The catcher in the rye (ライ麦畑でつかまえて) 講評(1/3)
心乱れる瞬間は多く、求める平凡とは程遠い。そう感じるときに小説が生まれ、詩ができるのならば、それは婉曲に嘆きの形をとる。The catcher in the rye (1951, J・D・サリンジャー) は、作者の歩んできた人生を色濃く投影しているという点において、その一つである。
ところで、この作品について講評する前に断っておくが、今回は野崎孝訳(1984, 白水uブックス)について話す。のちに出版された村上春樹訳は未読であるから、そこは了解していただきたい。
作品