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遠ざかるエレガンス

連休初日、乗った電車が朝のラッシュ時並みに混雑しており、いきなりゲンナリした気分になる。ラッシュ時だったら、どの人もさっさと歩くが休日は道ゆく人の歩みがのんびりしすぎているように感じて妙に気になる。電車を乗り換えた時は、扉が開いた途端に席取りに走る人を見て思わず眉間に皺が寄った。

なんだって、私はこんなにイライラしているのかしら? 
気持ちに余裕が無い。自分でも分かっているのだ。

以前、イタリア帰りのオペラ歌手から、落としたものを慌ててすぐに拾おうとして注意された話を聞いたことがある。

「そんな風にせかせか拾うのは、エレガントではないわ」

ちいさな動作ひとつにも心を配る。そこに意識を向ける。注意を払う。それらは一呼吸置くだけの余裕、ほんの少しでも余裕がなくてはできないもの。それを日々積み重ねていく。そうすることで佇まい、姿勢、すべてにエレガンスが宿る。

真のエレガンスとは思いやりと敬意。

誰の言葉だったか忘れたが、若い頃に読んだ本に書かれていて、印象深く心に刻まれた言葉だ。
余裕がないと持つのが難しいもの2つ。
余裕がなくとも持っていたいもの2つ。
エレガントでいたかったら、最低限心がけるべきは心の余裕なのかもしれない。

朝の雑踏の中で、あまりの自分の余裕の無さに笑いが込み上げ、エレガンスから遠ざかってしまったと、そんな風に思った。忘れてはいけないのだ。「心に響くエレガンス」とは、生きている限り私の目指すところなのだから。