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第7波後のコロナ感染状況2

 GISAIDの日本バリアントレポートによれば、第7波からの日本のコロナ感染は、背景にBF.5型、BA.5.2型、BA.5.2.1型3種の国内成長型変異株が主流を形成してきたとあります。他にも変異株が数種がありますが、この3種の壁に阻まれて未だ感染の主流には至っていないのが現状と思われます。
 この3変異株種なるものは、専門分野がウイルス遺伝子解析から得られた結果ですが、ウイルスが単独ならまだしも3種揃っての感染となると、複雑にからみあった感染のどれがどの変異株に相当するものか見当つかず惑うばかりです。とりあえず感染のタイプ化が必要と思い、当シリーズ2022/12/14の「都市人口依存型コロナと変異種」でタイプ化を試みましたが、行き届かないところも多々あり、「第7波後のコロナ感染状況2」として再度検討することにしました。
 3変異株による覇権体制が何時まで続くか分かりませんし、新たな感染波による新たな覇権が形成される前に、第7波からpost第7波に至る過程を3変異種との関連で整理しておかねばと思っています。

 図1は、感染のタイプ化に必要な感染情報を整理する上で使用していた私個人の便利帳のごときものです。 
 タイプ化にあっては、今回も第7波に始まるP1、P2のピーク成分と、post第7波にあって北海道を襲った正体不明な感染波形を表すP3成分の3要素を基本としました。というのも、既に「都市人口依存型コロナ感染と変異種」で、P1波形成分は大都市圏を中心に大流行したBF.5型変異体が中核と推測され、P2波形成分は都市人口依存型感染で勢力を伸ばした中小都市圏型感染感染のBA.5.2型変異体が中核と推測し、グラフ波形と変異株の関連におよその整合性を認めていたからです。北海道に厳しい感染をもたらしたP3波形成分が、3変異株中のBA.5.2.11型が中核と推測され、この波形が北信越地方に波及していることも(図1の中列,右列の1、3段目)、この分類での検討を進める根拠になりました。

   図1:第7波のブロック別感染線者数(左)、各ブロック内の第7波
       ~現在までの感染者数(中)、及びpost第7波の感染者数

*下方向の矢印線は第7波の収束を判断した期日
*左列グラフ凡例で全国死亡者数と誤記、2023/1/30全国感染者数と訂正しました。
*訂正と同時に期間設定を伸ばし2023/1/30としました。文意に訂正事項はありません。

 図1の左列グラフで、全国(青面グラフ)を基準として8行政ブロックごとの感染者数(赤折れ線)との比較検討し、中列でその比較判定の妥当性を確かめ、右列でpost第7波後のP3波形成分判定の妥当性を確かめました。
 3列のグラフから3要素を基準に選んだタイプ化の手順と結果を以下の①~③にまとめました。
 ①:P1成分優位は、左列グラフでは関東ブロックのみでした。中列グラフの都道府県グラフで、P1>P2は同ブロック内では東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の4都県が該当し、関西地方では兵庫県、京都府がP1>P2が明らかでした。大阪府は異型なものの兵庫、京都両府県グラフから判断してP1>P2と判断しました。九州ブロックの沖縄県がP1>P2であることが中列グラフで分かり、2023/1/8現在で国内P1優位型は、計8都府県でした。
 ②:中列に見る中国、四国の2地方でのP2ピーク形成は、単極化が顕著でP1が関与する形跡が殆ど無いといってもよいくらいです。これは「都市人口依存型コロナ感染と変異種」と同様の結果でした。九州ブロックから沖縄県を除きますと、波形は中国、四国地方に酷似します。関東、関西の両地方5県に見られたP2優位の5県と残る地方のP2優位型を合わせ、P2優位型県は計39道県でした。
 ③:39道県の内、post第7波のp3成分優位は、中列と右列のグラフから北海道と東北6県以外に北信越地方の新潟県、長野県、山梨県で認め、計10道県が該当と判断しました。北信越の富山、石川、福井の3県の感染波形は中部地方の影響が強くP2型と思われ、北信越という私の行政ブロック化案に再考の余地を残しました。
 以上の結果から、2023/1/10現在のP2優位型は29県となり、①、②、③の感染状況を要約しますと表1となります。

         表1:第7波~2023/1/10現在までのP1~P3型の感染状況

    都道府県数    人口   感染者数  死亡者数 感染率      死亡率
    P1型:               8       54545      9100496          10827    16.68%     0.119%
 P2型:              29    52930      9252372          12835    17.48%    0.139%
    p3型:             10     19597      3084665           5291    15.74%     0.172%
        
    *期間は2022/6/12~2023/1/9、人口は*1000です。
    *P1型:東京,神奈川.埼玉,千葉,大阪,兵庫,京都,沖縄    (8都道府県)
    *p2型:上下の都道府県を除く(29県)
    *P3型:北海道,青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島,新潟,長野,山梨(10同) 
                               
         図2:上記期間内の全国感染概況

期間は表1に同。                    
     右図の死亡者数ピークと感染者ピークとがほぼ同期なのに注意。

 図2は、表1を評価、判断する際の前提となる全国の感染状況です。
 図2左側では、大都市圏感染者数と中小都市圏感染者数が併行する時期が続いています。これが続く限り、都市人口依存型感染は続いていることを示しています。期間中の波形は整っており、冒頭に述べた3変異株以外の幾つかの変異株、あるいは外国からの新たな感染波が侵入してきた形跡はありません。このことは、国内発育型の3変異種の覇権が未だに続いていることを示していると推測されます。一見穏やかに見える感染波形ですが、実際には東北北海道地方の感染が一段落すると九州ブロックでの感染が再燃し、2023年に入り関東、関西ブロック等での感染再燃を認め、経過は複雑です。
 図2右側では、第7波の死亡者数ピークに従来通りの感染者数ピークとの「ずれ」が認められますが、post第7波の右端に見る両者の「ずれ」は僅少なのが注目されます。立ち上がりが第7波ほど急峻でないからと思われますが、今後の検討を要する課題と思われます。また波形上の傾向ですが、死亡者数増の傾向が感染者数増を上回っているかに見えます。背景には中小都市圏での死亡者数増があることを推測させます。右図右端にみる感染者数と死亡者数の厳しい上下動は、年末年始休暇による rebound が推測されます。
 この図を見る限り、感染増悪傾向に何時ストップがかかるのかの予測は難しい現況と思われます。 

 図1を基にして表1を見ますと、P3型の死亡率高値は、北海道のpost第7波の感染暴発の重篤性を説明している可能性を推測し、またP2型の感染率からは現在も進行が止まらない都市人口依存型感染を感じないわけにいきません。今後もP2型が勢力を増し、死亡率の上昇が避けられない可能性が推測されます。勢いを失いつつあるP1型の大都市圏型感染は、今後のコロナ感染経緯を予見し得るものではなくなりつつあります。感染状況の全国的な進行状況を見極めるべき状況が暫く続くと思わざるを得ません。

 感染のグラフ上の時期的発生順を見ますと、古い順にP1型、P2型、P3型が推測されます。GISAIDの日本バリアントレポートの変異株命名にあっても、BA.5型、BA.5.2型、BA5.2.1型の古い順からの命名となっています。私どもが示した各タイプが変異型と即同一とは断定できませんが、P1型、P2型、P3型のそれぞれが、BA.5型、BA.5.2型、BA5.2.1型の各変異株をその中核としている可能性を推測しています。 
           
                 2023/1/10
                 精神科 木暮龍雄




  
   





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