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LINEの生活#27 緊急会議  シーズン3、「『ボス』編」、完結!!それを記念して、今回も少し長めです!!

テンヌキは一度、人間の世界の話を聞いたことがあった。十二代目の「ボス」の家来が、テンヌキのように逃げ出してきたのだ。まだ「ボス」の家来でもなんでもなかったテンヌキは、街でたまたま、その文字に出会った。
聞いて欲しいことがある
そう言って、その文字は、テンヌキに、「旅」で行った人間の世界で知ったことを話し始めた。
テンヌキは、その話を、目を輝かせて聞いていた。だが、話を聞いているうちに、どんどん顔色が悪くなっていった。
話の内容はこうだ。まず、人間の世界は、ここに立ち並んでいるような工場で、食糧を大量生産しているわけではなく、「畑」などを使って、長い時間をかけて食糧を作っているのだということ。その文字は、そんな人間の世界のシステムに、憧れているのだ、と言っていた。前半は、そんなふうに、『人間の世界は不便だけど、憧れられるところもある』ということを話していた。だが、後半は酷いものだった。人間は、毎日毎日平和を謳っているが、現実は違う。戦争、犯罪が絶えず起こっていて、人間が謳っていることと、全てが真逆なのだ。
そして、

このLINEの世界もそうなのだ。「文字のため」だと「ボス」は謳い、毎年毎年、自分を殺し、文字たちを殺す。全てが真逆だ。


そしてテンヌキも、「ボス」になれば、この定めを辿ることになってしまうのだ
くそっ!!
だが今は、そんなことを考えている場合ではない。東を助けなくては!!
テンヌキが東に惹かれたのは、東がいつでも真っ直ぐに、自分の意見を言えることを知ったからだ。たとえ、誰かを傷つけることになってしまっても、自分の意見を貫き通す。それが、東湊太という人間なのだ、とわかったのだ。
どうか、東は、人間の世界に行って、その長所を伸ばしていって欲しい
テンヌキは、東と出会ってからずっと、この想いを胸に秘めて過ごしていたのだ。
だからなんとしても...東を人間の世界に戻してやりたい!!
テンヌキは、家来を押し除け、屋敷の裏に走った。体力はとっくに限界を迎えていた。だが、胸に秘めた想いが、テンヌキの体を動かしていた
急げ!!
「お」の言葉から察するに、東は「アレ」に取り付けられている。
「『アレ』はヤバいんだよ...!!」
テンヌキが倉庫の前についた。やけに時間がかかった気がする。
「東...」
テンヌキは最後の力を振り絞り、倉庫のドアを蹴飛ばした。

「...それでは今から、緊急会議を始める!!事情により、『ボス』の秘書、テンヌキは不在のまま行う。それでは『ボス』、説明をお願いします」
「お」は席を立った。例によって、この会議室には、いかにも政治家のような、「政」「治」「大」「臣」と言った文字が集まっていた。
「では、議題を発表する」
そう言って「お」は、用意していたテレビの電源をつけた。モニターに、テンヌキの画像が映る。
「みなはもう理解していると思うが、次の『ボス』候補の『東』は、人間の世界にいた。だが、『東』は、『ボス』にはならず、この世界から逃げ出したい、ということだ」
「『ボス』!!次の『ボス』がいないと、この世界が壊れてしまうではありませんか!!」
「どういうつもりなのでしょう...その『東』とやらは......」
「仮に『ボス』にならず、人間の世界に逃げるとしても、出口などないのに...」
...違う、出口はある。あいつらなら分かってくれる
静粛に!!
「お」が怒鳴り、会議室が静まり返る。
「『東』が逃げる逃げないは、一度置いておこう。今は、次の『ボス』をテンヌキにするのかどうかを決めたい」
「「「異議あり!!」」」
「『ボス』!あなたは一代目から受け継がれてきた決まりを破るつもりですか!?」
「あなたの意見はどうなんです!?あなたはそれでいいのですか!??」
...私は東を人間の世界へ行かしたい。おかしな理屈はいらない。ただ、それだけのことだ
「...じ、じゃああの決まりは!?」
今ここで法律を変える
!!
次の『ボス』は、私が独断で決めれることにする!!
「おお...」
「それなら従わないとな...」
「賛成です!」
「私も!」
では、これにて次の『ボス』を、テンヌキにすることを決定する!!

会議が終わって、「お」は自分の部屋に戻った。そして、一冊のノートを取り出した。
見つけてくれるよな、あいつらなら
「お」は、銃を取り出した。
ごめんな

バアン!!

続く

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