2024年8月のSES業界動向レポート
みなさんこんにちは。8月が終わりましたね。夏休みを取られた方、楽しく過ごされましたでしょうか?ゲリラ豪雨の多さに加え、お盆期間の直前に地震の情報があったりあるいは台風が来たりと、今年の夏は自然災害に見舞われることが多かったようにも思えます。
そんな激動の夏でしたが、SES業界の方はどうだったのでしょうか。数字をもとに見ていきましょう。
8月のSES業界
分析対象件数
案件の有効分析対象件数:2690
要員の有効分析対象件数:1944
平均単価
案件単価平均:70.39万(前月比+0.46万)
要員単価平均:65.49万(前月比-2.2万)
案件と要員の単価平均差:4.9万
2024年4月からの推移をFig.1に示しておりますが、おわかりの通り、8月に入って要員の単価ががくっと下がっております。単価平均差はこの5ヶ月で最大ですね。「何事?」と思ってしまいます。
Fig.2に、今月単月の、案件と要員の価格分布を示しています。先月と比べ、50万円以下の要員が50万円以下の案件の数を大幅に上回っており要員あまりの傾向となっていることがわかります。また、ミドルレンジ(70〜90万)では、案件が大幅に上回っており、こちらは案件余りの傾向となっています。
平均年齢
平均年齢をチェックしてみましょう。過去の記事でも論じたとおり、若手の投入が多いと平均単価は下がる傾向にあります。Fig.3をみると、8月は平均年齢が他の月よりも低いことがわかります。5ヶ月間で最低です。今回も若手の大量投入が原因だったのでしょうか。少し詳細に調べてみました。
まず、4月から8月までの5ヶ月間すべてまとめて、要員の年齢と希望単価の相関をとったところ0.4でした(Fig.4)。相関はなくはないのですが、思ったよりも高くはないという印象です。
さらに、各月ごとの年齢層(10歳区切り)別単価平均をプロットしたものがFig.5になります。少し見にくいかもしれないのですが、20代は7月→8月で3万円の平均単価減少。おおっ、と思うかもしれないですが、40代も3万円の減少、50代は4万円の減少になっているんですよね。ということで、全体としてはゆるく年齢と単価の相関はありますが、少なくとも8月に関していえば、20代のみならず全体的に単価が下がっていると言えそうです。
スキル
続いてスキルの側面で見ていきましょう。案件要求スキルと要員保持スキルに関する情報をFig.6からFig.9に示しています。順位の変動等を見ると、先月までと、特に上位の方は大きく変動はありません。特にFig.9を見ても、要員スキルで突然上位に来るようなスキルはありません。もう少し詳細を見てみましょうか。
スキルごとの単価分布
各スキルごとに単価の分布を確認してみましょう。いつもの通り、全体への影響の多い、TOPの方から。
まずは開発系言語。Java、C、JavaScriptの3つを載せています。Fig.10,12,14が単月の分布、Fig.11,13,15は、時系列推移を示しています。単月分布を見ると、どのグラフもロースキル余り、ミドル不足の傾向が出ています。そして、推移で見ると、どの言語でも8月は下げています。
続いて、インフラ系技術。上位3つの技術、AWS、SQL、Linuxを開発言語同様Fig.16,18,20に8月単月分布、Fig.17,19,21に時系列推移を示しています。同様の傾向が出ていますね。すべての技術が8月に入って下がっています。
上記から、特定のスキルが顕著に単価を下げたというのではなく、どのスキルでもまんべんなく単価が下がっているということが言えそうです。
考察
2024年8月のSES業界、とりわけ先月から要員の提案単価が下がったところに注目し、内訳を探ってみたところ、
・特定の年齢層で単価が下がっているわけではない
・ほとんどのスキルで単価が下がっている
ということがわかりました。一方で、案件の平均単価はほとんど変わっていません。ですので通常の月以上に、需要(案件)と供給(提供)の質の乖離が生じています。つまり、
・年齢を問わず、ロースキル要員がいく現場がいつも以上にない
・案件に入れるスキルをもった要員が不足している
ということです。8月にこの傾向が強くなった原因として考えられることはどのようなことでしょうか。
8月に新規入社するエンジニアあるいは7月末に案件終了して8月から新規の案件を探すエンジニアというのはプロジェクトのサイクルから考えると多いとは思えません。そうなると、8月に現場を探しているエンジニアは、それ以前の月に入社/退プロジェクトをしたあと、長期間案件が決まっていないエンジニアが残っているというケースがひとつ考えられます。
この状況を打破するには、今案件がないロースキルのエンジニアが入れる案件を増やすしかないのですが、案件の単価変動を見ると、需要側は一定の金額から下がる気配はありません。と、なると方法は一つ。今いるロースキルのエンジニアを、ミドルレンジクラスの現場に入れるようにスキルアップさせるしかないということになります。
「ハードルが低い」という業界の特性上、ロースキル要員は集まりやすい、集めやすいです。ただ、アサインできる現場がないのにも関わらずロースキル要員だけがただ増え続けるというのはどう考えても健全な構造とは言えません。
これは一社のSES会社だけでどうにかなる問題ではありません。業界全体で、現状を冷静に見つめ、全体でスキルアップできるような仕組みを作っていかないといけないのではと思っています。
以上、2024年8月のSES業界レポートでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?