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#5 ブランチはでっかいアジフライ~ Dorm`s cookbook!?

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 朝時計を見ると、すでに10時半をすぎたところだった。タオコはリビングのソファで寝てしまったようだ。休日前はいつもこうなのである。

 「ふぁ…よく寝た」

 上半身を起こし軽く伸びをする。カーテンを開けたままだったので少しの明るさと小鳥の飛んでいる姿がよく見える。西側なのでまだ太陽は射していない。自分の着ているたらこ柄のパーカーは少し油の匂いがする。

 タオコが目をやると台所には燃え尽きた後。彼女の性格上、調理と片づけは同時に行うというのがモットーではあるのでさほど地獄絵図にはなっていないが、確かに料理後の寝落ち感が醸し出しているのは、おそらく鍋の油の匂いと料理用トレイに置かれたままの手のひら以上にある巨大なかじりかけのアジフライのせいだろう。それをゆっくりと見つめたタオコは、達成感と誇らしげな気持ちになる。そうだ昨日は丸々とした鰺をフライにしたんだったっけ…

 起き上がり、使い済みの揚げ油を処理しガス台を丁寧に拭く。遅めのブランチの支度をしながら(もちろんアジフライだけれども)ラジオをかけると、聞き覚えのある懐かしい曲が流れていた。

 あらかじめ作っておいた常備菜と味噌汁を温め直し、糠漬けを切り、アジフライをさらに移す。冷凍庫のご飯をチンして準備完了。タオコはブランチをゆっくりと味わう。

 「アジフライでかっ」

 ひとりごちて、ふふっと笑う。タオコは半身にはウスターソース、もう半身には醤油をかけて食べた。あげてから数時間が経っているためもうとっくに冷めてはいるが衣はまだサクサクとしており、身はしっとりふわっとしている。アジフライを口に入れ白いご飯をほおばる。味噌汁は大根の葉っぱ。味噌は少し甘めの鹿児島の麦みそ。たまに挟むお漬物はなすびときゅうりの糠漬け。常備菜はピーマンとジャコのごま油炒め。なんて完璧なブランチなんだろう、と、タオコはゆっくりと舌つづみを打っていた。着ているたらこ柄のパーカーは少し油臭いし、髪の毛は起き抜けのままぼさぼさだった。

時計を見るともう正午を告げようとしていた。



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