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生成AIはまだ間違いを起こすから使い物にならない! に反論する

ソーシャルメディア等で生成AIについての議論が過熱する中、「生成AIはまだ間違いを起こすから使い物にならない!」という意見がよく聞かれます。あまりに多くイライラしてしまうこともしばしば。しかし、この見方は生成AIが持つ可能性と用途を誤解していると言わざるを得ません。今回は、生成AIの有用性とその用途について考察し、よくある誤解に反論します。

生成AIの役割とよくある誤解

まず、生成AIの役割について理解するためには、その設計思想と応用範囲を明確にすることが重要です。生成AIは、主に創造的なタスクや言語の流暢さ、テキストの整形に特化したツールとして設計されています。例えば、文章の校正やアイデアの発想、簡単なプログラムの作成など、クリエイティブなプロセスを支援することができます。これにより、企画書のドラフトを作成したり、メールの下書きを書いたり、日常的な作業を効率化するアシスタントとして活用されています。

一方で、生成AIに対して、検索エンジンのように正確なデータを提供する役割を期待することは誤りです。検索エンジンは、特定の情報を迅速かつ正確に提供することを目的としていますが、生成AIはユーザーの入力に基づき、新たなテキストを生成するプロセスに特化しています。このため、生成AIは時に誤った情報、つまり、「ハルシネーション」を生成することがありますが、これは技術の欠点というよりも、その特性の一部と言えます。

誤解されやすい点として、生成AIが提供する情報の正確性に過度な期待を寄せることがあります。生成AIは、与えられたプロンプトに基づいてテキストを生成するため、プロンプトの質が出力結果に大きく影響します。曖昧な指示や誤解を招く表現が含まれていると、生成されるテキストも不正確なものとなる可能性が高まります。そのため、ユーザーは生成AIを利用する際に、具体的かつ明確なプロンプトを提供することが求められます。

ハルシネーションの原因とユーザーの役割

生成AIが時折「ハルシネーション」と呼ばれる誤った情報を生成することがありますが、これは多くの場合、ユーザーの質、ユーザーの書くプロンプトの質に依存しています。

プロンプトが曖昧だったり、誤解を招く表現を含んでいる場合、生成AIはその指示に基づいて不正確な情報を提供することがあります。また、生成AIの活用方法を誤解しているユーザーがプロンプトを書いた場合も同様です。多くの場合、AIそのものの質の問題というよりも、ユーザーの使い方の問題なのです。

プロンプトは出力結果を見ながら調整していくものであり、一発で理想の回答を求めるのは現実的ではありません。繰り返しの試行錯誤を通じて、ユーザーはより精度の高い出力を得ることができます。

また、生成AIの技術は日々進化しており、ハルシネーションの問題は時間の問題と言えます。ユーザーのフィードバックを活用したモデルの継続的な改善も進んでおり、生成AIの正確性は今後さらに向上することでしょう。

ハルシネーションに対する誤解と対策

ハルシネーションが発生するたびに、AIを批判する人々がいますが、これは生成AIの本質的な価値を見逃しています。上手に活用できている人はハルシネーションが起きることを前提にプロンプトを調整していますし、状況によっては、RAGを活用して、ハルシネーションのリスクを大幅に減らす取り組みなども見られます。RAGは、情報検索(Retrieval)と生成(Generation)の二つのプロセスを組み合わせることで、より正確で信頼性の高い生成結果を生み出す技術です。

公務員業務の専用ChatGPT「マサルくん」などは、外部情報として行政文書をデータベースとして検索させた上で、文章を生成させています。引用元も同時に出力させるなど、ハルシネーションが起きにくい環境を構築しています。

生成AIの現実的な利用方法

生成AIは、特定の用途において非常に有用です。例えば、文章の校正や簡単なプログラムの作成、クリエイティブなアイデアの発想支援など、日常的なタスクを効率化するために利用されています。これらのタスクにおいては、生成AIの柔軟性とスピードが大きな助けとなります。

また、ビジネスの現場でも生成AIは活用されています。特に英語が第二言語である人々にとって、生成AIはプロフェッショナルなコミュニケーションの改善に役立っています。例えば、メールの作成や会議のメモの要約、ドキュメントの初期ドラフト作成など、多岐にわたる用途で利用されています。

生成AIに関する議論の中には、「生成AIが流行るのか、流行らないのか」といった稚拙なものも多く見られます。しかし、こうした視点は生成AIの本質を見誤っています。生成AIは単なる一時的な流行ではなく、既に多くの業界で不可欠なインフラとしての地位を確立していますし、今後10年とかからずに、誰もが使用するツールとなっていくことでしょう。

オンデバイスAIの普及とその影響

オンデバイスAIの普及と共に、私たちの日常に生成AIが浸透します。オンデバイスAIにより、誰もが手軽に生成AIを利用できるようになるのです。今年の秋には、AIが搭載されたデバイスが次々と市場に投入され、私たちの手元に届くことが予想されます。これらの製品は、私たちの生活をさらに便利にし、効率化を促進することでしょう。スマートフォンやタブレット、さらには家庭用電化製品にまでAIが搭載されることで、日常の様々な場面でAIの恩恵を受けることができるようになります。

オンデバイスAIでは、個々のデバイスが独自に高度な処理を行えるようになり、クラウドに依存することなくリアルタイムでの対応が可能になります。これにより、プライバシーの保護や通信コストの削減など、ユーザーにとって多くの利点がもたらされることが期待されています。

まとめ

生成AIは完璧ではありませんが、その可能性を評価し、正しく利用することで多くのメリットを享受できます。ハルシネーションの問題も一時的なものであり、ユーザーが適切にプロンプトを調整し、最新の技術を活用することで、そのリスクを最小限に抑えることが可能です。また、生成AIの真の価値は、そのクリエイティブな応用にあります。適切な活用をすることで、私たちの生活をより効率的に、楽なものにしてくれます。

日本は決してAIの理解が進んでいる国ではありません。ハルシネーションをドヤ顔でソーシャルメディアに晒している人を見ると、「まだここなのか…」とガッカリしますね。

最後に、生成AIを批判することは簡単ですが、その本質的な価値を理解し、適切に活用することで、私たちの生活や仕事において大きな利便性をもたらすことができます。生成AIはまだ発展途上の技術ですが、その可能性を最大限に引き出すためには、私たち自身が賢く利用することが求められます。

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