小児歯科専門医が考える、こどもの矯正治療で一番大切なこと

1歳半や3歳児、学校や園での歯科健診でみられる項目の一つにかみ合わせがあります🦷そこで指摘を受けたり、保護者の方がお子さんの口を見て『歯並びがガタガタで治してあげたい』『かみ合わせが悪そう、なんとかしてあげたい』この気持ちから、歯並びやかみ合わせを治す矯正治療をこどもの時期からスタートしたいと思う保護者の方も多いかと思います。

私も多くの患者さんから相談を受け、実際に治療した患者さんもいます。
その経験から、お子さんの矯正治療で何が一番大切か考えたときに浮かんだのは

『お子さん本人が歯並びやかみ合わせを治したい気持ち』

です。特に反対咬合(咬んだときに上の前歯が下の前歯より後ろにあって下の前歯で覆われている)は理論上、乳歯が完全に生えて咬みあうようになった時期からスタートすることができます。それは平均的に3歳くらいからです。3歳児歯科健診で指摘される方もいらっしゃいますよね。じゃあ治さなくては!と保護者の方は思います。

ただお子さんは治療に対して理解できるのでしょうか?

まずは診断に当たって、お子さんの顔面、お口の中、骨の状態を見るためレントゲン撮影やお口の模型を作るに当たっての型取り(ピンクのねんどを口に入れる)をする必要があります📷
このねんど、むし歯で銀歯や被せ物の治療をした方なら経験あると思いますが、結構苦しくないですか?💦しかもそれを全部の歯を型取りするため、お口いっぱいにピンク色のねんどが入ります。固まるまで1.2分ほどかかるのでお口いっぱいにねんどを入れたまま、ジッとしてもらいます⏰これは診断の前もですが、装置を作るとき(既成の装置を使う場合はやりません)、装置による治療が終わった時の評価のためにと1回では終わらないんです。まずこのように少しの時間ですが、お子さんが苦しいと感じることを乗り越えなければなりません💪お子さんの中には吐きやすかったり、口呼吸の癖で鼻呼吸がうまくできなくて失敗する可能性もあります💦特にかみ合わせに問題のある子はそのような傾向にあることも多いです。その苦しい思いをしてまで、果たしてお子さんは治したいという気持ちがあるでしょうか?

…今自分で書いていて『こどもの矯正治療に否定的なのか』と思われるかなと思ってしまいました😨決してそんなことはありません🙅‍♀️**
お子さんの時期から治療することによるメリットがあります🙆‍♀️実際その年齢で治療した子を何人も診てきました。私が伝えたいのはお子さん自身に治したい気持ちがないと、上記のような事は乗り越えるのは難しい、ということです。**

また、お子さんの矯正治療で使用する装置には取り外し可能でお家で管理してもらう装置もあります🏠色んな装置がありますが、小さく見えても実際お口の中に入れると最初は違和感がたっぷりで、慣れるまでに何日かかかります。お口って髪の毛一本でも入ると違和感がありますよね?それくらいお口の中は敏感なんです⚡️
装置がお子さんでも取り外しできるため、めんどくさかったり付けるのがイヤになって自分で外してしまって、指示されたように使用しない結果、治療が長引いたり装置の効果が得られず、治療計画が変わってしまうこともあります😨**
矯正治療は特殊な症例でない場合、基本的には保険診療でなく
自費診療なので、変な言い方ですが下手をすると高いおもちゃ**となってしまいます💰

そして期間です⏰こどもの時期からスタートし、永久歯を全て綺麗なU字に並べることを目標とした場合には、1歯ずつコントロールして歯を並べる装置(代表的なのがブラケット治療、銀のつぶつぶとワイヤーがついた矯正治療)を使用するのですが、基本的に全て永久歯が生えそろってからでないとを使うことができません。そうするとトータルでの治療期間は何年にも及ぶこととなります。
そこまでモチベーションを維持することができるのでしょうか。
実際はだいたいの子が最後まで辿り着けています。しかし中にはイヤになってうまく進まずに中断したり、自ら装置を壊してしまったり、思春期で保護者と大喧嘩して中断、という子もみてきました💦

何度も言いますが大事なのは『お子さん自身の治したいという気持ち』

もちろん歯科医師からしっかりとお子さんと保護者の方に説明しますが、おうちに帰ってお子さんと保護者でじっくり話し合うことが大切かと思います。
そのことをお子さん、保護者しっかり理解した上で歯科医師も一緒に共に頑張って、綺麗な歯並びになれるよう歯科医師は全力を尽くします!

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