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行列のできるリモコン (1) #毎週ショートショートnote

俺たちの学校は全寮制だ。私物の持ち込みは原則禁止。娯楽といえばロビーにあるテレビくらいで、しかも見ていいのは夜6時から8時までの2時間だけだ。

チャンネルの決め方にもルールがある。まず、テレビを見たい人は夜6時までにリモコンの前に並ぶ。時間になったら、2時間の視聴時間を頭数で割り、先頭から順に割り当てる。もし8人並んでいたら、1人15分、チャンネルの独占権が与えられるわけだ。狙った時間帯の独占権を得るべく、俺たちは毎日情報戦を繰り広げていた。

しかし、今日は違った。
「18:00 ドキッ! アイドル水泳大会 〜ポロリもあるよ〜」
俺たちの心は一つだった。

夜6時が近づく。テレビの前に続々と人が集まってきた。寮生全員いるんじゃないか? 今日に限っては並ぶ必要もないので、みんな場所取りに専念している。

そして夜6時。テレビを点けようと誰かがリモコンに手を伸ばしたそのとき――
「おう、今日は俺だけか」
白々しい声の方向を見ると、そこにはリモコンの前にただ一人並ぶ寮長の姿があった。

おわり (435文字)


お読みいただきありがとうございました!

りょ、寮長ももちろん某スポーツ番組が見たいんですよね? ね?

青春とは「大人が決めた制約の中で自由を求めて足掻く様」なんじゃないかと思ったんですよね。部活や恋愛に必死なのも、それしか必死になるものを選べないからなんじゃないかと。というわけで、厳しい寮生活に差し込んだ希望の光エロに全力ですがる生徒と、それを無慈悲にへし折る大人のやり取りを書いてみました。

たらはかにさんの企画に参加しています。
今週のお題は【行列のできるリモコン】で【青春の香る】ショートショートです。


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