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映画術 エンジニアと非エンジニアの世界

物語を作る、とらえる手法

いま世界は2つの職業に分かれています。エンジニアと非エンジニアです。エンジニアとは主にコードをかける人全般だけを意味するのではなく、例えば動画の編集をする人や機械の設計、大工などある種の職人など、ものづくりの組み立てを行う人です。

エンジニアは物を作れるので職業としてなくならないと思います。もちろん機械化、AI化によって失われていく職もあると思いますが、その時必要とされるエンジニアリングスキルを身につけるか、もしくは非エンジニアになるかの選択を迫られます。

非エンジニアとはどんな職業かといえば監督や編集者、ウェブディレクター、経営企画、営業、デザイナー、果てはパン屋や居酒屋などの飲食店などエンジニア以外の全ての職業です。そして、この非エンジニアが今後必ず必要とされるのがストーリーテリングの能力です。

ストーリーを伝えるとは

よく商品やブランドにはストーリーが必要と言われますが、オーブントースターがストーリーを持つなんてバルミューダが最初にトースターを作るまで考えられなかったと思います。そしてありとあらゆる食や物事にどんどんストーリーの流れは広がり、トイレットペーパーがストーリーを持つのも時間の問題だと思われるほど、企業活動とストーリーは密接になりました。

ストーリーとは人が生きる上で顕在化されていく志向や趣味なので、どんな場所、物事、人にもストーリーがありますが、ストーリーの強さや伝わり方に差があると思います。同じストーリーでも人に強くわかりやすく伝える技術がストーリーテリングの能力で、これに必要なのは本当に強くストーリーを信じる事とそれを語る技術です。

ストーリーの語り方とは良いものはストレートに伝えれば伝わるんだ、という昔気質で広告、ブランディングの基本ともいえるストーリーの伝えかたもありますが、実は伝え方そのものがストーリーとしての深みのある側面があるのではと思わせてくれるのがこの本です。

映画の手法と語り方

映画とは大概1つのストーリーがあり、それを語る事で成立していきますが、そこにはただありのままを上手に伝えるというよりは、映画の撮り方などでより深くストーリーを伝える方法がある事を教えてくれます。それは例えばジョビンのワンノートサンバが1つの音だけを使って作られているという、音楽的なテクニックと歌詞の意味が複合的につながっているかのような構造です。

映画の中で監督は俳優の表情や動線設計を使う事でストーリーの中に感情をつけ、観客は知らず知らずのうちに俳優に共感し、ストーリーをただ追うのとはまったく別の体験ができるのです。

本の中では具体的に映画のシーンを例に出しながら、俳優の感情の動きや表情がどのような意味をもちストーリーの深みを増しているのかを解説していて、読めば読むほどなるほどと映画の演出の構造に唸ってしまう内容でした。

ストーリーテリングとは物語を見つけて語るという当たり前のことからもう一歩進めるためには、語り方を複合的に考える必要がありその思考法の勉強になる良書です。

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