見出し画像

【31-40日目】100ラジを100倍楽しむためのファンブック ~現役放射線技師が「100日後に吸着事故を起こす放射線技師」を解説する~

企画の主旨はこちら↓の「はじめに」をお読みください。

31日目

この先の物語のキーマン(キーウーマン?)となるキャラクターの初登場回です。

さて、ここでは診療放射線技師に必要なスキルである「視野の広さ」についえお話しします。当然、視野と言うのは広ければ広い方が良いのでしょうが、人間は誰しも物事に没頭すると対象物にのみ注意が向いてしまい視野が狭くなってしまうものです。あるいは医師が行う手術などにおいては、周りの雑音が一切聞こえないほど集中するということは必ずしも悪いことではないでしょう。

我々診療放射線技師は画像を撮像することが主な業務ですが、その中にもヒヤリハットが多く潜んでいます。立位可能だと思っていた患者が急にふらついて転倒してしまう、ポータブル撮影の際に見えにくかった点滴チューブを引っかけてしまう、CT撮影で寝台が移動するときにラインの取り回しが悪い、など。

放射線検査の撮影室内で起こったこれらの事故は全て(仮に自分が悪くなくても)検査に対応した放射線技師の責任である、と考えられています。救急患者のCT検査では医師看護師など他職種のスタッフが患者の移乗を手伝ってくれますが、「寝台がどこからどこまで動くか」を把握しているのは放射線技師だけであり、他職種の人はそんなのお構いなしに目についた場所に点滴を架けその辺にポンプ類を置いてしまいます。我々は検査を安全に遂行する責任がありますので、そういった行為に目を光らせ適切に指示を出すためには広い視野が必要になります。また血管撮影の手技中は、オペレーターである医師はどうしてもカテーテル操作に集中してしまい、例えば患者バイタルであるとか先端以外のカテーテルやワイヤの挙動といったものには目が届きません。放射線技師は手技を最も後方から、広い視野で全体を俯瞰する立場で検査に臨みます。

このように、我々は当然患者第一に検査に臨むのですが、同時に周囲のスタッフ、周辺環境にも目を光らせる必要があります。病棟ポータブルに行って、患者さんの事しか視界に入っていないようでは医療安全は達成できません

32日目

このような休日の過ごし方、私もよくあります。今やスマホのおかげでパソコンやテレビの前にすら移動する必要がなくなりました。しかしながら「休日にベッドから出れない」というのは心の疲れのサインかも知れません。

自分の不調に気づかないで無理を続けていると、注意力散漫になってしまい仕事に影響が出てしまいます。私もうつが気になって色々調べてみましたが、かえって「何かしなきゃ」「趣味を持て」というのも良くないようで、「何もしないをする」と言うのが効果的なようです。少しオシャレをしてカフェでボーっとするなど。上記サイトで例示されている「五感のフル活用」によるリラックス手段をお示します。

【リラックス手段①】部屋にリラックススペースを作る
【リラックス手段②】シーシャ(水煙草)
【リラックス手段③】お香
【リラックス手段④】入浴
【リラックス手段⑤】日光浴
【リラックス手段⑥】ジャンクフード
―発達障害の僕がお勧めする「リラックス法」(東洋経済オンライン)より―

個人的には⑥の「体に悪いものを食べまくる」が一押しというか、よくやることですね。

33日目

3日目17日目を併せて楽しみたい回です。

MRIの金属チェックの際に一定数エンカウントする「金玉オヤジ」への対処法ですが、決して照れてアタフタとしてはいけません。こう言った発言をする人は相手が困った様子を見て喜びますので、毅然とした態度で流す、あるいは無視するといった対応が望ましいです。

「あ、そういうの大丈夫です」の他には「外せるものなら外してみてください」「じゃぁ検査受けられませんね」「即座にセクハラ認定」「それはMRI対応金属ですか?」などが対応として挙げられます。

そもそも全く面白くないジョークなのに、なぜこのネタを繰り返すオジサンが多いのでしょうか?同様に「アルコール負けしませんか?」→「アルコールは大好きじゃ!ガッハッハ」も聞き飽きました。

ちなみに画像検査の際に外してもらうことが多い「湿布」ですが、これはレントゲンの際には「写真に映ってしまう」という理由になりますが、MRI検査の場合は理由が異なります。MRIの際に湿布などを貼っていると、熱を帯び火傷の原因となることがあります。同様の理由でまた、アートメーク・入れ墨についても、発熱原因となる場合があります。一方CT検査の場合は「輪切りの画像」を作るために体表に貼ってある湿布は外さなくても問題が無い場合があります。画像検査の種類、撮影する部位により対応が異なりますので、対応する診療放射線技師の説明に従ってくださいね。

34日目

我々は撮影装置あっての職業です。撮影装置に愛をもって接する技師は、装置に愛される、、、、という限りでないのがこの例です。普段はやらない所のホコリを拭くために、普段はしない可動域まで動かすと良く壊れたりエラーが出たりします。我々が装置を壊して弁償するということは(よほど悪意を持ってやったのでなければ)あり得ないと思いますが、例えばその故障によって翌日の検査に使用できない、となればインシデントレポート(この場合では始末書のようなもの)を書いて提出しなければなりません

ちなみにですが「何か不具合があるのは薄々気づいているけれど、気づかないふりをして放置する」という人間も一定数居ますが、マジでやめてください。多くの場合、このように善意で掃除をしてくれた人などがトドメを指す羽目になります。

なんだか暗い気分になったので、2コマ目の擬音に隠されている#ババババンビの元気になれるMVを貼っておきます。

35日目

フラグがビンビンに立っています。

前日に壊してしまった(トドメを刺してしまった)ところを自分で修理しているのでしょうか。余談ですか古の診療放射線技師は、かつてはX線装置に不具合が生じた際に色々と自分で修理するスキルを持っていたといいます。診療放射線技師養成のカリキュラムには「医用工学」「放射線機器学」といった工学的知識も求められますし、言われてみれば、今の病院も前の病院も、至るところにドライバーやはんだごてなどの(古びた)工具セットがあったように思います。照射野ランプの交換などはごく最近でも自分でやっていたとも聞きますが、今では医療安全や責任範囲の観点からそういったことは勧められませんね。

36日目

33日目の湿布の話と重複しますが、画像検査において金属やプラスチックの身に着けているものを外してもらう理由は2つ、①撮影する写真に映り込んでしまい、病気の診断に影響が出る、②画像診断機器との相互作用により安全性に問題が生じる恐れがある、という理由に大別されます。

胸のレントゲンの際に金具の付いた下着を外してもらうのは①の理由であり、その際には上半身の体幹部しか画像に映りませんので腕時計やヘアアクセサリーは外す必要はありません。稀に「放射線で腕時計が壊れる」と言ったイメージを持たれる患者さんがいらっしゃいますが、そんなことはありません。金属以外にも分厚い湿布やプラスチックのボタンなどはレントゲンに映ってしまいます。むしろ一目で見て「これは金属だ」とわかるものよりも、朧げにしか画像に映らないこういったものの方が誤診に関わりますので、重要です。

こちらが「外さなくても大丈夫です」と言っても「でも外したって悪いことはないでしょ?」と、『大は小を兼ねる』の発想で強引に突破される場合がありますがこれは危険です小物を外せば外すほど、検査室に置き忘れる、さらには患者さんが自分でカバンにしまったのに「失くした!さっきお前に渡したはずだ!盗まれた!」などと言われるリスクが跳ね上がります(マジ)。「外さなくてもいいです」ではなく、最近は「外すと危ないです(失くすから)」というワードを使用しています。あんまり「危ない」という単語は使用したくないですが、こう言うと高確率で手を止めてくれます。

一方撮影する部位に重なっていなくても、②撮影装置との相互作用により危険が発生する可能性があるために外す必要があるものもあります。MRIは強力な磁場を用いて画像を撮像するものであり、撮影する部位がどこであろうが金属類の持ち込みは原則禁忌です。また先述の通り、電磁波により発熱の恐れがある物も多いです。

これらすべての対応を患者さんが把握する必要は全くありません。ぜひぜひ、対応した放射線技師がお願いしたこと「だけ」を、過不足なく行っていただければと切に願います。フォカッチャ。

37日目

26日目を参考にしてください。

「一番寝心地のいい撮影装置は骨密度」であると決着がついていますが、「また」というからにはいつも寝ているのでしょうか。状況が夜勤明けの始業前なのかお昼休みなのかは読み取れませんが、昼休みの短時間の仮眠は午後の仕事のパフォーマンスを上げると言われています。

おおよそ15分~20分間で、30分を超えない時間が最適な仮眠だそうです。

38日目

画像検査にはその撮影で診断を付ける目的のものの他に、フォローアップ(経過観察)で撮影されるものがあります。がんの再発率は早期治療されたもので3~5%、リンパ節転移のあるもので約30%であり(参考)、治療後も定期的な画像検査を受け続けることは多いです。その際には「前回画像と比較して、良くなっている/悪くなっている」「新たな病変が現れていないか」という比較がとても重要です。

レントゲンの撮影であれば「位置合わせの上手い・下手」というのは一般の方にもイメージがし易いと思いますが、実はCT検査やMRI検査でも撮影の上手い・下手というのはあります

例えば造影剤(臓器や血管を良く映すために血管に投与する薬)を用いたCT検査は、注入してから撮影までのタイミングで見え方が全く異なる画像になります。見たいものが血管なのか内臓なのか、また血行動態は若年成人と高齢者でも全く異なりますのでそれぞれに工夫した撮像が行われています。また子供や高齢者は通常通りに撮影ができないことが多く、(何かを犠牲にして)短時間で撮影を終えるための工夫が必要になったりします。

最近ではRISと呼ばれる、放射線検査用のカルテのようなもので過去の検査歴も参照することが出来、前回検査を誰が行ったかをすぐに調べることが可能です。新人の前で「うわ、これは酷いな。誰が撮ったんだ?」と言うのは、今回のネタのように「実は自分だった」という場合のみならず、例えばメチャメチャ偉い上司だったり、あるいは後輩であった場合であっても「この人は他人のダメ出しをする人だ」と思われてしまうので、批判は心の中に留めて置き「きっと撮影の時に、画像ではわからない困難があったんだろうな」くらいにしておく方が無難です。とは言え、過去の自分よりも成長した、と前向きに捉えるのも悪くないでしょう。

39日目

医療とは誰しも平等に受けられるべき生命インフラであり、我々放射線技師は患者をそのバックグラウンドから差別することは絶対にあってはなりません。たとえ不慮の事故で大怪我をした子どもであっても、ハロウィンでバカ騒ぎして酔っぱらって頭をぶつけたパリピであっても、我々は同じ志で医療に向き合わなければなりません。マジか。特にハロウィンの仮装のまま搬送されると、血を流しているメイクなのか本当に流血しているのか判断が付きにくいことになりそうです。ナース服のコスプレで患者役とかシュールすぎます。

特に春のお花見シーズン、大学生の新歓、ハロウィン、クリスマス~忘年会の時期は酔っ払いの急患が有意に増加します。酔っ払って殴り合いの喧嘩をして眼窩底骨折とかあるある過ぎます。イベントに浮かれてお酒を楽しむのは大いに結構ですが、他人に迷惑をかけたり羽目を外し過ぎてケガをするのはやめましょう。とは言え、コロナ禍でこういった搬送は減りましたね。特に大学生の搬送が減ったように思えます。

話が変わりますが、放射線技師の夜勤・当直ってだいたい1人で行うのですが、真夜中の病院で1人って良く考えたらそれなりに怖いですよね。私は心霊体験はまだ経験が無いですが、そういうのが苦手な人は大変かもしれません。

40日目

まさにこのサムネイル画像です。ちなみに動画はなぜかとても心が和むBGMになっています。親指とともにフラグがビンビン立ってます(2回目)。

ただ実際問題、MRI検査室の入り口のドアってやや狭くなってるのでストレッチャーはともかくベッドがそのまま入ってこれる幅が無いように思えるのですが、当院だけでしょうか?

今回はフラグ回が多かったですが、病院で勤務していると「フラグ」と言うものは多く感じます。その中でも圧倒的に多いのが「今日の夜勤は平和ですね」の類の呪文です。

この呪文は放射線技師に限らず看護師の中では常識の禁句であり、なんならどの職種でも似たようなものが存在するのかもしれません。「洗車しはじめると雨が降る」「高価なもの程よく壊れる」といったマーフィーの法則的なものは病院で働いているとマジで多発しますので、安易にフラグを立てないように注意して過ごしましょう。

============================

============================


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?