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ぺルラの日記#6 【シリア】Booty Call

前回までの日記はこちらから

6月8日(月曜日)

シリア『Hey Perla! Are you back in London? How are you? What are you doing? Its only Monday but I am already tired, so I am going to stay in and watch some movie tonight, would you like to join me? I have got a very good bottle of red :) 』

元気?ロンドンに戻って来ているの?どうしている?月曜って憂鬱だよね、家で映画でも観ようと思うんだけど来ない?すごくいい赤ワインがあるんだ:)

これは明らかにBooty Call

*Booty Call  真剣な交際を目的としたデートや食事のお誘いではなく、性行為を目的としてかける電話(call)の事。 因みにbootyとは「お尻」を意味するスラングで、不加算名詞として使われると「sex(性行為としての)」を意味する。


普段なら行かないヤツ。


昼間のデートに誘ったり、ご飯やドリンクに誘うのでは無く、家に映画と大したこと無いワインで誘うのは失礼過ぎる。

(世の日本人の女性の皆様、外国人男性はこれ結構やりますので気を付けてください。日本人男性もかな?家飲み?絶対行ってはダメですよ、気持ちがある相手なら尚更です!)


仕事もしていないので毎日暇、トルコから連絡が無くイライラしていた私は、魔が差したのか、トルコへの当てつけか、この誘いに間髪無く乗ってしまった。。。

シリアの家は今私が宿泊している友人宅から10分弱、すごく近かった。


パパっとお化粧をしてお気に入りのワンピースを着て、ハイヒールを履いてブラックキャブに飛び乗った。


当時はミニキャブはあったけれど、まだUberは無かったので近距離の場合は流しのタクシーを捕まえ長距離の時はミニキャブを呼んでいた。

言われた住所は薔薇で有名なリージェンツパークの北側の高級住宅地、公園真横の公園通りで築20-30年くらいの比較的(ロンドンでは)新しめの高級マンションが立ち並んでいた。

マンションに着くとシリアがラフなTシャツを短パン姿で降りてきた、長身でかなり鍛え抜かれた体。圧倒的な存在感はカジュアルな格好でも遠目で確認することが出来る、全身からみなぎる自信とエネルギー。日本ではこんな人に会った事がない。


『Hey, welcome! 』

っと言って頬にキスをされた。


エレベーター(イギリスではリフトと言います)に乗り、中層階で降り広い廊下を歩き角のお部屋まで辿り着いた。


一瞬、戸惑った。


ためらいもせずここまで勢いできたものの本当にこのままこの人の部屋に入ってもいいのだろうか。。。一度レストランで会っただけの人の部屋に。


でも、興味はすごくあった、シリアの前首相の息子の部屋はどんなもんじゃろと。。


気が付くともう部屋に入っていた、だだっ広い部屋にあまり最小限のシンプルな家具しかおいていない、生活感の無い部屋。部屋の大きさの割には質素な家具たちで、リビングはすごく広かったけれど、間取りは2LDKくらいだったと思う。


早速ソファーに座り、部屋の中を観察していると、約束通りフランスのボルドー赤ワインが出てきた。


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当時セックス&ザ シティーをこよなく観ていた若かりし私は外で飲む時はコスモポリタンか当時流行っていたモヒート、もしくはシャンパンのみしか飲んでいなかったので、特に赤ワインには興味が無かった。

そして一杯目も半分に差し掛かって来た頃にピザが届き、ピザを食べながら彼の身の上の話になった。


『シリアについて知っている事ある?僕の父はかれこれ12度暗殺されそうになったんだ。。』


戦後の日本はとにかく平和、政治も経済も安定してクーデターや暗殺など明るみに出てくることはない。戦争もなければ紛争もない、国民の人権は認められており、平等に義務教育を受けられる。

恥ずかしながら彼に出会うまでシリアという国名すら聞いたことが無かった(当時は2009年、2011年のシリア紛争の2年前)


『暗殺?お父様は何してらしたの?』


『僕の父はシリアの前首相だったんだけどクリスチャンなんだ、シリアは穏健派だけどイスラム教の国なんだけど一定のキリスト教徒いるんだ、だからイスラム系の過激派で政治的に対立する人たちからよく狙われるんだ。僕の家はシリアでも有名だからもちろん学校に行く時も安全じゃないしボディガード10人くらいと登校していたし、銃も護身用に持たされていたよ。君の産まれた日本が平和なだけで、世界の半数以上の国で内戦や紛争が起こっているんだから、こんなの日常茶飯事だよ。。』


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私は電車に乗って学校の帰りに友達とマックに寄ったり渋谷の109に買い物に行ったり夜まで遊んで帰ったりしてお父さんに怒られていた事を思い出した。


『そっか。。だよね』


『シリアは綺麗な国だから観光地もいっぱいあって観光客も結構いるんだけど政治は腐敗しているよ。もう政治に父も僕も関わるつもりはないけど、今国に帰ったら間違いなく監禁・尋問されるからもう国には帰れないし帰らないよ。』


『なんで尋問されたりするの?何か悪い事でもしてるの?』


『前の首相の息子が海外で勉強して帰ってきたという事は、何か国内でしでかすつもりじゃないかという事と、僕は今の首相の対立している兄弟の息子仲良しでロンドンとかパリで遊ぶんだけど、僕が帰ったら間違いなく尋問はされるよ、殺されることはないとは思うけど。』


『そうなんだ、、、気をつけなきゃだね。。』


住む世界が違い過ぎる、、、全くもって同意出来ないし、私は学生時代の話をしたらただ微笑んで『恵まれているんだよ』っと言ってくれるだけだった。

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戦後75年、日本で戦争を知る人は年々減ってきている、日本人が平和に過ごしている一方で今も世界は目まぐるしく動いている、草食男子なんてのが誕生している日本とは状況が違い過ぎる。

明日もしかしたら尋問されて暗殺されるかもしれない人に出会ったのは初めてで、そんな彼だからこそのエネルギーとオーラなんだなっと改めて納得。


話し込む事2—3時間、そして彼の力強さと男らしさに惹かれていき、心許してきている自分がいた。


そして気が付けば心だけではなく全てを許して身をゆだねていた。


彼とこの先の人生で時間を共にすることは無いと思う、ただ一瞬でもこんな激しいエネルギーを持つ男性と出会えたこと、こんな貴重な話を私にしてくれて私に気づきをくれた事に感謝をしたい。

そして言うまでも無く、彼のパワーは凄まじく私では受け止め切れなかった。

中東の男性は強いとは聞いていたけれど、ここまでとは思わなかった。


泊まっていくように言われたけれど、そんな気持ちにもなれず、またタクシーを呼んで滞在している友人宅に戻った。


彼のアパートとは打って変わって小さいベッドに横たわって、少し彼が言った事を考えてみた。

今日は少し考えさせられる1日になった。。


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