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毎月リレー投稿 第6回「生理に対するタブーについて」

NPO法人お客様がいらっしゃいました.のメンバーがそれぞれ個人的に興味関心のある生理と関わるテーマを設定し、調べ、noteにアップしていくリレー投稿。
 第6回は、広報局の山路が担当します!
今回のテーマは「生理に対するタブーについて」です。

*専門家の情報や、書籍などを参考にして、まとめていますが、メンバー自身は専門家ではないので、あくまでも独自調査によるまとめになります。

テーマを選んだ理由

 生理について、詳しく知らない男性が多いと気づいたことがきっかけです。この団体に入ったきっかけでもあるのですが、私は昔バイト先の男性社員から「生理なんかで休むな!」と怒られたことがあります。私自身は生理痛がかなり重く、一人暮らしの家で痛みで倒れていることなんかもしばしば…。こんなに辛いのにわかってもらえないなんて!!という感情よりも先に、なぜ世の中の半分の人間(女性)にある生理のことを男性は知らないんだろうと疑問に思いました。
考えてみると、男性に生理について触れてほしくないという女性は多くいます。さらに同性であれ嫌だという人もいます。
生理について触れてほしくない、触れづらいといったこの「タブー」は何が原因で起きているのだろう?そう考えて今回の執筆に至りました。

「タブー」の起源は生理から?

そもそも、「タブー」という言葉の語源を知っていますか?実はポリネシア語で月経を意味する「tabu」が起源です。月経への禁忌というのは相当昔からあることを表しています。
ではなぜ月経へのタブーというものが定着したのでしょうか?そこには様々な要因があるとされています。まず1つ目として挙げられるのが、月経自体の仕組みが解明されておらず、恐怖感があったからとされています。仕組みが分からない中で、なぜか大量に下半身から出血が定期的に起きる…。たしかに何も知らない状態だと怖いかもしれません。実際に私自身も。学校で生理について習う前に初経がきたので、「怖い」と感じたのを覚えています。加えて、血というのは死を連想するものです。それが女性にのみ起きるというのは男性からしたらとても恐ろしいものだったのかもしれません。このような恐怖感から月経への禁忌が生まれたのではないかと考えられています。
2つ目として、女性を社会から排除するのに利用されたという説です。平安時代から、天皇や宮廷を清浄化するための対比として女性のからだが「穢れ」を持つものとして扱われ、女性抑圧のシステムの理由に使われ、次第に中央から地方へと伝播したのではないかと考えられています。

日本での生理

では、今よりも月経がタブー視されていた時代、月経はどのように扱われていたのでしょうか?江戸時代の史料には月経小屋についての記載があります。月経小屋とは女性が生理期間中に隔離されていた小屋のことを指します。また、地域により忌み小屋、不浄小屋、よごれやなど様々な呼称が存在します。明治時代の初めには月経禁忌を廃止する法律が出来ましたが、月経小屋の文化が根強く残る地域も多く、明治の末期まで使用されていた地域もあったとされています。女性を月経小屋に置くことの意味としては、穢れている女性を隔離することにあります。地域により慣習は様々ですが、一緒に食事をしない、同じ湯につからないなど小屋を利用することで徹底的に穢れを避けていました。現代では、女性が穢れを持っているというのは医学的にありえません。しかし、このような歴史から女性の中で、生理は隠すべきもの・タブーなものという感覚は、薄まりつつはあっても、根強く残っているものと考えられます。

世界の生理

日本での事例を見てきましたが、世界ではどうでしょうか?実はキリスト教もイスラム教も仏教も月経を禁忌とみなしています。日本だけでなく世界中で月経禁忌は存在するとされています。中でも国によっては現在でも根強く月経禁忌が残っています。特徴的な国について調べてみました。
 そもそも私が世界の生理について調べてみたいと思ったきっかけはインド映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」にあります。この映画では主人公ラクシュミが不衛生な布で経血処理をする妻を見て、安価で清潔なナプキンを作ろうと奮闘します。映画の中で、妻は生理が来ると、部屋の外で寝ていました。実際にインドでは生理中の女性はどう過ごしているのでしょうか?

・インド
 インドでは広くヒンドゥー教が信仰されていますが、ヒンドゥー教ではからだから生み出される排泄物や老廃物は不浄なものとされ、沐浴により自らを清めています。また、ヒンドゥー教において不浄は移るものとされているため、女性は月経期間中は隔離をし、終えると沐浴をして新しい衣服に着替えます。地域により小屋で隔離する慣習があるところもあり、また家族の食べる食事に触れることや冠婚葬祭などの宗教行事への参加が禁じられることもあります。しかし、近年では少しずつ解消されており、宗教行事への参加へはまだ禁忌を感じる人が多いものの、核家族化が進み世帯内で家事を担う女性数が減っている地域では、炊事は禁忌とみなさない人も増えてきています。

・ネパール
 ネパールの西部では「チャウパディ」という月経中の女性を隔離する石や泥で作った小屋が慣習としてあります。隔離の期間に、女性が脱水症状で無くなったり、野生動物に襲われたり、性暴力に遭うなどの被害が後を絶たず2005年に法律で禁止されました。しかし、根付いた慣習はすぐに消えるものではありません。近年でも隔離中の寒さに耐えられず、火をおこして煙が充満した小屋の中で亡くなったり、毒蛇に噛まれて亡くなるなど死亡例があります。女性を隔離した人に刑罰を課す法律も可決されており、2019年には初の逮捕者も出ています。

感想

私自身は生理へのタブーは、過去の慣習から来ていて、今の私からは理解できないものなのではないかと考えていました。しかし、調べてみるとよくわからない現象への恐怖感や女性自身がタブーを感じる背景を知ると、タブーが生まれることが全く理解できないわけではないなと感じました。実際に 生理に関して未だに自分自身も男性に言いにくさをかんじていますし、生理用品を買う時レジが男の人だと恥ずかしいなんてこともあります。
 生理へのタブーは長い間あったものであるため今すぐになくそうとはいかないモノだと思います。しかし、タブーの背景を知ることで少しずつでもタブーを感じない人が増えるといいなと思います。

参考文献

・田中ひかる「生理用品の社会史」角川ソフィア文庫、2019年。
・杉田映理・新本万里子「月経の人類学 女子生徒の「生理」と開発支援」世界思想社、2022年。
・生理中の女性が「隔離小屋」で死亡し親族逮捕 - AFPBB News 2019年12月7日(https://www.afpbb.com/articles/-/3258498)