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25.スキー部練習開始

夏が終わり、秋を通り越して冬がやってくると、それまで走り込みとストレッチだけやっていたスキー部も本格的な練習ができるようになった。函館近郊のスキー場としては後年しばしば通うことになる「ニヤマ高原スキー場」や「函館七飯スノーパーク」、「グリーンピア大沼スキー場」があるが、週に3回、授業が終わった放課後に通うようなスキー場ではない。それに金もかかる・・・
そこで選ばれたのが「函館東山スキー場」である。スキー場と言う割には「函館東山スキー場」はあまりにもお粗末だった。それでも初心者の私にとってはワクワクである。
そこで放課後、確か花園町までスキー用具一式持って函館の少年スキークラブの練習に同行した。相手は小学生である。女の子も混じっている。だからあまり恥ずかしいところを見せたくないのが本音である。しかし、「函館東山スキー場」に着いた途端、私が持っていたプライドがズタズタにされてしまう。
花園町で私たちを拾った少年スキークラブのマイクロバスは山手の道をまっすぐに進んでいく。ところがである、函館市の東山町と言うところは青少年にはあまり環境がよろしいところではない。なぜなら、函館市街に25軒あるラブホテルのうちで15軒が東山のスキー場までの道沿いに点在しているのである。
一度、バスに乗り遅れた我々を「函館東山スキー場」まで連れて行ってくれた体育の黒木先生は、東山のラブホテル銀座を眺めて、
「最近は、セックスもスポーツになったんだな・・・」
としみじみおっしゃった。
さて、その「函館東山スキー場」に着くと、先ずリフトがない。今ではめずらしいロープを掴んで斜面を登っていくロープ塔が一本あるだけだった。しかも、ゲレンデは、本物のスキー場がゴルフのコースだとしたら、「函館東山スキー場」は打ちっぱなしのゴルフ練習場のようなものだった。昔、家族旅行で石川県のスキー場に行ってリフトの乗り方なら出来たのだが、ロープ塔は初めてである。とりあえずスキー所の準備がそろったところで、ロープ塔に挑戦してみた。初めは両手でロープを持ち、渾身の握力を込めて半分くらい登ったところであろうか、途中でギブアップして倒れてしまった。
ロープ塔は、単純にロープにつかまって斜面を登るというものなのだが、前の人がこけると後ろの人はぶつからないようにロープを持つ手の握力をちょうどよい加減に調節して、その場に止まっていなければならない。ロープ塔の乗り方さえマスターすれば以外に容易にゲレンデの上に上がっていくことができる。そのコツというものが、左手をロープの先に持って行って、右手は背中を回して腰のところでギュッと捕まえるのである。たぶん私のロープ塔体験は函館の小学生の笑いのネタになっているだろう。
話を練習に戻そう。顧問のみっちゃんは私がスキー初心者であることが分かっていたのでブーツの履き方からビンディングの取り付け方を懇切丁寧に教えてくれ、ゲレンデに出たらマンツーマンでボーゲンから滑れるように指導してくれた。その間、小学生のスキークラブのガキどもはポールを立ててスラロームの練習をやっている。恥ずかしいことは恥ずかしいが、あんなにスイスイ滑られないので仕方がない。臥薪嘗胆である。
ただし、スキー部の練習で一番ラッキーなことは1年生の時の前半の義務自習をサボれたことだろう。自習はしてもいいが、義務的に課せられると人は反抗するものである。

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