常茶飯事なので、バイヤーはあまり気にしないですし、むしろ活躍していない事から少し安くなるので多くのバイヤーが狙う馬にもなります。

牝系について長々と書いてきましたが、この記事では、ドイツのS牝系についてまとめています。


ドイツのSラインについて

ドイツの馬産には様々なルールがあるのですが、その一つが名前の頭文字を母と同じ文字から始めるというものです。

産まれた仔馬は必ず母と同じ頭文字から始めるため、代を経ていき時間が経っても同じ頭文字という事は同じ牝系に属するという事が一目でわかるようなシステムになっています。(同じ頭文字から始まる別ラインがあることもあります)

Sラインの他にも、Lライン、Mライン、Aライン、Kライン、Pラインなどがあります。

日本でも有名な他のドイツ牝系の馬としては、エイシンフラッシュはMライン、ワールドエースやワールドプレミアの母マンデラはMライン、MonsunはMライン、Galileoの母母でKing's Bestの母AllegrettaはAライン、AcatenangoはAラインといった感じになっています。

Schwarz Kutteを祖とする同牝系ですが、独1000ギニー勝ち馬Schwarzliesel、独ダービーを勝利するなどした歴史的名牝Schwarzgoldと続き、Schwarzblaurotはそこそこの成績であったが、繁殖として優秀でこの馬から枝葉に分かれていきます。

Schwarzblaurotの産駒で父も同じ全姉妹であるScheherezadeとSuleikaが第二の祖となっていきます。

この記事では、この2頭を分岐点として分けて紹介しています。


牝系の活躍馬

活躍馬が非常に多いので日本に関連する馬のみとなります。

Scheherezade

父 Ticino 母 Schwarzblaurot 母父 Magnat 生年 1952年

通算成績:独6戦4勝 (4-1-1-0)

スタセリタ Stacelita [仏]

父 Monsun 母 Soignee 母父 Dashing Blade 生年月日 2006年04月17日

主な実績:仏オークス(G1)1着、ヴェルメイユ賞(G1)1着、サンタラリ賞(G1)1着

代表産駒:ソウルスターリング、シェーングランツ

C.ルメールがフランス時代に主戦を務め、G1を6勝し年度代表牝馬にも選ばれた事のある欧州屈指の名牝。

日本に繁殖として輸入されてからソウルスターリングや孫からは2冠馬スターズオンアースが出るなど、日本の新たな名牝系の祖として着実に実績を積み上げている。

スタセリタのラインは産まれる仔自体が牝馬が多く、活躍馬が牝馬に偏っているのが偶然かははっきりしないが、牝馬が多い事は牝系を広げるという意味で非常に意味があり、今後も活躍馬が出続ける下地は整っている。

スターズオンアース

父 ドゥラメンテ 母 サザンスターズ 母父 Smart Strike 生年月日 2019年02月27日

主な実績:桜花賞(G1)1着、優駿牝馬(G1)1着

早逝したドゥラメンテ産駒2頭目のG1馬で、桜花賞、オークスと連勝し父と同じく2冠馬となった。

ソウルスターリング

父 Frankel 母 スタセリタ 母父 Monsun 生年月日 2014年02月13日

主な実績:阪神ジュベナイルF(G1)1着、優駿牝馬(G1)1着、チューリップ賞(G3)1着

父フランケル 母スタセリタというワールドクラスの超良血で、フランケル産駒としても初年度の産駒だったが、産駒G1勝利第1号が本馬の阪神JFだった。

フランケル産駒らしい完成度の高さとスピード、気の難しさを持ち合わせており、3歳春までは6戦5勝G1 2勝と素晴らしい成績だったが、それ以降は下降していった。

  • シェーングランツ

父 ディープインパクト 母 スタセリタ 父 Monsun 生年月日 2016年01月29日

主な実績:アルテミスS(G3)1着

  • セルキス Selkis [独]

父 Monsun 母 Schwarzach 母父 Grand Lodge 生年月日 2008年02月23日

主な実績:ディアナトライアル(G2)1着

  • ヴェロックス

父 ジャスタウェイ 母 セルキス 母父 Monsun 生年月日 2016年03月04日

主な実績:皐月賞(G1)2着、神戸新聞杯(G2)2着、東京優駿(G1)3着

ダノンキングリーやサートゥルナーリアといった強豪相手にクラシックを戦った馬だったが2着、3着、3着とあと一歩届かなかった。

Suleika

父 Ticino 母 Schwarzblaurot 母父 Magnat 生年 1954年

通算成績:独6戦1勝 (1-0-0-5)

  • セリエンホルデ Serienholde [独]

父 Soldier Hollow 母 Saldenehre 母父 Highest Honor 生年月日 2013年03月23日

主な実績:独オークス(G1)1着

シュネルマイスター

父 Kingman 母 セリエンホルデ 母父 Soldier Hollow 生年月日 2018年03月23日

主な実績:NHKマイルC(G1)1着、毎日王冠(G2)1着、安田記念(G1)2着

  • サロミナ Salomina [独]

父 Lomitus 母 Saldentigerin 母父 Tiger Hill 生年月日 2009年02月22日

主な実績:独オークス(G1)1着、ハンブルク牝馬賞(G3)1着

代表産駒:サリオス、サラキア

現役時も独オークスを勝つなど優秀な馬だったが、繁殖として日本に輸入されてからはさらに優秀で、5/6で勝ち上がり、勝ち上がった中からG1級を2頭、さらにかなり素質を持っている期待馬もおり、産まれた殆どが重賞級という途轍もない繁殖成績である。

  • サラキア

父 ディープインパクト 母 サロミナ 母父 Lomitus 生年月日 2016年03月04日

主な実績:アイルランド府中牝馬(G2)1着、エリザベス女王杯(G1)1着、有馬記念(G1)1着

元々素質馬ではあったが、5歳夏までに重賞勝ちもなく、小倉のオープン戦を走っていた馬だったが、そこを勝利してから覚醒し府中牝馬S(G2)1着、エリザベス女王杯2着、有馬記念2着と一気にトップレベルまで駆け上がった近年稀に見る晩成馬だった。

サリオス

父 ハーツクライ 母 サロミナ 母父 Lomitus 生年月日 2017年01月23日

主な実績:朝日フューチュリティ(G1)1着、毎日王冠(G2)1着、サウジアラビアRC(G3)1着

2歳時から完成度が高く2歳G1を完勝したが、クラシック戦線ではコントレイルの同期であったため皐月賞、ダービーは2着と敗れた。

状態が上がって来ない期間が続いたが、5歳の安田記念では復調気配を見せ惜敗の3着となった。

ビワハイジ

父 Caerleon 母 アグサン 母父Lord Gayle 生年月日 1993年03月07日

主な実績:阪神3歳牝馬S(G1)1着、札幌3歳S(G3)1着、京都牝馬特別(G3)1着

現役時も重賞戦線で活躍した馬なのだが、その成績が霞むくらいの繁殖成績で日本でも3本の指に入る神繁殖である。

出走した9/11が勝ち上がり、6頭が重賞勝ち、他も3勝、4勝、4勝している、ブエナビスタのような歴史的名牝もいるなど、重箱の隅すらつつけない成績といえる。

  • アドマイヤジャパン

父 サンデーサイレンス 母 ビワハイジ 母父 Caerleon 生年月日 2002年04月16日

主な実績:京成杯(G3)1着、菊花賞(G1)2着、皐月賞(G1)3着

  • アドマイヤオーラ

父 アグネスタキオン 母 ビワハイジ 母父 Caerleon 生年月日 2004年02月19日

主な実績:報知杯弥生賞(G2)1着、京都記念(G2)1着、東京優駿(G1)3着

ブエナビスタ

父 スペシャルウィーク 母 ビワハイジ 母父 Caerleon 生年月日 2006年03月14日

主な実績:天皇賞(秋)(G1)1着、ジャパンC(G1)1着、桜花賞(G1)1着、優駿牝馬(G1)1着

日本競馬を代表する歴史的名牝でG1成績は(6-7-2-3)と安定感抜群の成績だったが、運がない事も多くG1 6勝はもちろん凄いのだが2着は7回もある。

G1 13連対という記録はダート馬を除けば、第1位の記録で2位のテイエムオペラオーが11連対である。この記録は、長く活躍できるダート馬が多数ランクインしており、芝馬で且つ牝馬という事を考慮しなくても十分な偉業なのだがそれ以上の価値があると言えるのではないだろうか。

  • タンタラス

父 キングカメハメハ 母 ブエナビスタ 母父 スペシャルウィーク 生年月日 2016年02月16日

主な実績:京都牝馬S(G3)3着

  • ロッテンマイヤー

父 クロフネ 母 アーデルハイト 母父 アグネスタキオン 生年月日 2013年03月23日

主な実績:デイリー杯クイーンC(G3)3着

  • トーセンレーヴ

父 ディープインパクト 母 ビワハイジ 母父 Caerleon 生年月日 2008年03月21日

主な実績:エプソムC(G3)1着、テレビ東京杯青葉賞(G2)3着、毎日杯(G3)3着

ジョワドヴィーヴル

父 ディープインパクト 母 ビワハイジ 母父 Caerleon 生年月日 2009年05月13日

主な実績:阪神ジュベナイルF(G1)1着、チューリップ賞(G3)3着

  • サングレアル

父 ゼンノロブロイ 母 ビワハイジ 母父 Caerleon 生年月日 2011年05月08日

主な実績:サンスポ賞フローラS(G2)1着

  • エアスマップ

父 デインヒル 母 サトルチェンジ 母父 Low Society 生年月日 1995年04月04日

主な実績:産経賞オールカマー(G2)1着、新潟記念(G3)2着、エプソムC(G3)2着

マンハッタンカフェ

父 サンデーサイレンス 母 サトルチェンジ 母父 Low Society 生年月日 1998年03月05日

主な実績:菊花賞(G1)1着、有馬記念(G1)1着、天皇賞(春)(G1)1着

現役時は長い距離のG1を3勝し、血統からもいかにも晩成ステイヤーという感じだが、産駒はあらゆるタイプが出ており、短距離〜長距離、芝ダート問わずさまざまな場面で活躍馬を輩出した。

その万能性もあり、2009年にはリーディングサイアーに輝いている。

  • ジャングルスマイル

父 ジャングルポケット 母 サトルスマイル 母父 バブルガムフェロー 生年月日 2006年04月21日

主な実績:白山大賞典(G3)2着

  • アプリコットフィズ

父 ジャングルポケット 母 マンハッタンフィズ 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2007年01月26日

主な実績:デイリー杯クイーンC(G3)1着、クイーンS(G3)1着、秋華賞(G1)3着

  • クレスコグランド

父 タニノギムレット 母 マンハッタンフィズ 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2008年01月31日

主な実績:京都新聞杯(G2)1着

  • ダービーフィズ

父 ジャングルポケット 母 マンハッタンフィズ 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2010年02月24日

主な実績:函館記念(G3)1着、セントライト記念(G2)2着、札幌記念(G2)3着


まとめ

いかがだったでしょうか。

トレンドに変わりはありますが長きに渡って日本で活躍馬が出ており、今はサロミナとスタセリタを中心に活躍が輩出されています。

特にスタセリタは孫の代からスターズオンアースが出ており、スタセリタ牝系と呼ばれる日が近いうちに来ると考えています。

社台RHの馬が中心なのでこれかも出資できる機会はあるでしょうから狙い目ではないかと思っています。

直近でもサリオス、シュネルマイスター、スターズオンアースなどG1級が次から次に出てくる牝系なので是非注目してみてください。

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