母親と陰謀論を受けて入れて生きていく(ケヤキさんのケース)


「母親を陰謀論で失った」の前編・後編の反響が大きくて驚いている

Twitterでモニタリングしてるのだが、多くの方から同情的なコメントがあった。心が温かくなる。それと同時に背筋が冷たくなるようなコメントも沢山あった。

「私の妻がまったく同じ状況だ」
「友人がこうなってしまっている」
「祖父が同じことを言っていた」

この問題がどれだけ深刻なもので、どれだけ多くの人が影響を受けているのかを改めて知った。

「一人で抱え込むのも不健全だしNoteにでも書いてみるか~どうせ誰も読まないだろ。」そう思って書いた「母親を陰謀論で失った」が、他人様の苦悩を可視化するチャンスを得たなんて不思議な気持ちだ。

この経験は私に何を教えているのか?身近な人を陰謀論で失いかけている人を、私がどうサポートできるのか?ずっと考えていたが、私もこの件に関しては知識がない。経験から言える事なんてほぼ0だ。

そんなことを考えている中、貴重なお話を伺う事ができた。私みたいな浅い年月ではなく、人生をかけてこの問題と向き合ってきた女性の話だ。

今、この瞬間にも辛い思いをしている人たちへのエールとしてご紹介したい。


****************


ハンドルネーム 「ケヤキさん」は、都内に勤める20代女性だ。ときに声を詰まらせながら、彼女の実体験をひとつひとつ私にシェアしてくれた。

ケヤキさんは、中学校のクラスメートほぼ全員が摂取していた子宮頸がんワクチンを接種できなかった。母親が反対したからだ。

「まず大前提として、これは私の家族に関する話で、すべての人に当てはまらない事はご承知ください。それぞれの家族がそれぞれの状況に合うようにするしかないんです」そんな前置きから話し始めてくれた。


「私が母をおかしいと思い始めたのは、わたしが10歳だった時です。

『アメリカの牛肉なんて食べちゃダメよ!脳にダメージあるんだから』、『アメリカは日本を裏から支配している』

とにかくアメリカに対する嫌悪感が凄かったです。理由は未だに分かりません。

いつも、目の前にはない「何か」を恐れて不安がっていました。母は、出かけるたびに防災グッズを買い込むんです。何度も買ってくるので、家は防災グッズだらけでした。

今はコロナという大きな社会不安のなかで、陰謀論がひろく可視化されましたよね?私は実体験から言えますが、陰謀論は私たちのすぐ側にずっとあったんです」

2011年、ケヤキさんが中学生のころ事件が起こる。マンションの管理人が、家を出て行ってくれないかと言うのだ。近隣の住民一同が、いつも陰謀論のような話をするケヤキさんのお母さんを不気味がりクレームを入れたからだ。

『原発の放射能が食べ物に入っている!こんなもの絶対食べてはだめ!』 母と二人暮らしだった中学生のケヤキさんは困惑した。

「なぜ2011年に陰謀論が一気に悪化したのか、そこを考えると見えてくるものがあります。当時は父の単身赴任、兄の大学進学、そして東日本大震災などが重なり、まだ中学生だった私と家に残された母は不安だったんだと思います。

そんな人の不安に、『あなたは悪くないんだよ。悪い人は別にいるんだよ』と優しいフリをして近づいてくるのが陰謀論ですよね」

ここからは詳細を割愛するが、家族一同でお母さまのケアをした。
そしてそのケアの方法は、お母さまの陰謀論的な考えを止めさせる努力ではなく、「陰謀論を信じることを止めさせることを諦める」ようにしたという。

東日本大震災から10年経ったいま、ケヤキさんのお母さまはお父さまとふたりで平和に暮らしている。

ケヤキさんも未だにお母さまとの繋がりを持っている。「コロナが終わって帰省するのが楽しみです。しばらく帰れてないので」、嬉しそうに言った。

「コロナに関する陰謀論は母の口からは聞いたことはないです。裏ではそういうことを思ってるかもしれないですけどね。しかし母は、自分の価値観や意見を人に押し付けない事を実践してくれています。

母が陰謀論と完全に決別したとは思っていません。でも、私は『母が信じる陰謀論と共存することは可能』と学んだんです。

陰謀論を信じてしまった母をありのまま受け入れ、否定をせず肯定もせず関係をキープする。これは10年の家族の努力の結果です。」


ここからはケヤキさんのご経験をもとに、身近な人が陰謀論を信じてしまった人へのアドバイスを3点にまとめてみた。

ケヤキさん自らがプロのカウンセラー、心療内科に何度も通って導き出した、非常に含蓄のあるアドバイスだ。

****************


陰謀論を信じる人が身近にいる人たちへのエール


1.あなたは悪くないことを知って欲しい

「私は、誰もが陰謀論を信じてしまう可能性があると思います。

陰謀論は風邪のようなものだと思っています。普通の人がふとしたきっかけで有害な情報に触れ、いつの間に体内でどんどん悪化していく。

陰謀論を信じている人が近くに居て悩んでいる人に伝えたいです、『あなたは悪くない』って。私の家族がそうだったのですが、皆自分を責めてしまうんですよね。陰謀論に引き込まれる前に自分にできることあったんじゃないかって。

でもあなたは悪くないです。風邪にかかっている人に対してあなたが責任を感じる必要はないですよね?何度でも言いますが『あなたは悪くない』です」


2.陰謀論を信じてしまった人は「普通の人」であることを知り、尊敬の念をもって接して欲しい

「もっと言うと、陰謀論を信じてしまった人達も悪くないです。彼ら彼女らは、びっくりするくらい普通の人です。

難しいことはよーく知っていますが、否定しないで最後まで話を聞いてあげることが大切です。

私と家族のマジックワードは、『へぇーそうなんだ』でした。とにかく何を言われても否定をせず、しかしデマ情報は決して肯定せず、「へぇーお母さんはそう考えたんだね。そうなんだね」と聞くに徹します。

母の話を聞いていると見えてくることがあります。『あぁ・・・お母さんはこういうところが不安だったんだな』って。私は、私の母のことを長年かけて本当の意味で知ることが出来ました。」


3.助けはあることを知って欲しい

「もしあなたが、陰謀論を信じてしまった人と一緒に暮らしていないのであれば、陰謀論を信じてしまった人の1番近くにいる人をまずは心配してください。これはデータでも示されているのですが、陰謀論を語る人と同居することは、想像を絶するストレスです。

身近にいる人が陰謀論を信じてしまった場合、『こんな状況になる前に、自分に何かできなかったんだろうか?』このように自分を責めてしまうことがよくあります。そして、最も苦しい思いをしている人は、陰謀論を語る人の近くにいる人である可能性があります。ぺんたんさんの場合は、お母さまと同居しているお父さまですね。

お父さまに、『お母さんは最近どうしてる?』と近状を尋ねることさえ、お父さまを追い詰めてしまう可能性があることを知ってください。

もしあなたが、陰謀論を語る人と同居している、もしくは近くにいる場合は、迷わず心療内科に助けを求めて欲しいと思います。それは、陰謀論を信じている人を病院に連れていくという事ではありません。

あなた自身が心療内科に行って、先生にあなたの助けを求めてほしいです。心療内科の先生はこういう案件のプロです。あなたの心身の安全を守るのと同時に、陰謀論を語る人とどう接すればいいかアドバイスをくれます。

あなたを介して、陰謀論を話す人を、先生が助けてくれます。

家族会というグループもあります。家族が精神的に苦しい思いをしている人たちが悩みを打ち明けることが出来る会です。

人に話を聞いてもらうことはあなたの精神衛生上とても良いことです。おっくうになる気持ちは分かりますが、助けはあります。是非、助けを求めて下さい」


読んでお気づきになった人もいるかも知れないが、ケヤキさんは私(ペンタン)に向けて、これらの話をしてくれたのだ。

私も話を伺いながら泣かないように一生懸命だった。

「優しい人は強い人」

誰の言葉か忘れたが、そんな言葉を思い出した。

身近な人が陰謀論を信じてしまって辛い思いをしている人にこの記事が届きますように・・・

*次のノートでは別の体験者、つい最近お母さんをコロナ系陰謀論から救い出すことに成功した人の話を紹介したい


最後まで読んでくださり有難うございました。

雨の多い憂鬱な季節になりましたね。先日は虹がとても綺麗でしたよ。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?