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2021年11月26日の帰り道。

ウソっ!

2021年11月26日。
今日が寺岡二等兵の最終出勤日。。。


今日で最後だ。
現実感が無い。
そうこうしてるうちに
退職挨拶のEメールが流れる
執務室にて退職のお菓子を配る寺岡
執務室にて退職の挨拶をする寺岡
皆で拍手ともに送り出される寺岡

あとは、コロナ禍のため
チーム内だけでささやかな送別会が行われるだけだ。

ファーストコンタクトは、数年前の歓迎会。
エントリーシートを見て来る前から
『暴れる君』という
二つ名を付けたのも、今では良い思い出。


会議が遅れ、一人送別会会場へ急ぐ。
帷が落ち肌寒い喧騒の中を
少しだけ足早に歩く。
今日は飲むぞ と気合を入れつつ
コンビ二でウコンを買う。
少し早い忘年会シーズンか
大学生やサラリーマンに紛れ
警察官の姿が少しだけ多く感じる。
物騒だなと思いつつ
定刻に少しだけ遅れて会場に到着した。


わたし
『いざっ!』

扉を勢いよく開ける!

わたし
『やっぱ!』

わたし
『ムック?』

一同
『ガチャピン!』

寺岡のガチャピンを見るのは一度や二度ではない。

わたし
『知ってる(笑)』

一同
『ムック!』

わたしのムックはこの日のために取っておいた!

わたし
『似合うでしょ!(笑)』

のんたん
『さ・す・が・♡』

高林
『間違えずに買えたんですね(笑)』

わたし
『赤いほうください!で楽勝だったよ!』

寺岡
『ありがとうございます!であります!!!』

のんたん
『電車で来たんです?♡』

わたし
『そんなバカな!コンビニで着替えたんだよ!』

高林
『いきなりトイレから出てくるほうが、罪が重いやつですよね(笑)』

のんたん
『だよね♡』

忍者『・・・・・』

寺岡
『とりあえず飲みましょう!であります!!!』

わたし
『かんぱーい!!!』
『あとで  Lemon を歌うぞ 寺岡!』

寺岡
『イエッサー!!!であります!!!』

「うぇ!」とか言いつつ踊り狂う
「うぇ!」とか言いつつ踊り狂う

楽しい時間はあっという間に終わってしまう。
寺岡伝説の半分も語れない。


わたし
『魔法が解けちゃう!そろそろお開きだ!』

寺岡
『みなさん!今まで本当にありがとうございました!であります!!!』

一同
『頑張れよ!』
『元気でね♡』
『〇〇〇よったら呼ぶわ!』
『  ・・・・・!』


さすがにガチャピン、ムックはまずい。
個室で服を着替え会計をすまし扉を開け店を出る。
店内の熱気をよそに外は寒い。
わたしは、寺岡にムックをそっとプレゼントする。

わたし
『次の会社の上司に着てもらえ(笑)』
『そして一緒に Lemon を歌ってもらえ(笑)』

寺岡
『あざーす!であります!!!』


わが町  唯一のスクランブル交差点
名残惜しさで青信号を2回見送った。

一同
『さようなら!』

みなそれぞれの方向へ歩き出す。
わたしと寺岡は、会社へ向かうために
駅に向かい最終電車に乗りこむ。
寺岡は単身寮、わたしは車通勤だからだ。
最寄り駅に到着し、わたしは代行運転を頼む。
少し混んでるようだ。

会社を通り過ぎるかたちで、それぞれの目的地にむかって歩き出す。


会社からの帰り道。
それは、いつもの帰り道。
いつもの他愛のない会話。
いつものくだらない会話。
薄暗い路地を二人でゆっくりと歩く。

わたし
『寺岡、さようならの語源を知ってるか?』

寺岡
『知らないであります!!!』

わたし
『もともと

〇〇〇〇〇を踏まえて、さようであるならば、
〇〇〇〇〇だ。  という、文章なんだよ。

それが、 「さようであるならば」  だけではなく
前後の文章まで略されてね   

 「さようなら」   となったんだよ。

接続詞をね、、、別れの言葉とするのは、
日本語ぐらいなんだよ。』


吐く息がかすかに白く見えた気がする。
チカチカと点滅する街灯に映しだされるタバコの吸殻をじっと見つめる。
いつものことだが、
車幅感覚が狂ってる寺岡と微妙に腕が触れる。
その布ずれ音だけが静かな路地では、はっきり聞こえる。
わたしは続ける。


わたし
『例えば英語だったらね

・Good bye  神に願う。
・See you later  再会を願う。
・Farewell  健康を願う。  とかね。

明確に願いが込められるもんなんだよ。
この願いを込める別れの言葉は、他の国もだいたい同じなんだよ。

だからね、接続詞を使う日本語はとても珍しい。
これはね。文化の違いなんだよ
日本人の別れに対する考え方と奥ゆかしさの表れなんだよ。』


いつものことだが、
寺岡は明らかにわたしのATフィールドを侵食している。
寺岡にショルダーをくらわし、わたしはパーソナルスペースを確保する。
寺岡は水を飲む。
わたしは、それを見て話を続ける。


わたし
『本当はね。こう言いたいんだよ。
別れに際しこれまでを振り返り、さようであるならば、この先もきっと大丈夫。』

息継ぎをする

わたし
『つまり、その状況を互いに察しあい、言葉にしなくてもわかりあえる。
昔の人たちは、すべてを言葉にするのは野暮って考えていたんだよ。』

寺岡
『この先もきっと大丈夫という願いや祈りが込められているのですね。』

寺岡
『。。。。。。』

寺岡
『 僕 と  わたしさん  の思いは一緒なんですかね?』

わたし
『かもな(笑)』

わたし
『さ・よ・う・な・ら  だよ(笑)』


寺岡
『。。。。。。』

寺岡
『。。。。!』

寺岡
『さ・よ・う・な・ら  ですね(笑)』

寺岡
『新しい会社は、リファラル採用も行っていますので、紹介しますよ。(笑)』

悪い笑顔だ。

わたし
『さようか(笑)』

歩きなれた帰り道。
歩きなれた交差点。
それぞれ、寺岡は寮へ。
わたしは駐車場へと分岐する交差点。
今日は分水嶺となる交差点。

『お疲れ』
『お疲れ様であります!!!』


今日はやけに冷え込む。
ネックウォーマーに顔を深くうずめる。
時計を確認し、歩調を早める。
振り返りはしない。

今日はやけに代行運転が遅いと感じる。


#寺岡最終出勤日
#さようであるならば
#ホームパイ
#ウソッの宇宙

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