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キリンのひまわりのこと、考えたこと、王子動物園について思うこと


王子動物園が開催された2020年2月のサポーターズディで、私はキリン・クマ・ゾウを案内して頂くグループになりました。

ヒメイチに直接手から給餌させて頂き、少しイカつそうな(ごめんなさい)でも目は優しそうな飼育員さんが、キリンの説明をしてくださいました。

一通りの説明の後、横にいた私に「赤ちゃんが産まれるかも」と教えてくださいました。

「えっ、いつですか?キリンの妊娠期間は?そんなに長いんですか?」という子供みたいな質問に丁寧に答えて下さいました。

それからは誕生が楽しみで仕方有りませんでした。無事誕生したキリンは女の子。

「ひまわり」という可愛い名前になり、私はコロナが落ち着いた頃、張り切って会いに行きました。

幼いひまわりは放飼場を駆け出すのですが、数歩で柵が目前に迫り「困ったなぁ」という顔をして立ち止まる、それを繰り返していました。

その困った顔があどけなくて可愛い反面、もっと走らせてあげたいなぁと不憫な気持ちにもなりました。

その後王子公園の再開発の話などがチラホラ聞こえてきたので「ゾウ舎の改修もだけど、キリンも京都市動物園のように他の動物と混合展示にしてひまわりを走らせて欲しいな」と期待を持ちました。しかし、素案として発表されたものは更に王子動物園を狭くするという案。
「えっ!?」となった私はそれからひたすら王子動物園やその他の動物園、そして動物園動物について調べることが趣味?になってしまいました。

今回ひまわりが岩手に転出すると知って一番に抱いた懸念は「遠いやん、移動大丈夫?」「寒い所やん、ひまわりの身体は大丈夫?」「トラの事故のあった那須サファリの会社やん、大丈夫なん?」でした。

しかし、キリンの血統管理は多摩動物園が担っているとメディアでも紹介されていましたし、

https://topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=9776

専門家がGOを出したのであれば、もう後は無事を願う以外、一ファンに出来ることはありません。

「なんか心配なんでやめてくださーい」なんて電話しても「はぁ!?」ですしね。


先月会いにいったひまわりはまだマリンにべったりで「まだまだ子供やなぁ。どうか無事で、遠いからすぐには行けないけどSNSで元気にしてる姿をチェックするからね。」とお別れをしました。

ひまわりが搬出される日も、やきもきせずに無事の到着の知らせを待つのみと決めました。夕方王子動物園から出発の様子が伝えられたのが18:52分。

そして翌日昼に「19:30に死亡が確認された」と報告がありました。王子も夕方tweetをしたときはこんなことになるなど思っていなかったことでしょう。先方から報告が入ったときの驚き哀しみは如何ほどのものだったでしょう。


自分も死亡の報告を見て、嫌な予感が当たってしまったと取り乱してしまいました。

その時のtweetはごめんなさいと思いますが、敢えて消さずに残しておきます。


その後、岩手サファリパークから死因の発表がありました。それらを受けてもやはりファンや利用者は納得をしていないように見うけます。私もスッキリはしていません。


具体的には、

1.なぜ低床トラックで木製輸送箱を用いなかったのかという疑問が一番多いでしょう。

顔を出しての移動はかえってキリンが怯え暴れる危険が伴うため、暗くして落ち着かせるというのは理解できます。しかし、あの鉄製の箱が適正なものであったという見解について、適正と説明するためには、長距離輸送における木製と鉄製のリスクとベネフィットを説明した上で、鉄製を適正だと判断したという根拠がないと、納得するのは難しいです。


2.岩手という遠方を選んだ理由。

先のキリン血統コントロールによって岩手が最善と判断されたのか、それ以外の理由があったのか。その点についても教えて頂きたいです。


3.遺骨について。

こちらは以前、東大の遠藤 秀紀先生が、大型動物は解剖する設備や保管場所の確保が難しいため、依頼があり次第出向いて遺体を回収し東大へ運ぶ旨ラジオでお話をされていました。今回は郡司 芽久先生かもしれませんが、今後ひまわりはどうなるのか、王子に全身を埋葬するスペースは無いでしょうし、その点についても詳細が決定次第公表して頂くことが、王子動物園へ通った方としては知りたいところではないでしょうか。


4.移送中の温度について。

「病理検査で明らかにする、熱中症ではない可能性が高い」と今は判断されていますが、病理で熱中症所見が見られないとしても、暑さのため体位保持が難しくなった可能性も否定できず、しかし温度ロガーも無い状態では推測しかできません。この点をどう考察しておられるのか知りたいところです。


5.これらの疑問についてこれから更に説明を追加し、再発防止策を公表してくれるのか、病理解剖の結果を公表し「再発防止を検討します」で終わるのか、それらについても現時点での判断を伺いたいところです。

医療事故のように第三者委員会などという大それたものはなくとも、できれば客観的な専門家の意見も伺いたいところです。他の有識者もこの輸送が正しいと判断したなら、今回は不運だったと受け止めるほかないでしょう。


哀しみを表明する人に対して「知らないうちに何も言うな」とか「調べてから意見しろ」と憤るtweetも拝見します。正論です。その方も哀しく辛いのでしょう。

それぞれの哀しみ方はヒトでも個体差があります。元々の感受性だけでなく、知識を得るための時間を多く割けるか、とか、論文レベルの文献を読む力があるか、とか、悼む時間を持てるか、とか、個々により環境や個体差があります。

しかし、先ず動物園がその設置理由に「教育」という目的を掲げるのであれば、「なぜひまわりが死んだのか」を、子供・マニア・高齢者、全ての利用者が理解できるよう、詳しく説明を尽くすことがひとつの教育ではないでしょうか。


今回はひまわりの帰属が「岩手サファリパーク」とHPにも記載されているので、契約上すでに岩手の個体なのでしょう。そうであれば王子動物園はどんな輸送箱が来ても異論を唱えることが出来なかったのかもしれません。

そして、王子は今回のひまわりの件に関して、園としての意見を述べることは既にできない立場なのかもしれません。

また、公立の動物園は動物移送で入札を行なう際、仕様書も公開されますが、(全件かはわかりません)

https://www.city.sapporo.jp/zoo/info/keiyaku/documents/kirinsiyousiyo2.pdf

今回相手は私営なのでそれらも見つかりません。


そのため余計にファンは「なぜこんな不幸が起こったのかわからない」というもどかしさを抱え、気持ちのやり場が無いままになっています。

そしてそのやり場の無い気持ちの矛先が王子動物園へ向かってしまえば、それはとても不幸です。


しかし、ひまわりは岩手にたどり着くことなく、王子にのみ生きた個体です。双方で協議の上、例えば円山動物園のウッチーの件のように、つまびらかにして頂くことを個人的には希望します。

https://www.city.sapporo.jp/zoo/documents/shitsumongoikenkaitousyo_0810.pdf


王子動物園はアシカの幼体が3年連続死亡していますが、現在神戸市は大学誘致に執心しています。その上で神戸市は王子動物園長を専門家ではなく「ペットを飼ったこともない」と自ら仰る方を据えています。

https://twitter.com/marumaru0217/status/1477532684243316737

神戸市議会での答弁も読んでいますが、残念というのが正直な感想です。


例えば、上野、京都、東山、横浜は獣医師が園長を務めておられます。円山は事務職の方ですが、改革のために尽力されているようです。獣医師が全員、園長として優れているという訳では無いでしょうが、知識を持った方方です。

その点王子はどうなのでしょう。


これ以上動物が、スタッフが苦しまないために、そして来園客が悲しまないために、神戸市は今回の件を踏まえどう対応するのか、王子動物園をどうしたいのかということを、透明性を確保した上で本気で議論を進めていく必要があるのではないでしょうか。

先のサポーターズデイの日、熊の担当さんは「秋には開園前に熊にあげるドングリをかき集めます。」と笑って仰っていました。ふれあい広場は素晴らしいホスピタリティだと思います。動物を大切にしているあのスタッフさん達に刃が向かうことが無いようにと思います。


王子のキリン舎の前に行くと、ベンチに若い方、年配の方、親子連れ、いろんな年代の方がゆったりと座り、悠々と歩くキリンを見てのどかな時間を過ごしていました。

私はあの日常離れした景色が好きでしたが、しばらくはあの場へ行くとひまわりを想ってしまうだろうと思います。

今は何をしていてもひまわりのあの愛らしい顔が浮かんできてしまいます。魂というものが本当にあるのなら、どうか安らかにと願うのみです。マリンが新たな命を無事に産み育ててくれるよう願うのみです。

そして今、上に記したことが解決され「先走ってエラそうなこといってすみませんでした。」と潔くお詫びできる日がくればいいなと思います。

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