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『名牝系』華麗なる一族 〜ダイナサッシュ(Dyna Sash)編〜活躍馬まとめ

競走馬の世界には牝系という概念があります。

牝系とは、家族の考え方を競走馬の世界に落とし込んだもので、『母』や『母の母』、『母の母の母』というように母方だけを辿っていく概念になります。

そもそも何故この考え方をするのというと

サラブレッドには

『thorough』[完璧な、徹底的な]『bred』[品種、育ち]

という意味があり、より優秀なものを生産していくというのが目的であるため、1年に1頭しか産めない牝馬と違い牡馬は種付けすれば父親になれるので、優秀な馬しか父親になれないという理由があります。

優秀な馬しか父親になれないという事は、父親で大きな差は生まれにくく、母親で差が生まれることになります。

それは何代続けても同じ事が言えるので、
この牝馬は、、からこの牝系は、、という考え方になっていきます。

結果的に牝系ごとに評価される事となり、優秀だとかそうでないとかという話になります。

セリなどではその評価の差が価格に反映され、大きな差が出ます。

たとえ母親が競走馬として優秀ではなくても、牝系が優秀だと高値で取引されます。

そういった馬から強い馬が現れるのはサラブレッドの世界では日常茶飯事なので、バイヤーはあまり気にしないですし、むしろ活躍していない事から少し安くなるので多くのバイヤーが狙う馬にもなります。

牝系について長々と書いてきましたが、この記事では、名種牡馬ステイゴールドを輩出した名牝系であるダイナサッシュ牝系についてまとめています。


ダイナサッシュについて

ダイナサッシュ Dyna Sash

父 ノーザンテースト 母 ロイヤルサッシュ 母父 Princely Gift 生年月日 1979年03月16日

通算成績:9戦0勝 (0-2-1-6)

主な実績:なし

代表産駒:サッカーボーイ

母ロイヤルサッシュは社台ファーム初期の基礎繁殖牝馬で、ダイナサッシュはその5番仔である。

現役時は9戦したものの未勝利で引退した。

繁殖入り後、直仔としての活躍馬はサッカーボーイの1頭のみだったが、産んだ2頭の牝馬が繁殖として大成功したことにより、同牝系が大きく広がることとなった。

特にゴールデンサッシュは種牡馬として大成功したステイゴールドをはじめ、重賞戦線で活躍したレクレドール、活躍馬を3頭産み落としたグレースランドなど同牝系の発展に大きな影響を与えており、同牝系の活躍馬の多くはゴールデンサッシュの枝葉に属している。


牝系の活躍馬

サッカーボーイ

父 ディクタス 母 ダイナサッシュ 母父 ノーザンテースト 生年月日 1985年04月28日

主な実績:阪神3歳S(G1)1着、マイルチャンピオンS(G1)1着、函館記念(G3)1着

受賞タイトル:1987年JRA賞最優秀3歳牡馬、1988年JRA賞最優秀スプリンター

代表産駒:ナリタトップロード、キョウトシチー、ヒシミラクル、アイポッパー

本馬はスピードに非常に優れていると同時に父ディクタスの気性の激しさを強く持っており、それらにまつわるエピソードは多い。

デビュー戦は1200m戦にも関わらず2着に9馬身差、1.5秒差を付け勝利すると、2戦目は出遅れもあり4着に敗れるも、3戦目のもみじ賞(OP)では2着に10馬身差の1.6秒差を付け勝利。

4戦目は阪神3歳S(G1)に出走したが、G1でも変わらない圧倒的なパフォーマンスを見せ、2着に8馬身差の1.3秒差で勝利した。

その後は距離延長し、3戦連続2000m以上のレースに出走するも距離の壁か結果は出なかった。

再びマイル戦に戻したマイルCSでは、2着に4馬身差の差を付け完勝し、その年の最優秀スプリンターに選出された。

種牡馬となった本馬だが産駒は本馬とはタイプが異なり距離が持つ馬も多く、ナリタトップロードは菊花賞、ヒシミラクルは天皇賞(春)、アイポッパーはステイヤーズSなど、代表産駒の殆どが長い距離での実績を持っている。

  • バランスオブゲーム

父 フサイチコンコルド 母 ホールオブフェーム 母父 アレミロード 生年月日 1999年04月22日

主な実績:セントライト記念(G2)1着、毎日王冠(G2)1着、中山記念(G2)1着、産経賞オールカマー(G2)1着

  • ケイデンスコール

父 ロードカナロア 母 インダクティ 母父 ハーツクライ 生年月日 2016年02月11日

主な実績:読売マイラーズC(G2)1着、新潟2歳S(G3)1着、NHKマイルC(G1)2着

  • フェイムゲーム せん

父 ハーツクライ 母 ホールオブフェーム 母父 アレミロード 生年月日 2010年05月11日

主な実績:アルゼンチン共和国杯(G2)1着、目黒記念(G2)1着、天皇賞(春)(G1)2着

ステイゴールド

父 サンデーサイレンス 母 ゴールデンサッシュ 母父 ディクタス 生年月日 1994年03月24日

主な実績:香港ヴァーズ(G1)1着、宝塚記念(G1)2着、天皇賞(秋)(G1)2着、天皇賞(春)(G1)2着

受賞タイトル:2001年JRA賞特別賞

代表産駒:オルフェーヴル、ゴールドシップ、インディチャンプ、オジュウチョウサン

現役時は日本競馬史上屈指のシルバーコレクターと知られており、種牡馬としてはそこまで期待されていなかったものの結果的には大成功した。

現役時からかなり気の難しい馬で、その種牡馬成績とのギャップから本気を出していなかった説が浮上する本馬だが、種牡馬としても一癖どころではない個性派の名馬を多数輩出した。

この馬の代表的なエピソードとしては、4歳8月(現3歳)の阿寒湖特別(900万円以下)(現2勝クラス)を勝利してから7歳5月(現6歳)の目黒記念(G2)を勝利するまで28連敗したことだろう。

その中身もかなり濃く、G1での2着が4回、3着が2回、それ以外の重賞での2着が3回、3着が4回と重賞どころかG1をいつ勝っても不思議ではない実績の持ち主だったが連敗が続いた。

連敗のストップと悲願の初重賞制覇となった目黒記念を勝利してからは上位からは離れた入線が数戦続いたが、7歳になり緒戦の日経新春杯(G2)を勝利し、重賞2勝目となった。

次戦は創設されてから4年目で当時G2だったドバイシーマクラシックだったが、ファンタスティックライトやダリアプール、ムタファーウエクなど欧州のトップホースが参戦しており、ブックメーカーの人気でも10番人気程度の低評価だったが、ファンタスティックライトとの接戦を制し、重賞3勝目となった。

対戦相手の強さからも日本のG1を勝つより遥かに難易度が高いのだが、当時は創設したばかりということもありいまだにG1未勝利だった。

その後日本で中距離王道路線のレースに出走するも結果が出なかったが、引退レースには有馬記念ではなく香港ヴァーズ(G1)が選ばれた。

レースは中団から進め、逃げたエクラールが4コーナーでは皇族との差をかなり広げていたため、届かないと思われたが、最後の200m程で猛追し、アタマ差捉え悲願のG1制覇となった。

このレベルのトップホースが50戦すること自体も非常に稀だが、G1をそれまで勝てなかった馬が7歳12月にして勝利するというのはかなりのレアケースであった。

この勝利により2001年度JRA賞特別賞を受賞した。

引退後は種牡馬として供用される事となったが、当初それほど期待されていなかったものの蓋を蹴てみれば産駒が走りまくり、オルフェーヴルやゴールドシップ、ドリームジャーニー、インディチャンプなど数多くの名馬を輩出し、名種牡馬としての地位を確立した。

出走した産駒が1頭の2016年を除けば2015年が実質最終世代と言え、2022年に7歳になった世代だが、7歳でも重賞を勝利しており、現役時の本馬と同じく産駒の息は非常に長い。

産駒は母父ノーザンテーストの影響を強く受けており、ノーザンテーストは3度成長するという有名な話もあるが、早熟性に加えて成長力も持っており、2歳やクラシックでも古馬レースでも非常に強い。

また本馬も海外では2戦2勝だったが、産駒もステイゴールドと言えば海外というのが一般的な認識であり、オルフェーヴルの凱旋門賞2年連続2着やナカヤマフェスタの凱旋門賞2着、ウインブライトの香港、ステイフーリッシュのサウジ→ドバイの転戦などとにかく海外レースで勝負強い。これは産駒特有の精神的にも身体的にもタフである事が大きく影響している。

  • カラテ

父 トゥザグローリー 母 レディーノパンチ 母父 フレンチデピュティ 生年月日 2016年05月27日

主な実績:新潟記念(G3)1着、東京新聞杯(G3)1着、中山記念(G2)2着、関屋記念(G3)2着

  • ドリームパスポート

父 フジキセキ 母 グレースランド 母父 トニービン 生年月日 2003年03月14日

主な実績:神戸新聞杯(G2)1着、皐月賞(G1)2着、菊花賞(G1)2着、ジャパンC(G1)2着

G12着は3回もあるもG1を勝つ事は出来なかった。

同牝系で最強のシルバーコレクターステイゴールドと同じく、シルバーコレクターらしく生涯に渡って2着が多く、低いレベルにおいても高いレベルにおいても2着、3着が多い、生粋のシルバーコレクターと言える戦績となっている。

  • エールヴォア

父 ヴィクトワールピサ 母 フィーリングトーン 母父 ワイルドラッシュ 生年月日 2016年03月12日

主な実績:フラワーC(G3)2着、アルテミスS(G3)3着

  • ラウンドワールド

父 ディープインパクト 母 グレースランド 母父 トニービン 生年月日 2010年05月07日

主な実績:札幌2歳S(G3)2着

  • フロンティア

父 ダイワメジャー 母 グレースランド 母父 トニービン 生年月日 2015年04月05日

主な実績:新潟2歳S(G3)1着、中スポ賞ファルコンS(G3)3着

  • レクレドール

父 サンデーサイレンス 母 ゴールデンサッシュ 母父 ディクタス 生年月日 2001年02月14日

主な実績:関西TVローズS(G2)1着、クイーンS(G3)1着、札幌記念(G2)2着

  • ベルーフ

父 ハービンジャー 母 レクレドール 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2012年01月21日

主な実績:京成杯(G3)1着、小倉記念(G3)2着、チャレンジC(G3)2着

ショウナンパンドラ

父 ディープインパクト 母 キューティゴールド 母父 フレンチデピュティ 生年月日 2011年03月10日

主な実績:秋華賞(G1)1着、ジャパンC(G1)1着、宝塚記念(G1)3着、ヴィクトリアマイル(G1)3着

受賞タイトル:2015年JRA賞最優秀4歳以上牝馬

  • メルヴェイユドール

父 フジキセキ 母 ゴールデンサッシュ 母父 ディクタス 生年月日 2007年01月29日

主な実績:マーメイドS(G3)3着


まとめ

いかがだったでしょうか。

社台ファームの基礎繁殖牝馬から広がった歴史ある牝系ですが、近年でもカラテやケイデンスコールが活躍しており、牝系の活力はいまだに健在です。

歴史があるのはいいことばかりではなく、付けてきた種牡馬の質によって出来栄えがかなり変わってくるのが血統なので、代々重ねられている種牡馬を意識する事が大事になっていきます。

ショウナンパンドラはフレンチデピュティにディープインパクトと母方としても非常に期待のできる血統ですし、インダクティやフィーリングトーンの枝葉は付けている種牡馬の質がいいので今後活躍する可能性が高いです。

社台の思い入れも強いはずなので、今後も力を入れていく可能性が高く要注目の牝系です。


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