ミニマルな小説⑦ゆき合戦
三日三晩続いた合戦は今日で終わる
僕の住む村では
昔からの風習で
結婚を認めてもらう為に
新婦の父親と
三日三晩
新婦をかけて合戦を行う
人によっては
1日目で新婦の父親が勝ち
結婚が破談になってしまう事もある
どちらも本気だ
合戦の内容は
新郎の僕と僕の友達9人
合計10人で
新婦の父親と親戚9人
合計10人と戦う
三日三晩どんな方法でも構わない
新婦の父親を倒して
新婦を助ける
それがルールだ
因みに倒すといっても
本当に倒し合うのではないので
安心して欲しい
白いボールを当てたら
相手は倒された事になる
しかし
数百年続いてきた風習なので
攻撃の種類は出尽くし
近頃では
失敗してしまう新郎も多くなってきた
そして今日三日目
最後の日
残る味方は
僕1人だけ
敵は
新婦の父親と新婦の兄だ
残り1時間というところで
新婦の兄に白いボールを当てた
残るは新婦の父親
そこからもう直ぐ1時間
見つからない
残り5分
時間が過ぎても
失敗になる
僕は悩んでいた
その時ある事を思い出した
新婦に教わった
父親との思い出の場所
僕は向かった
ついに見つけた
新婦と父親の思い出の場所
新婦の母親が眠る場所
僕が歩み寄ると
振り返る新婦の父親
笑顔でこう言った
「娘を頼む」
僕は白いボールを投げ
合戦は終わった
新婦が待つ新居に向かった
結婚が決まると村から用意してくれた
新居に住む事になる
インターホンを押した
新婦がドアを開け出てきた
「お帰り」
「ただい…」
「いや…」
『ゆき、僕と結婚して下さい』
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