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恐怖のはなし

こんにちは。

台風も去り、本格的な夏の陽気を感じる今日、いかがお過ごしでしょうか。
ぼくは明日からの盆休みに向けて意気揚々と職務という名のブログ書きをしております。

にしても最近は本当に暑いですね。
いつも秋くらいの気候であって欲しいのですが、そうもいかず…

ついつい涼むことばかり考えてしまう自分がいます。
身体が自然と納涼を求めているよう。

それでもって納涼と云えば怪談ですよね。
怖い話でもって色々と冷やしましょう。

きっとみなさんはこれを読んでいる今も汗だくと存じますので、怪談を読んで早急に涼んでください。
あなたの汗臭さ、ぼくにまで伝わってきていますよ。

そんなわけでぼくが怖い話をしますので。

はい。

読んでください。

どうぞ。


『真夏の台風』

これは、私が実際に体験した話です。
今思えばあの人は台風のように全てを巻き込み、そして静かに去って行きました。

それは、ある夏の日のことでした。
その日は台風が近づいてきていることもあり、社内では天気の話題で持ちきりでした。

「こりゃ、早く帰らないと電車止まるかもしれませんなぁ」
そう漏らす同僚のAさん。

なにやら今日は大切な予定があるようで、朝からとてもソワソワしていました。

朝のうちは晴れ間も見えていたのですが、昼を過ぎてからは風も吹き始め、天気は悪くなる一方でした。

「近づいてきてますなぁ、とうとう小雨まで降ってきやがりましたぞ…勘弁してくれよ。」
そんな風にAさんは度々不安を吐露していました。

ただ定時まではまだ1時間以上あります。
会社内の世間話とキーボードのタイプ音を遮るように、窓外の風の音はどんどん強くなっていきました。

すると…

ザアアアアアアアア!

窓に雨粒が当たるほどの激しい雨が降り始めたのです。

「とうとう降り出しましたね…」
そうAさんに私は話しかけましたが、Aさんには全く聞こえていないようでした。

「…んなよ…ったく………」
となにやらブツブツと呟き、携帯電話を睨みつけるAさんの姿に、私は少し恐怖を覚えました。

なにかおかしい…
私は少し彼が心配になりましたが、Aさんの異様な雰囲気にたじろぎ、話しかけることができませんでした。

それからも雨は弱まるどころか、強くなる一方です。
風もより強く大きな音を立て、次第に空も暗くなっていきました。

そして終業時間。
皆が電車が止まる前に帰ろうと一斉に帰り支度を始めます。

私はまだ仕事があったので定時には帰れず、そのまま会社に残って仕事を続けることにしました。

すると…

「うわああああああ!!!くそおおおおおおお!!!」
エレベーターホールからAさんの絶叫が聞こえました。

私たちが慌てて廊下に駆け出すと、そこには発狂するAさんの姿が。

「どうしたんですか!?」
Aさんは手が付けられない状態になっていて、私はなんとかAさんを落ち着かせようと彼の身体にしがみ付きましたが、一向に収まる気配はありません。

「もう終わりだあああ!くそ…うおおおおおおお!!!」
さらに暴れ発狂するAさん。

すると上司がAさんの前に立ち、
「やめなさい!大人が何をそんなに泣きわめくことがある!しっかりしなさい!」

そして私に押さえつけられたAさんの側頭部に思い切り回し蹴りを食らわせたのです。

「ぎゃー!」
会心の一撃でした。

そして打ち所が悪く、Aさんはそのまま帰らぬ人となってしまいました。

亡くなったAさんの手に握られた携帯電話には、止まってしまった電車の運行案内と、乃木坂46のライブ予約の確認メールを見ていた形跡がありました。

台風が吹き荒ぶ中でもライブに行きたがっていた彼にとって、それは無念の死だったと思います。

それからというもの、台風が来るたびにうちの会社ではAさんの声が聞こえるようになりました。
きっと成仏しきれなかったAさんの情念が台風の風に乗ってなんかそういう感じになっているのだと思います。

そして今年も台風がやってきます。
きっとAさんのあの声が今年も聞こえるはずです。

「風が強くなってきたなぁ」
そう漏らし、私たちは社員一同、今年も風の吹き荒ぶ窓の外を見つめます。

ビュウウウウウ…

ビュウウウウウ…

タイガアア…

ビュウウウウウ…

ファイヤアア…

サイバアア…

ビュウウウウウ…

ダイバアアア…

ファイバアアア…

ジャアジャアアアア…

「乃木坂のライブに行けてるといいな、Aさん。そういえば誰が推しメンだったんだろ…」
今ではそんなことも少し気になったり。

ビュウウウウウ…

ビュウウウウウ……

オシメエエエエン……

ビュウウウウウ………

ソレハナアア……


お前だああああ!!!!


「嘘じゃん。おおこわ…」

そういえば飲酒運転も恐い。


画像はレストランです。

おわり

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