Twitter「#2020映画ベスト10」補遺

ツイートでは文字数が足りず。こちらで走り書きではありますがそれぞれ短い感想を書きました。

①『his』
男性の同性愛と真剣をテーマとした作品。2020年は同性間での恋愛を扱った作品が実写・アニメを問わず多かった印象ですが、群を抜いて良かったです。
普段からエモーションのみを主軸にした文章についてはシニカルにみてしまうところがあって自分が映画で泣いても「泣きました!」とは書かずに黙って隠してるところあるんだけどもう年末だから白状すると、なんかめちゃめちゃ琴線に触れて上映時間の4分の3は泣いてたよ。

②『ミッドサマー』
映像美と宗教的な音楽、祝祭☀☀☀ 脚本について既存のホラーとの差異(たとえば、ジェンダー論的な観点)を指摘する批評も多くあり興味深く読んでいましたが、映画館という閉鎖された環境でカルトの世界観にどっぷり浸かるという鑑賞経験自体がすごく良かったところのひとつですね。ところでうろ覚えながら『透明人間』でも似たようなシーン出てきたと思うけど、ボトルで抗不安薬を常備できる仕組みはやっぱり良くないと思うなー(飲み過ぎちゃうよ!)。

③『フォードvsフェラーリ』
まるでお手本のような美しい構成の脚本。不完全な主要人物ふたりのバディものってほんと弱いんだよな。モータースポーツという男くさい世界で粗野で不器用な男の物語が展開されるなか、ほぼ唯一出てくる女がまるで乗り物雑誌に出てくるようなタイプなのもなんだか上手くできすぎててちょっと笑ってしまう。ラジオでレース実況を逐一追うあのシーン、好きです。

④『スパイの妻』
とにかく話が面白い、芝居が良い。戦時下を舞台にメロドラマと「正義」をやるの、下手な作り方をしたらほんとに駄目な感じで終わると思うんだけど、映像作品としての出来がさすがに一線を画している。ちょいちょい演出がホラーライクに感じるのは先入観のせいだろうか……。

⑤『はちどり』
まさに「14才のリアル!90年代!」といった作風で、こういうシビアな思春期もの大好き。すごく真摯に作られていて余韻も重めな作品なので適当なこと書けないんだよな。シスターフッドっていいね。

⑥『魔女見習いをさがして』
良いアニメ、素敵な作品はいっぱいあったんだけど、その年を代表する作品を選出せよと言われたときにアニメから挙げるなら僕はこれになるな。こういう質の高い作品が広く受け入れられてほしい。

⑦『パラサイト』
僕が書かなくてもどうせみんな書くでしょー、と思いつつも、実際凄まじく良かったと感じた以上しょうもない逆張りをしてもしょうがない。格差社会が云々という主題は当然作品の軸としてあるんですが、トイレのあのシーンとかクライマックスのナイフのあのシーンとか、そうした刺激の強い映像美も強く印象に残っていますね。

⑧『ロマンスドール』
これベスト10に挙げている方はそれほど見かけなくて、ちょっと悩んだのですがやはり優れていたと思うので入れます。
言っちゃえばまあ難病ものの一形態なのですが、たとえば『君の膵臓をたべたい』のようにとにかくウェットにしがちなジャンル的特性があるなかで本作はひたすらカラっとしたドライな空気感を貫いているのがいいですね。色彩や挿入歌もどことなくそんな空気感があったようななかったような。最後の台詞、いまいち好きじゃない人もいるみたいですが僕はすごく好き。天気の子の真逆みたいなものですよ!!(この書き方で誰かに伝わるのか?)

⑨『犬鳴村』
これも迷ったけど、エンターテインメントとしてやはりすごく面白かったので。
「2020年ベスト飛び降り自殺!」みたいなツイートを3月くらいの時点で見かけて観に行った記憶がある笑
ええとあの、飛び降り自殺に至るまでフェティシズムが刺激されるような一連のカットがすごく良かったです(限定的な需要)。

⑩『君が世界のはじまり』
こういうタイプの青春ものは無条件で好きになってしまう。
実在のバンドであるTHE BLUE HEARTSが出てくるところが一番リアリティレベルが落ちるのがちょっと面白いですけど、
あけすけな大阪弁の応酬が小気味良くてすごく良かったです。

・次点
『どうにかなる日々』
作品の出来はもう文句なしに素晴らしかった。佐藤卓哉監督!!
単純に枠が足りなくて、悩んだ結果おなじ思春期もので、なおかつ原作なしオリジナルである⑩を優先して選出した形です。

『ジオラマボーイ・パノラマガール』
これも上記と同様の理由。全然話題になってなかった気がするけどすごく良かった。
良い意味で気持ち悪くこじらせるのは大事なことなのだ。

・偏愛枠
『銃2020』
美少女に銃を愛撫させたいだけ!日南響子さんがハマり役でとにかく良い。
正直、優れた出来栄えの映画だとは思わないけど僕は好きなんだ……。
極めて個人的な偏愛だけで言うなら、『ANNA』よりも『初恋』よりもこれです。

『13月の女の子』
百合とSF、好きなものだけで構成されている。
この作品も主にシナリオの面で「これどうなのよ」と感じてしまった場面は多いものの、
この世界観のうえで繰り広げられるオールタイムベスト級の傑作を幻視してしまったんだよな……。

来年も、映画を観ていくぞ。
良いお年を!

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