小森羊仔先生の単行本未収録作品について、2019年7月の現状
// 改訂1 2019/07/21 2作品の追加およびそれに伴う変更 //
はじめに
まず小森羊仔先生の経歴を説明します。
小森先生は2010年に開催された第4回金のティアラ大賞(集英社の少女・女性マンガ7誌合同の新人賞)にて銀賞を受賞し、受賞作「きみが死んだら」がYOU2011年第5号に掲載され、デビューしました。なお銀賞は区分としては金のティアラ大賞に次ぐ第2位に当たりますが、金のティアラ大賞は2008年以降該当者なしが続いており事実上の第1位と言えるでしょう。ちなみにこの時の銀賞同時入賞は式田奈央先生、かねもりあやみ先生でした。
デビュー後、短編掲載・短期連載を経て本格連載作「シリウスと繭」を月刊YOU 2011年12月号(YOUはこの号より月2回刊から月刊誌化しており、それに伴い月刊YOUに名称変更しています)より開始します。この「シリウスと繭」が2012年に小森先生初の単行本(全2巻)となりました。以降、2013~2014年「青い鱗と砂の街」全2巻、2016年「木陰くんは魔女。」全3巻が発売されています。
せっかくなので、各作品の試し読みが出来るページのリンクを貼っておきます。
小森作品は「シリウスと繭」、「青い鱗と砂の街」、「木陰くんは魔女。」と作品が新しくなるごとに絵柄などのマンガ表現や扱うテーマ、ストーリーがブラッシュアップされている印象を持ちます。しかしながら、この3作品以外の短編・シリーズ連載作は単行本化されておらず、小森先生がどのようにマンガ表現を深化させてきたのかを、自分はこれまでわからないでいました。そのため、短編・シリーズ連載作を閲覧することで理解を進めようと考えました。そこでまず掲載履歴を調べてみたのですが、思っていた以上に掲載作品が多いことがわかり、これらが単行本化せずに埋もれていくのか…とさびしくなりました……
そこで、自分が調べた範囲で判明している単行本未収録作品を次章より記載し、このさびしさを勝手ながら共有させて頂きたいと思います。
なお、収録雑誌およびページ数を載せてありますので、興味のある方は然るべき方法で読んでみると面白いと思います。
単行本未収録作品
きみが死んだら
『YOU 2011年5号』、集英社、2011年、p295)
本文はp293~p324。上記の通り、第4回金のティアラ大賞銀賞受賞作です。身体の扱いや意図的にコマのツラをズラす手法など小森イズムが投稿作にして垣間見えます。審査員コメント(p288に記載)でも激賞されており、特に椎名軽穂先生は「単行本が出たら欲しい」とまでおっしゃっています。ちなみに椎名先生は「シリウスと繭」1巻の帯コメントを書かれているんですよね…なんて美しい話……
カラクリ奥様
(『YOU 2011年12号』、集英社、2011年、p103)
本文はp103~p324、p103~104はカラーページ。本作を含め4号連続で短編掲載しています。銀賞受賞後第1作にして主人公がアンドロイドという…トバしてるな~と思いつつもアンドロイドだからこその要素を心情・身体ともに明確に描写しており、この試みは成功していると言えます。また投稿作に比べてキャラクターをかわいく描くことを達成してると思います。扉絵はコラージュのように制作されており、めちゃかっこいいです。
平栗小梅の麗しき恋
(『YOU 2011年13号』、集英社、2011年、p165)
本文はp165~p195。主人公にヒモがいるという設定は一般的としても、それが3人いるという特色を加えることで飼うというニュアンスをしっかり出すことに成功していると思います。p181~183の水中表現が本当にかっこよすぎます、特にp181の満たされる・溺れる描写がうますぎる……
お嫁さん、観察日誌
(『YOU 2011年14号』、集英社、2011年、p201)
本文はp201~p241。オーソドックスな展開とも言えますが、例えばp216の窓に手が映るという小さな描写が後に再奏されたりと小技が光る一作。天候のコントロールもベタながら良いです。
お砂場のレディーさん
(『YOU 2011年15号』、集英社、2011年、p241)
本文はp241~p273。これまでの受賞後作品とは少しテイストが異なり仄かにダークな一作。ショートショート3話で構成されており、その構成が見事です。絵柄上あまり情報の多い顔ではないのですが、幼少期と成人後の描き分けや、さらに言えば成人後であってもその中でのニュアンスの付け方が巧みです。
ココロコネクション
(『YOU 2011年18号』、集英社、2011年、p157)
初の短期連載作で3話構成。1話がYOU 2011年18号p157~p187(カラーページがp157・p158)、2話が19号p135~p165(カラーページがp135・p136)、3話が20号p117~p147に掲載。とにかく構成がすごくて、まず1話で魅力的な価値観を描き、その裏で走っていた物語を描く2話、それらを受けた先と総括を描く3話となっています。次号のYOU 2011年21号から初の本格連載作「シリウスと繭」が開始されるのが納得できる構成です。
コリスバレエ
(『bianca 1号2012年6月号』、集英社、2012年、p49)
本文はp49~p71。バレエという題材もあり、ポージングの美しさを意識されてると思うのですがp55やp63などホントいいんですよね。
Hello, my star
(『ザ・マーガレット 2012年 8月号』、集英社、2012年、p871)
本文はp871,p873~p903、p871はカラーページ。「シリウスと繭」のスピンオフで、メグ視点で本編より過去の時間が描かれています。これがなぜ「シリウスと繭」の単行本に収録されていないのか……
8月のチーカ
※月刊YOU 2012年9月号の別冊付録『こどもYOU』に収録されているのですが、別冊付録は国会図書館になかったので未見です。
コトリ喫茶
(『bianca 2号2012年12月号』、集英社、2012年、p137)
本文はp137~p160。これまでも一時的な視点移動はありましたが、ここまで明確に男を主人公に据えた作品ははじめてのはずです。
コジカ理容
(『bianca 3号2013年6月号』、集英社、2013年、p137)
本文はp183~p206。本作も男性主人公であり、さらにキャラ造形も今まではなかった感じです。同時期に「青い鱗と砂の街」の連載が開始しており、村人やクラスメートなど多くの老若男女を描くことになり広がった表現と言えるのではないでしょうか。さびしくてとても好きな話です。いやマジでなんでこれ単行本になってないの………???
イッツ ア スモール ルーム
(『月刊YOU 2014年4月号』、集英社、2014年、p421)
本文はp421~p437。「青い鱗と砂の街」の連載後の作品。線のタッチなど絵柄がかなり整理され「木陰くんは魔女。」に近づいていることや、主人公の性格付けなどに「青い鱗と砂の街」以降のモードであるという印象を強く感じます。
キツネノ嫁イリ
(『月刊YOU 2014年5月号』、集英社、2014年、p345)
本文はp345~p395。前作「イッツ ア スモール ルーム」より2号連続掲載。線のニュアンスなど「イッツ ア スモール ルーム」同様に「青い鱗と砂の街」以降のモードを感じます。話自体も少しキッチュでトンでる感じがあり、そのあたりは「木陰くんは魔女。」に近い印象です。
早苗月の頃
(『月刊YOU 2014年7月号』、集英社、2014年、p421)
本文はp421~p441。ノスタルジックな世界設定を表現するための小物・風景がとにかくうまいです。p430の草木の表現がポップなのにえらく沁みます。
冬子さんの手習い帖
(『月刊YOU 2015年3月号』、集英社、2015年、p331)
本文はp331~p371、p331~p332はカラーページ。主人公の冬子さんは表情・性格付け、造形など「木陰くんは魔女。」の夢子の原型っぽい感じがします。なお、次に記載するザ・マーガレット掲載の「転校生、離脱する」はそれぞれ2015年2月14日・24日に掲載誌発売とほぼ同タイミングで発表されています。
転校生、離脱する
(『ザ・マーガレット 2015年 4月号』、集英社、2015年、p895)
本文はp893~p924。転校生の造形・所作に「木陰くんは魔女。」の佐久間先輩みを感じます。最高の見開きがあるいいマンガです。「イッツ ア スモール ルーム」から本作までは「早苗月の頃」を除きコマ間の空白がない形式(説明が難しいのですが、要は「おばけたんご」以降のくらもちふさこ先生スタイルです。)で描かれていますが、「木陰くんは魔女。」とその前身の読み切り作「ユメユメ」ではこの手法はとられませんでした。
以降の発表作である読み切り作品「ユメユメ」と連載作品「木陰くんは魔女。」はいずれも単行本化されています。
上記以外の単行本未収録作品をご存知な方はコメントなどで教えてくださると本当に嬉しいです。よろしくお願い致します。
おわりに
調べた結果、少なくとも合計16作、ページ数としては526ページ(に加えて「8月のチーカ」のページ数)が単行本にならずにいることがわかりました。これが2019年7月の現状です。
これらの小森羊仔先生の単行本未収録作品が、単行本になる日を、自分は待ち望んでいます。
……と、とりあえずインターネットの虚空に文字情報を残しましたが、これではボトルメールと同じできっと意味をなさないでしょう。ということで、、、
(これはこれでYOU編集部亡き今、果たして本当に然るべきところに届くのかは疑問であり、結局ボトルメールのままなのでした)
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