花束みたいな恋をした下上上左右左右BA

 大学生のみんな〜〜〜!!!花束みたいな恋、してる〜〜〜?????

 せめて早漏であることを願わずにはいられない俳優の菅田将暉と、女優の有村架純がW主演を務める『花束みたいな恋をした』という映画が絶賛公開しています。そこで有村架純の濡れ場があると聞いたもののマジでそんなの全然興味なくてただ低迷気味の映画産業における邦画のあり方を文化的な観点から推し量るべく映画館に足を運びました。そしてこれがなかなか面白かったので感想を書こうと思います。以下、ネタバレを含みますが、結論から言うと有村架純の乳首は見えませんでした。ふざけやがって。金返せ。吉高由里子を見習え。

 東京・明大前駅で終電を逃し偶然に出会った絹と麦。バイト、同棲、就活。いつでも二人で一緒にいた20代のぜんぶが、ずっと楽しかった。猛スピードで加速する恋の忘れられない〈最高の5年間〉を描く、不滅のラブストーリー誕生。

 うるせぇ〜〜〜。なんだこのあらすじ。明大前なんて足の短けえ男と足の短けえ女しかいないんですけど。足の短けえラブストーリーしか誕生しないんですけど。

 市街地にあるガスタンクを撮影するのにハマって3時間の無声映画を作ってしまう系男子の麦と、国立科学博物館のミイラ展に心躍らせてしまう系女子の絹が出会い、それぞれ好みの音楽や小説が驚くほど一致していることから始まる、甘酸っぱくもほろ苦い恋愛模様を描いた本作。

 あるよね、こういうの。ディテールは異なれど趣味、それもアングラ寄りの自分達だけが共有できる趣味があったときに関係性がより深く進展する感じ、分かると思います。俺も中学生の頃 9mm Parabellum Bullet のCD女子に貸したら次の日クラスの落とし物箱の中に入ってたことあるもん。あれ、これ違うか。違う思い出だ。

 そんな2人が交際をし、大学を卒業してフリーターとなって同棲を始め、宮迫博之のyoutube戦略のように甘い甘い日々を過ごしていきます。しかし2人の関係は親からの仕送りが止まったことで、真剣に就職活動を始め、徐々に移り変わっていきます。

 この映画で特に性格が悪いところは前半で2人が意気投合していくところを冷笑的に描いていく点です。「好きな言葉は…バールのようなものです。」とか「グーがパーに負けるのはおかしい!」とか、2chまとめで得たような浅いセンスをひけらかし、絵に描いたようなサブカル大学生あるあるを踏襲することで、観ている側に2人への感情移入の隙を与えず、我々は否応なく2人を小馬鹿にするポジションに立たされます。「ほら、こういう奴らってダサいっすよね」と1本1本ナイフを握らされます。

 しかし後半ではそれらがフリとなって、仕事に追われる麦の姿が、しょうもないサブカル大学生を小馬鹿にする我々の姿、パズドラしかできねえ我々の姿に重なります。「こういう奴らってダサいっすけど、趣味に打ち込むことすらできないお前の方がもっとしょうもねえんだよ!」とさっきまで持っていたナイフが一斉にこちら側に突き刺さってきます。そこに恋愛的なすれ違いが重なり、観ていてとても辛い気持ちになりました。こんなに辛いのはももクロの緑がオタクみたいな医者と結婚して以来です。なんで1800円も払ってこんなに辛い気持ちにならなきゃいけないの?絶対ネカフェで刃牙読んだ方がいいよ。

 だからまあ全体的にはサブカル、あるいはサブカル大学生への肯定なんじゃないかと。「〇〇が好きな自分(達)が好き」という心理状態への肯定。本棚に大判と文庫版のピンポンがあってもいいんだよ、と。じゃあ麦くんはどうすれば良かったのか。どうすれば仮面ライダークウガからの寝取られセックスを回避できたのか。

息抜きになんないんだよ!パズドラしかできないんだよ!

 就職に伴いそれまで楽しんでいた趣味を楽しめなくなっていく麦の気持ち、すごく分かります。人間歳をとると新しいものに興味を持つことって疲れるんですよ。たかだか4分のMVを見るのも100数ページの最新刊を読むのも面倒くさいんですよ。だからずっと同じアーティスト聞いたり、すぐ消費できるまとめサイト読んだり、パズドラやったりしちゃうんですよね。でもそれって駄目だと思います。

 好きなものを好きでいつづけるのって難しいんです。僕はかれこれ15年くらい毎週少年ジャンプを読んでるんですけど、はたから見れば「楽しそうでいいですね」という感じだと思います。でも違うんです。毎週ジャンプを読むのってめちゃくちゃ大変なんです。手の施しようがないニートみたいなこと言ってますけど本当です。もう一回言います。毎週ジャンプを読むのはめちゃくちゃ大変です。昔から読んでるワンピースとかはまだ惰性で読めるんですけど、特に新連載とか読切とか、そういう新しい風を体の中に吹かそうとすると途端に拒絶反応が起き、気がつくとツイッターで浜辺美波の画像にいいねを押しています。あれれ?

 「よく分かんないけどそんなに辛いならやめたら?」と思われるかもしれませんが、駄目なんですよ。やめたら。新連載を読まなくなったらジャンプを読めなくなるじゃないですか。生活を豊かにするのってやっぱり文化だと思うし、その供給元を自ら絶つということは自分の持ってる選択肢を狭めることだと思います。呪術廻戦しか知らないから呪術廻戦を読んでるんじゃなくて、私立ポセイドン学園高等部とかわっしょい!わじマニアとか、そういうクソみたいな打ち切り漫画も読んだ上で呪術廻戦を選択しているということ。そして何よりその自分に自信が持てるということ。これが生活の豊かさに繋がると思います。だから特に、飽き性で趣味が続かないとか言ってる奴。ノー。全然違う。好きでいつづけることなんてほんのひと握りの人間にしかできないんだから、歯食いしばって継続すんだよ!目ん玉ひんむいてジャンプ読むんだよ!ジャンプ+なんか読むな!馬鹿んなるぞ!

 これって人間関係も同じで、大人になるにつれて出会いの場って少なくなっていくし、そもそも人と出会うのも面倒くさくなってしまいます。初対面の人と会ってもなんとなく無難な会話だけして相手に興味がないように振る舞って、仲良くなるという面倒くさい工程を避けるようになっていきます。でもやっぱりこれって良くなくて、限られたコミュニティで得られる知見って限界があるし、偉そうな言い方だけど自分で人間関係を選択しているという実感も得られません。だからまずは、相手にしっかり興味を持ってしっかり自分を主張して、面倒くさいけどそうやって新しい交友関係を確保していくべきだな、って最近よく思います。いつもは喋らないあの子に今日は放課後「また明日」と声をかけたりした方がいいんだな、って。

 話が逸れまくってるけど、だからこの麦くんももっと広く新しいことをして新しい交友関係を築いて、そうすれば良かったんじゃないかなって思いました。やっぱり狭い人間関係って悪化しやすいと思うし、色んな人と交流があった方が相手の良いところもより分かったりすると思うし。大変だけどね。俺だって本当はずっと昔のBUMP聞いてたいよ。ギコ猫のラフメーカーのflashずっと見たいよ。でも昔のBUMP聞いてるとどんどん脳が小さくなっていく気がします。マリファナと一緒ですわあれ。だめだめ。

 邦画を映画館で観たのって本当に久しぶりだったけど、毛嫌いせずにもっと観てもいいなと思える作品でした。これを機に、途中でやめた漫画買い直してみたり、気になってたゲーム始めてみたり、普段話さない人にLINEしてみたり、そういうことをしてみてはいかがでしょうか。それがこの世界の隠しコマンドなのかもしれませんよ。

 無理矢理タイトルをまとめたところで終わります。それでは。

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