QUAD 405の修理および改造履歴

<注意>
当記事に記載している内容およびそれによって生じた不具合について、私は一切の責任を負いません。それでもよければご覧ください。


これは自分がQUAD 405というパワーアンプを整備・改造した備忘録です。QUAD 405については下記が参考になります。

内容はほとんどインターネットで見つけた先人の道程を参考にしているだけなので、言ってしまえばまとめサイトなんですが自分が覚えておくのが面倒なのでインターネットに記しています。

なお回路図および部品No.は下記のサービスマニュアルを参照しています。

はじめに

QUAD 405には同じ設計思想の後継機種405-2がある。また同じモデル内でもマイナーチェンジをしているので、同一品番でも細かい仕様が異なるバリエーション違いがあるようだ。
使い勝手やメンテ性を考え、入力ボリュームが付いていて内部にモジュール部品を使用してない405の後期にあたるモデルを買うことにした。

現品はヤフオクで入手。サイトを見る限りLEDの点灯が認められており通電は大丈夫そう。ただし音出しなどの確認はなくジャンク扱いで、送料含めて2万円いかないぐらいだった。

入手後、通電確認。ややトランスが唸っているけどこれは許容出来る範囲だよ…と自分を納得させた。耳から遠くにアンプを置きましょう。
次に適当な負荷抵抗を使いオシロで波形を確認する。変な波形ではなかったので適当なスピーカーに繋ぐ。左右で音は出ているがハム音の大きさに違いがあった。あとゲインが高くてほとんどボリュームあげらんない。
筐体を開けて基板を見ると「M12368 ISS 9」と印字されていた。部品の焼けなどの不良はなく一安心。

ハム音とゲイン、この2点をまず改善する。

ハム音改善

データシートを参照するとハム音は電解コンデンサC5の交換が有効なようだ。取り付けられていたC5は過去に一度も交換されてないようなので、このやり方は通用しそう。他の電解コンも交換履歴がなさそうなので交換、ついでにDCサーボ用のタンタルコンC2も交換する。電源のコンデンサC13,14は少し大きい値にした。大きければ大きいほどいい気もするが、突入電流で(タイムラグ型とはいえ)ヒューズが終わる、あるいは終わりが早まる気がしたのとコストの問題から値を決めた。あと高周波対策としてパラでポリエステルコンデンサを入れた。これは下記が手本。

C2:100μF/6.3V TBM0J107EECB ※タンタル
C5:100μF/25V UFG1E101MPM
C10:47μF/50V UFG1H470MPM
C13,14:15000μF/63V ALC10C153EF063
C13,14とパラ:4.7μF/250V 250MPS475J ※メタライズドPP

ゲイン低減

次にゲインについて、これは初段オペアンプの増幅率で変えるのが手っ取り早い。つまりR6を小さくする。上に記載したリンク先の「Gain Reduction」あるいは下記の「The input op–amp circuit performs several roles:」が参考になる。

この増幅段の帰還はC4とR6の直列になっている。DCサーボを入れつつもローエンドを伸ばす目的だろうか。定数としてはC4×R6が入力のC1×R3と同じぐらいになってればいいので、C4とR6はそれぞれ0.22μF、68kΩとした。使用したいコンデンサで入手出来るのが最大0.22μFだったのでおのずとこの数値になったが、入力がラインレベルであればもっとゲイン下げてもいいと思う。

C4:0.22μF 2A-UPZ-224JE
R6:68kΩ REY25FY68KΩ

ついでにスピーカーターミナルをプッシュ式からバナナプラグが刺さるタイプにした。秋月で購入。バナナプラグと同時にY端子も使えるのでバイワイヤリングも出来るようになった。

初回の改善はこれまで。


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「新しい世界」/高橋徹也を聞いてたらボンッという音と共に左chが出力しなくなった。
早速開腹するが特に部品の焼損とかヒューズは飛んでないようだった。
※後で調べたらヒューズがしっかり飛んでいたので、以下は全て誤解が招いた悲しい出来事である

基板を確認しても目に見える焼損がないので、目に見えない系の事故を疑った。つまり半導体内部の短絡などだ。トランジスタを一つずつ外し、半導体チェッカーDCA75でチェックしていく。短絡などはなく全部正常だった。ここまでやってもっかいヒューズ確認したら溶断してて泣いたってわけです。右chのヒューズを拝借したら左chが普通に鳴りました。お前はいつもそうだ。

副次的に各トランジスタのhfeの値が得られたので載せておきます。

     左   右
 Tr1:409、459 BC214C
 Tr2: 98、  94 ZTX314
 Tr3:188、209 ZTX504
 Tr4:231、193 ZTX504
 Tr5:434、375 BC214C
 Tr6:341、375 BC214C
 Tr7:113、229 40872
 Tr8:135、122 40872
 Tr9: 38、  23 2SD424
Tr10:50、  30 2SD424

左右の基板で差がないか確認するのも目的のひとつだったので、左右どちらも測定している。部屋は常温だったけど基板から外して間もないタイミングで測定してたので温度分のズレはあると思う。またDCA75の設定はデフォルトのままなので、特にパワトラTr9,10の値はどこまで信じていいかはわからない。

ヒューズの交換

溶断していたヒューズはセラミックが選定されていたので、交換用のヒューズもセラミックにした。ヒューズは消耗品という考えからその他の箇所も変えることにする。

FS1,2:4A/250VAC 0216004.MXP

ヒューズ交換のついでにそれ以外の改造にも着手することとした。受動部品の性能は大きく変わってなさそうだから半導体のみを交換する。部品は現行品から選んだけど表面実装が主である今の世の中、いつディスコンになるかなんてわかったもんじゃないので怖い。(そういう意味でも今時点で交換しておきたかったっていう理由もある)

出力Tr・ドライバTrを速いやつに変更

初段のオペアンプ増幅直下のLPFが支配的っぽいからあまり意味なさそうなんですが速いは強いなので。ドライバTrは使ってみたいやつがフルモールドパッケージだったので端子を使って下図のようにそれっぽくした。

画像1

これは作例が見当たらなかったので新規性があるかも。ただ足を何度も折り曲げすると破断するので注意しましょう。(一個それで壊した)

Tr7,8:2SA1859A

出力Trの選定は下記を参考にした。

Tr9,10:2N3773G

オペアンプの変更

これも初段の増幅直下のLPFが以下略
最初THS4631をつけたのですが無対策だとやはり発振がすごいのと電源オフ時に変な挙動(※)をしたので怖くなってやめた。厳密には、変換基板のはんだ付けをミスったままつけてしまい、IC壊れるわパワトラを飛ばすわで怖くなってやめたのが本当。はなからミスってなければ壊れてなかったかもなんだけど、発振を抑えたところで変な挙動がなくなるのかは不明で、万が一この挙動由来で下流の回路やスピーカーが壊れたとしたら心が辛いので自分は諦めました。結局つけたのは下記のコメント欄を参照してOP42

※このアンプは電源を切ってもC13,14に蓄えられた電気がなくなるまで鳴り続けるのだけど、パワーアンプ部が動いてる間にオペアンプが動作電圧以下になるとイレギュラーな挙動をする可能性が高い。ツェナーダイオードD1,D2とパラで大きめの電解コンを入れれば先にパワー部から落ちてくれそうだけど、それはそれで故障を招く可能性が否定できず試せないでいる。

熱結合のグリスをシリコンシート化

元々塗布されていたグリスがカラカラだったのと、熱抵抗で比べるとシリコンシートが元の絶縁フィルム+グリスより有利なようだったので。化学の進歩ですね。放熱板-T字金具間もシリコンシートにしたけど、今回選んだやつはある程度熱が入ると溶けてしまい再利用が難しくなる説が見受けられる。温度との兼ね合いだと思うが現状まだ取り外してないからわからない。ここはシートでなくグリスを新たに塗布するやり方のほうがいいのかも。

Tr7,8-T字金具間:TO-220用 TC-30BG
Tr9,10-T字金具間:TO-3用 CW-1
放熱板-T字金具間:HT-04 ※金具1ヶに対して2枚使用

おわりに

小信号用トランジスタの交換も検討したのだけど、TO-92型だと選択肢がほぼ昔の機種のセカンドソースになってしまい、交換する意義があまり見出せずそのままになってる。トランジスタのオススメがありましたらご教示頂きたいです。よろしくお願いします。

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