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映画らくだい魔女を見る/見たときのメモ

まえがき

この映画は60分(冒頭企業ロゴやエンディングを除くと賞味55分)の中におおよそ6つの章構成を収めた、本気で作られたお子様ランチのような映画である。とはいえ奇跡のダイジェスト映画であるFate / Unlimited Blade Worksのように、必要な要素までゴリゴリに削らざるを得なかったような作品かと思いきやそんなことはない。原作をほとんど削らずにわかりにくい部分を適宜補足し、整理したディレクターズカット版とも言える出来栄えである。
(原作が一般文芸の短編程度の文章量の作品なので、120分尺はもとより作れないという事情もある)

本稿のような場末のNoteを覗くようなオタクはたぶん一回見れば良いやで終わると思うので、以下ではアニメ一周だけだと絶対わからん要素を適当に拾っておく。

作品のWebサイトはこちら
https://anime-rakumajo.com/

章ごとのメモ

  1. アバンタイトル
    アバンタイトルは主人公たちの親世代と本作のヴィラン・メガイラとの戦いの決着シーンから始まる。
    原作には親世代の若い時の顔立ちや衣装設定がないため、映画のために原作側からデザインを起こしている。ヴィランであるメガイラにも原作挿絵がないため0から描き起こされたようだ。原作9巻に主人公がメガイラの衣装とヘアスタイルになるというイラストがあり、そこから逆算して制作されている。
    このあたりの話はスタッフトークショーで披露されたものであり、聞き漏らしとか間違いは当然ある。

  2. 人物紹介
     ここから10分ほどで背景説明と主要人物の紹介がなされる。
     まず主人公が元気に出てきていきなり魔法に失敗する。実家のような安心感。これは単純に下手くそなのではなく魔力が膨大なため。結果できあがったなんかめちゃくちゃデカい石も一応伏線ということになる。属性としては、「光と闇が両方備わり、最強に見える」タイプのキャラである。
    アニメではほぼ語られないが彼女は忌み子であり、母親の後ろ盾がなければ表舞台から即座に排除されてしまうような背景の人物でもあります。そんななか唯一の後ろ盾である母親に「お前なんかうちの子じゃない」みたいなことを言われれば、自分の存在すら危うくなることを意味するので相当凹むわけですね。母親に叱られるシーンは激烈に重いシーンなんだよなアレ。

    その後タイトルバックの直前に登場する白猫を抱いた緑髪の男の子は、後の巻から登場するキャラクターで、今回はファンサービスのためだけにアニメ用の設定が発生したキャラクターである。出番はこれでおわりである。ちなみに一人称はおいら、失われた古代王国の王子でさすらいの怪盗ということになっている。設定が過剰すぎない?????だがそれもいいね…。

    本筋とは関係ないが、生徒の靴や靴下のデザインは全員バラバラでアニメスタッフのアドリブである。

     タイトルバックのあとは、とにかく時間がないので主人公・フウカを含む3人の主要人物の性格、関係性、矢印の方向をものすごく親切かつ高速にインストールされる。ひねりのないまっすぐな設定なので、日頃からアニメに親しんでいるオタクにはこのスピードでも初見で問題ない。
     とにかくカリンちゃんがかわいいですね。
     ストレートな感情表現を交わし続けるにも関わらずお互いの恋愛感情にあまり無頓着なので、こいつら全員クソ鈍感か(穏当な表現)とすら感じるだろう。本作品は2008年スタートの作品なのでそういう感じでもいいのである(いいかは知らんが…)
     それはそれとしてカリンちゃんがかわいいのでずっと見てしまう。マキマさん助けて!好きになっちゃう!!!

     このパートでの主人公・フウカの発言は後々の展開に効いてくるものが多く、覚えておくと良い。原作ではそこまでわかりやすいことになっていないため、アニメ化によって最もいい感じに手が入った部分だと思う。

  3. 魔界へ
     
    ここは流れに任せて見れば良い。身体を失っているメガイラが強い魔力を持つフウカの身体を乗っ取ろうとしている。ということが理解できていればOK。アバンタイトルのように殺意MAXだと(死んでしまって)まずいので、わざわざ「わくわく メガイラ遊園地」を建造して精神攻撃を中心に仕掛けてくる。紫をメインカラーにしたネオンサインがまぶしい。これらは固有結界や領域展開のゆるいやつくらいに思えば良い。

     前後してイケメン枠のキースという少年が登場する。声は小野賢章だが、額に稲妻の傷はない。彼とは初対面ではなく一度会ったことがある設定になっている。実はこの作品は原作2巻目の映画化なので前日譚があり、初対面はそちらで済ませているため。まあこういうことはアニメ映画ではよくあることなので気にしすぎても良くない(「魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」など)
     このイケメンはFF4で言えばカインとかゴルベーザみたいなポジなので完全な善玉ではない。この映画の範囲内では暗黒面は出てこないので、JRPG序盤にLv30くらいで一時加入してくれるお助けキャラだと思えば良い。

    城のシーンに戻ったところで出てくるメイドさんはモブではなく準レギュラーの登場人物である。

  4. 遊園地編
     
    基本的には流れに任せて見ておけば問題ないものの、適宜原作理解度チェックが発生する。なんか突然色々出てきましたけど…みたいな気持ちにならないように以下の3点を押さえておくと良い。
    ・主人公がメインで使える魔法は風属性でこれは母親由来。父親は火属性。火属性なので服が赤い。(本当か…?)
    ・光の魔女とは傑出した人格に与えられる称号であり、必ずしも操る属性とは一致しない。(多分)
    ・父親は死んだことになっているが、霊体(蝶の姿)で登場する。蝶は生命力の象徴みたいな概念が後の巻で出てくるが、この話では特に関係ない(生命力を飛ばしていると考えると死んでないんだろうなこの親父…)

    父親役の福山潤の演技の切り替えがけっこう面白いので、集中して聴くと良い。

  5. 決戦
    アバンタイトルでの構図(立ち位置)を覚えていたり、人物紹介での発言を覚えていると感心するシーンがたくさん出てくるパート。これまでの展開をしっかり受けた堅実な台詞回し(レスバ)でこれは勝負あったなという納得感を出しながらビジュアルではめちゃくちゃ強引に締める。わずか数十分前から始まった物語でこれをやれるのはかなりすごい。
    世界を滅ぼさんとする闇の魔女が小学生にレスバでも魔力でも負けるなという感じではあるがそこは飲み込め。がんばえ〜メガイラ〜。日笠陽子のドス声がイケているので敗北もおおめに見てあげよう。

    この作品ではフィルムスコアリング(絵に合わせて作曲をやること)もやっていて、クライマックスでは音ハメがばっちり効いている。Spotifyなど配信プラットフォームを契約している人は、サントラが聞けるので「Tr.33 闇には負けないっ!」を聞いておくと、なるほどなぁ…くらいには思う。この曲だけ3分弱の尺があるのはカットの切り替えと転調のタイミングを合わせているから。
    さらにエフェクトもかなり細かく作り分けがされていて、よく見ると金と銀のエフェクトが混ざっていたりする。金色は父親側、銀色は母親側のパワーである。強そう。
    顔への影の入れ方もイマドキっぽくない80〜90年代アニメみたいな入れ方で面白く、BL影まではいかないけどかなり濃い影が入る。

  6. 脱出〜エンディングへ
    ここは細かく記述するところはないが、ラストシーン直前のリリカ(CV佐倉綾音)のセリフが原作の「ブーーーース」から「バーーーーカ」に改変されている。令和時代のコンプライアンスを感じてほしい。

    そしてエンドロール。エンドロールにはお前たちが見たかったシーンが全て入っている。全てです。劇場を出たら即座にEDポストカードセットを買え(21枚 2500円)。おれは買いました。豪華版パンフレットも買え(2000円)。推しのアクキーも買うと良い(800円)。アクスタもあるぞ(1400円)いまならマルイ大宮でPOPUP SHOP開催中だから借金してでも行くように。

    さて、エンドロールにおいて作画や演出に入っているスタッフの名前を見ると、「戦争でもおっ始めようってのか」という幻聴すら聞こえてくるようである。エンドロールの文字列に詳しい兄貴なら、本気で作られたお子様ランチという比喩に納得してもらえるだろう。

そんなところでこの記事は終わり。上映終了のところも増えて来たけど、TJOY系の映画館は5/4まで鑑賞キャンペーンをやっている都合で連休前半までは上映しているはず。60分でサクッと見られていい気分になる作品なので行くと良いと思います。

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