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都市人口依存型感染と第8波

 第8波について情報が飛び交っています。不勉強な私も、あれこれと整理しなければと思うことが増え、老いた脳に厳しい表計算が続きます。

 東京都健康安心研究センターの「世界の新型コロナウイルス変異株流行状況」は、貴重なコロナ感染情報源として私が重要視するものの一つです。同サイトによれば、アメリカでは日本でも主流のオミクロンBA.5.2.1型が数週間前から衰退し、BQ..1.1型に置き変わったことをグラフで紹介しています。日本のコロナ感染は、オミクロン株BA.1型以来アメリカ仕立てで終始してますから、私が第8波を予想するならば、BQ.1.1型はその筆頭候補になります。 
 既に神戸、埼玉でこの型のウイルスが遺伝子解析で確認されています。同研究センターが紹介するグラフでは、2022/11/13現在の日本での主流は、第7波以来のBA.5.2.1型(現在ではその亜型のBF.5)が頑張っていて、BQ.1.1型が主流になるのは未だ先の話のようです。私としては経過を見守る以外にありません。
 コロナ検疫無しの入国もある日本ですから、世界に数多ある新たなウイルス株の一つを、旅行客が運び込んで来てそれが第8波となる可能性も無いわけではなく、私には2年前の第3波の苦い経験が忘れられません。

 グラフ波形上の判断ですが、第7波は2022/10/10に収束したと思われます。これからは第8波が、何時、何処に来ても不思議ではありません。その前に私どもの現在地を、第7波収束前の2022/10/1から現在までの行政8ブロックの感染者数、死亡者数をグラフにして示したいと思います(図1)。

         関東ブロックと東北ブロック以外の感染状況は比較的平穏な様子に注目
                       死亡者数グラフの第7波収束矢印線は、感染者数グラフに準じたものです  

 図1上段グラフは、第7波収束を契機にして感染者数増加が全てのブロックに認められ、感染再燃が全国に及んでいることを明らかにしています。関東ブロックと東北ブロックは、日本を南北に分断するかのようして1、2位を占めます。感染が東北北海道に偏倚し九州ブロックでは激減するコロナ感染について既に述べましたが、その傾向は第7波収束後も続いていることをグラフは示しています。
 図1下段グラフでは、死亡者数が感染者数増に遅れて増加するのは、従来の感染各波と同様です。注目すべきは、2022/11/4頃から関東ブロックと東北ブロックの死亡者数が逆転し、関東ブロックに次いで多かった関西ブロックを東北ブロックは抜き去り、東北ブロックと関東ブロックが1,2位を占めたことです。あたかもコロナが東北北海道ブロックに集中攻撃を浴びせ、関東ブロック以南では休戦状態としているかのようです。
 上下グラフは、日本のコロナ感染状況の現在地を示していますが、上下グラフ共に新たな感染波出現を推測させるものは認められません。

 けれども、関東ブロックと東北グロックの感染者数激増の現状を見て、第8波が既に日本に侵入しているのではと推測するサイトも多数あり、現状に医療破壊再来を懸念する声を聞くほどです。北海道の現状を見れば、当然確かめておかねばと思い、図1で突出している両ブロックを代表する東京都、北海道の感染者数と死亡者数推移をグラフ化し、図2として検討しました。

      図2:北海道と東京都の第7波収束後の感染者数、死亡者数 

 図2上段グラフは、都市機能に依存していたコロナ感染(=大都市圏型感染)が、都市人口依存型感染(註1)に変わることによって北海道の感染者数が激増し、東京都の感染者数増スピードを超えて等しくなった現実を示しています。人口2.5倍の東京とほぼ同数の感染者数を北海道が対応しなければならないとは、北海道にしてみればまさに災難としか言いようがありません。感染者数の増加は、その結果が死亡者数に現れるのは必然ですから、図2下段の2022/10/1~2022/11/25の期間内の感染者数に対する死亡者数比は、東京都で0.09%、北海道0.33%となり、北海道は東京の2.5倍となります。東京よりも遥かに感染過疎地である北海道ですし、北海道の医療余裕は東京都並みとはいきませんから、必然的な死亡者数激増に同情を禁じ得ません。都市人口依存型感染は北海道に厳しい惨状をもたらしたといっても過言ではありません。   
 註1:都市人口依存型感染については、当シリーズの「第7波」、「第7波の終焉」を参照頂ければ幸いです。

 都市人口依存型感染を考慮しなければ、北海道に第8波出現を推測するのも分からないではありませんが、都市人口依存型感染による感染者数、死亡者数の増加は、北海道に限らず所謂感染過疎地に共通していることを図3で示します。

    図3:第7波収束後の各ブロックの感染者数と死亡者数推移

黒矢印線はグラフ上第7波収束を判断した2022/10/10
          波形は全てデータを7日加算平均して作成                                                  
               スケールは各ブロックで異なる場合があることに注意                                  
                    第7波死亡者数が第7波収束後に及んでいる場合もある                              

 図3は、感染者数の増加が全ブロックに及ぶことを示しでいます。大都市を抱えるコロナ浸透地(図の右列)では、第7波以降は死亡者数が比較的平坦に移行しているのに対し、コロナ感染過疎地ブロック(図の左列)では急増を認めます。スケールの違いから図1下段グラフでは表し仕切れなかったためと思われますが、死亡者数激増は決して東北ブロックや関東ブロックだけではないことを留意する必要があると思われます。
 
 感染収束後は、従来ならばグラフ上の底上げ層に入り、各波(株)の感染者数は平坦化する傾向を示したものでした。第7波後の都市人口依存型感染下では、平坦化は感染者数増、死亡者数増より遅れて出現すると推測しています。当然、「何時まで都市人口依存型感染は続くのか」が問題となりますが、初めて経験する感染様式ですので具体的な目安を私は持ち合わせありませんが、とにかく増加一途の関東、東北ブロックの感染者数推移が多少でも減少に転じればと思う現在です。図2の東京都と北海道の直近の感染者数、死亡者数共に変化が見られ始めていますので、良し悪しは抜きにして今後を注意深く見守る必要があると思っています。

 都市人口依存型感染が進展して感染者数、死亡者数が増大した可能性が大とあれば、その衰退は当然感染者数、死亡者数の低下を促す筈で、それを見届けるには尚1~2週間ほどの経過が必要と思われます。この間にそうでない事態を迎えたら、第8波かさもなくば本邦第3波の如き新たな感染波の侵入を疑う以外にありません。

       図4:第7波収束後の都市規模別の感染者数推移

 図4は、同期間内の全国の都市規模別感染者数のグラフです。簡単なグラフですが、大都市圏感染者数=中小都市圏感染者数→都市人口依存型感染者数とする私としては今回のメイングラフです。
 都市人口依存型感染は第7波収束後も続いています。図中の大都市圏感染者率51%、中小都市圏感染者率49%の期間内の区分表示は、第7波の総括的区分表示である大都市圏型57%、中小都市圏型43%と比べると6%の減増です。つまり第7波後の都市人口依存型感染は中小都市圏で急速に進展していることを示し、右肩あがりの図4グラフは、この傾向に暫く堪えねばならないことを示唆しています。
 しかしグラフ上の直近は、大都市圏(青)と中小都市圏(赤)共に増大しながらも両感染者数間隔が空き、先端は微妙に変化しています。両都市圏が僅差で平行している間は都市人口依存型感染は持続しますが、感染が進行中であることを思えば、両都市圏のいずれかに偏る可能性も当然あり得ます。私から見れば、このグラフに今後の感染行方を予測し得る可能性を推測するもので、その視点で感染者数推移を注目したく最後に掲げた次第です。

 大都市圏を含めた都市人口依存型感染の全国的浸透が、日本国を東西に分断する如き傾向に及んでいることを述べてきました。一方、今や新たな感染(第8波)が足元まで及んでいるのも現実です。都市人口依存型感染が強固な間は、第8波の侵入を防ぐ少なからずの可能性を期待するものですが、最悪の場合、都市人口依存型感染と第8波というダブルスタンダードで対応する事態もあり得ると推測しています。それは、日時、感染者数、死亡者数、都市規模、行政ブロック等の限られた変数で、両者を見分けていかねばならない困難な感染状況と推測しています。
 

 追補 1
 図2下段の東京都の死亡者数推移の平坦化は、北海道の死亡者数激増とは逆の意味で同等の注目に値すると思われ追補します。東京都の第7波収束後のコロナ致死率0.09%は、日本におけるインフルエンザ致死率にほぼ等しく、第7波致死率0.11%より低値の平坦化です。一方、感染者数増はあっても死亡者数平坦化の九州ブロック、関西ブロックは、私の感じではコロナ明けまっしぐらの印象があります。死亡者数平坦化の東京都も遅かれ早かれ九州ブロックや関西ブロックに続く可能性を期待を込めて推測しています。 
 追補 2
 都市人口依存型感染について説明不足をご指摘頂きました。有難うございます、当シリーズの「第7波の終焉」で追加説明し、本文中にも変更した「第7波の終焉」をご参照頂きたくお願いをして追補としました。
  追補 3
 第7波の大都市圏感染者率56%→57%、中小都市圏感染者率44%→43%に訂正し、6%の減増に訂正しました。

                  2022/11/17   
                  精神科 木暮龍雄



                  


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