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常温の日常を上手い具合に料理して

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「伝達物質の楼閣を建設できたら、次は道連れに君の番だ。ダーツを思い切り引いてご覧。中央テーブルを狙って暴動を押すんだよ」
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「統覚を頂上において砂崩しをしようか」
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 あるものはあり、あらぬものはあらぬとはよく言ったものだが、デモクリトスがその言を鼎立させ、やがて帳は身を投げた。踵を返す返す素振りを入れ、新たな時代の幕開けだと匿名希望の希死観念が黒電話を廻し続けた彼は今、寝台列車と隧道を抜けて雪国へと赴いた。座す小説家の思考を味噌漬けにし、カップケーキと共通集合のゴーレムを楽に溺死させます。個別対応プログラムは旧態依然として耳鳴りの響きから逃れられない。
 常温の日常を上手い具合に料理して。

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