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【41-50日目】100ラジを100倍楽しむためのファンブック ~現役放射線技師が「100日後に吸着事故を起こす放射線技師」を解説する~

企画の主旨はこちら↓の「はじめに」をお読みください。

41日目

あるあるですね。恐らく主人公は夜勤(当直)で夕食を終えた後に歯磨きをしている際に、撮影に関する電話連絡が入ったのでしょう。放射線技師の夜間勤務で技師が2人以上いることも稀ですし、仮に複数人で勤務していても常に一緒に行動しているわけでもありません。また周囲に代わりに電話に出てくれるスタッフも居ません。

いや、ペっと吐き出すくらいしようよ!!

同様の現象に「トイレに入っているときほど電話が鳴る」というのもあります。マーフィーの法則的なアレですね。「いま電話よろしいですか?」「ウ●コ中ですがどうぞ!!」って言ってみたらどうなるのでしょうか。

42日目

かの有名なマルクスは「賃金は労働力の再生産費」といいました。労働によって得られた賃金を自由に使用し、休日には平時の勤務で疲弊した心身を休ませ、英気を養うことが重要です。

ジト目先輩はソロキャンプとは相変わらず好感が持てますし、2コマ目の後輩の過ごし方は私と変わりません。3コマ目の新人技師はリア充かよ!!と思ったら。。。

まさかの「童貞を〇すセーター」でした。明らかにハニートラップに引っかかっており、この後金銭的あるいは社会的に〇されるのが見え見えです。結局放射線技師というのは陰キャ童貞非リア充の集まりであるという、事実をまざまざと教えてくれるエピソードでした。っていうかこのセーター安くない!?

43日目

これは放射線技師、しかもある程度年齢層高めの放射線技師にしかわからないネタになります。

かつてはレントゲンも俗に言うフィルム写真と同様、人体を透過した放射線が銀塩フィルムに当たることで濃淡を生じさせ、体内の情報を画像化していました。銀塩フィルムですので、フィルム自体は光が当たらないように密閉された容器に格納され、暗室で現像液で処理することで写真を完成していました。

これに代わって登場したイメージングプレート(IP)と言うものを使用したレントゲンをComputed Radiography(CR)と呼びます。IPは「再利用可能で、かつ現像液での処理が不要な半デジタルフィルム」みたいなものだと思ってください。

主人公が持っている緑色の四角い物体の中にIPが入っており、それに向けて照射した患者さんの人体のX線画像を取得します。するとその中のIPに一時的に画像の濃淡が保存され(蛍光励起)、それを専用の読み取り装置を通すことでデジタル画像としてレントゲンを取得することが可能になりました。

(参考:フィルムマウントおじさん)

しかしこのイメージングプレート、専用の読み取り装置を通すときに結構な頻度で詰まるんです。特に水平ではなく上下差し込みタイプだとなおさら。こうなってしまった場合、最悪の場合はせっかく撮影した画像データが消失してしまうことがあります。主人公は(1~2分で画像が確認できるにも関わらず)撮影後すぐに患者さんを帰してしまいました。もし撮影した画像データが消えてしまっていたら。もう一度撮に直す必要があっても、患者さんを呼び戻すために見つけられるかどうか。IPを未だ使用している施設では、必ず画像を全て確認してから患者さんを帰すように指導しましょう。そんなに時間がかかるものでもないのですし。

44日目

同僚に職場以外で出会ったしまったとき、別にその人のことを嫌いなわけでも無いのですが、何となく気づかれたくないという気持ち、わかります。職場の出入り口付近であれば挨拶を交わしてそのまま出勤、でいいのですが今回のように駅でエンカウントしてしまうと結構な距離と時間をともに過ごさなければなりませんよね。そんな時は限りなく気配を消し空気のような存在になる。わかります。

ちなみにこの「きさらぎ駅」というもの、関東のどこかの有名な駅なのかなーと思い検索してみたら、ネット上の怖い話で登場する架空の駅なんですね。

実はこの後輩も、もしくは主人公も、既に。。。。なんてことは。

45日目

レントゲン室、冬の風物詩の1つですね。なんなら「これ、いつから貼ってるの!?もう全然あったかくないじゃん!?」みたいなものもあります。

上記リンクでは「一般撮影での再撮影とは」という内容で、レントゲン画像に異物が映り込んだ場合の提示とともに解説が為されています。

細かい揚げ足を取れば、今回の新人技師は「金具やボタンのついた服」と尋ねていますので、「ホッカイロとは言ってないじゃないか(怒)」というクソリp....まっとうなご意見であります。特にこれがレントゲンではなくMRIであったら、人体に危険を及ぼすだけではなくカイロ内の鉄成分が飛散し装置の隙間に入り込んでしまうことがあり、数週間は使用することが出来なくなってしまう甚大な被害になります。

私はある程度寒くなってきたら「湿布やホッカイロ」という単語も使用するようにしていますが、まだ秋も始まっていないような時期に貼ってあるホッカイロに遭遇するとオオフッ…ってなります。ただし、貼るカイロは一度剥がしてしまうと貼り直しが難しくなりますので、外さなくでも良い撮影部位の場合は剥がさなくても構いません。そのあたりも、我々放射線技師は具体的に説明し、患者さんは必要最低限なもの「だけ」を外していただければ幸いです。(参考:36日目

46日目

私は電車通勤しませんし、都会でもないところに住んでいますのでこういった経験は少ないのですが、なかなか示唆に富むネタのようです。

・次の駅ですぐ降りるから座らない
・高齢者が乗ってくるかもしれないので空けておく

などと言った心理が働いでいるようです。

リュックが「MRI専用」になっていますが、さすがにチャックとか留め具が吸着のリスクがあると思います。

47日目・48日目

これは続きで行きましょう。

47日目には久しぶりに「CD作成おじさん」が登場しました(参考:2日目)。皆が忙しい時や、難しい検査が来た時にスっと姿を消す人、高齢技師に限らずけっこう居ます。

ちなみに放射線技師としての職業病は、足首の捻挫よりも圧倒的に腰痛です。看護師さんでも腰痛持ちの方が多いと聞きますが、放射線技師も病棟ポータブルレントゲンを長らく続けると腰痛が発症しがちです。

48日目では上司(たぶん技師)が「MRIを撮ろうか?」と聞いてきます。この人、14日目に登場した「研究手伝ってくれない?」の上司です。MRIは放射線を使用しないので、臨床に使用する前の新たな撮影方法の検討に、健常者のボランティアで色々と試してみることは比較的に良くあることです。主人公はこの時と15日目の経験から、ここで撮られるとまた実験台として長時間撮影されて拘束される(そしてその分の時間外手当は当然貰えない)ことを瞬時に察知し、「大丈夫っス」と断っています。

研究実験を積極的に行い撮像のレベルを高める努力は大いに結構なのですが、正当な医療手続きを踏まない撮影でうっかり病気が見つかってしまうと、いろいろと面倒なことになりますので技師同士で撮影しあうのも良し悪しかなぁ、と個人的には思っていたりします。

ちなみになのですが、48日目の1コマ目にも「#ババババンビ」が隠れていますが、34日目で気づいてもらえず悲しかったのでしょうか。

49日目

これはこの後に続く66日目への布石ですので、特に解説は無しにいたします。

4コマ目の「バリ3共和国」は、でんぱ組.incの楽曲です。作者さんの音楽の趣向が何となくわかってきましたね。

50日目

物語の折り返し地点で、壮大なフラグでしょうか。

もちろんMRI室内は常に(検査中だけでなく、常に!)強力な磁場が発生していますので、時計のような金属を持ち込むと装置に吸い寄せられ危険が及びます。少し専門的な話になるのですが、MRIの磁場は検査室のドアを境に一定の強度なのではなく、装置中心からある距離を境に急激に強くなります(5ガウスライン)。ただし時計のような精密機器の場合、仮に少し離れており吸着こそしなくても、時計が故障し使用できなくなるリスクがあります。

そんなあなたに朗報!!

OMEGAの「シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター」という機種は強い耐磁性を持ち、MRI専門技師御用達腕時計と言われております。

価格:86万円(税別)。たっけぇ。


解説記事もやっと物語の折り返し地点へと到達いたしました。ここからどのような展開で「吸着事故」に発展していくのか、まだまだ見逃せませんね!

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