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都市人口依存型に進化するコロナ感染

 新型コロナ死亡率がインフルエンザ並みになると、安心して気が緩みます。感染者数や死亡者数増減への注意は下降し、メディアの関心も次なる感染波予想に向かいます。けれども、感染収束の兆しらしきものはなく、繰り返す感染が何時まで続くのかの不安は続きます。どのような視点で感染現状を見るべきか惑いますが、こんな時は、感染波形のグラフを眺め、時間軸を伸ばしたり縮めたりして状況変化の意味合いを探ることにしています。

         図1:第7波と都市規模別の感染者数

         *グラフは上下図とも7日加算平均データで作成          
            *上段オミクロン株の3相は、検疫結果からBA.1、BA.2、BA2.12.1型と推定
                       *上段グラフの第7波部分を拡大して下段グラフへ               

 オミクロン株から第7波に至る過程を私なりに以下要約してみました。
 図1のオミクロン株3相の中間相辺りで(赤矢印1=2022年5月頃)、大都市圏型感染が中小都市圏型感染に移行し始めたことを示してします(赤矢印1~2)。この移行は新たな第7波の侵入で一旦大都市圏型感染に戻りますが(赤矢印2=2022/8/8)、その間も中小都市圏型感染者数は増え、大都市圏型感染のピークに連続した第2のピーク形成に至ります(上段赤矢印線2~3=2022/8/22)。赤矢印3に至る過程で、中小都市圏型感染者数は大都市圏型感染者数に近づき、ピーク時には両者はグラフ上ほぼ等高となります。赤矢印3以後は両者の感染者数はほぼ同数で経過し、それを維持して第7波は終焉します(赤矢印4=2022/10/10)。
 ちなみに両者の人口比は1.2:1でやや大都市圏型が多いのですが、赤矢印3のピーク以降はグラフ上で両者はほぼ同高、時に丈比べをしながら増減して経過します。このことは、両者がその人口比におよそ準じた感染者数で進行することを推測させるものでした。

 結局のところ、中小都市圏の感染者数拡大は、感染が都市人口依存型に落ち着くまでの過渡的減少であって、感染の大きな流れは、大都市圏型感染から都市人口依存型へと変化してきたのではと思われます。注意したいことは、大都市圏内部においても人口数差があり、人口数が少ない地域では都市人口型感染は進行することです。中小都市圏だけが都市人口型感染に移行するわけではないのは当然です。

 都市人口依存型感染が、新たな感染波によってもたらされた可能性を検討しておかねばなりません。
 中小都市型感染が出現したのは、BA.2型感染期ですが、短期間でBA2.12.1型感染に移行します。BA.2.12.1型感染は、生憎と日本では米国を検疫対象から外したこともあって、短期間で国内終了を迎えます。しかしながら、BA2.12.1型感染でも大都市圏型と中小都市圏型の感染者数はほぼ等しくなる都市人口型感染に一過性ながら移行していることをグラフは示しています。感染力絶大な第7波のBA.5型感染に入りますと、初期に一旦大都市圏型感染に戻りますが、再び都市人口依存型感染に戻りそのピークを形成します。この経過は、ウイルス型が違っても大都市圏型から都市人口型感染への移行は続いていると推測されます。都市人口依存型は、コロナウイルスの型種に関わらずコロナ感染の大きな流れの過程で出現したものと推測されます。

 大都市圏型感染が都市人口依存型感染になると、当然のことながら感染過疎地に増加する筈です。これが証明されないと都市人口型感染の出現は受け入れられません。
 表1は、デルタ株感染が、オミクロン型感染、第7波等を経て全国的に拡散浸透する状況を数値で表したものです。

    表1:行政ブロック別の人口、感染波、感染者数、感染率

*表1は、エクセルで作成したものを転写したものです。                    
*九州ブロックは、デルタ株までは感染過疎地でしたが、第7波では感染浸透地です。


 表1のデルタ株感染者数は、関東、中部、関西、九州の各地方で感染者数は増大し、中小都市圏の感染者数増加を上回り、典型的な大都市圏型感染であることを示しています。
 関東、中部、関西、九州の4ブロックは、人口も多く中核都市を中心に幾つかの衛星都市で囲まれ高い感染率を示し、第7波に至ってそれぞれ強大な「感染浸透地」になったことを示しています。一方、デルタ株時の東北、北信越、中国、四国の各地方は、人口数も少なく感染者数、感染率も低く「感染過疎地」ということになります。感染過疎地=中小都市圏と即断しているわけではありませんが、4過疎地の感染率を赤く表示したのは、デルタ株からオミクロン株に至って人口あたりの感染率が10倍、オミクロン株から第7波に至っては2倍で感染者数が激増しているのを見ますと、その経緯が図1による都市人口依存型を介しての感染を反映していることを推測させます。

 表1のオミクロン株期に入りますと、大都市圏型感染は崩れ始めます。大都市圏(淡青色)から中小都市圏(濃青色)へウイルス感染が浸透し始めた図1の下段図はそれを如実に表していいます。感染過疎地であった東北、北信越、中国、四国でのオミクロン感染者数の激増は、ウイルスの流れが大都市圏には向かわず、中小都市圏に向かっていることを思わせます。
 第7波期の感染過疎地の感染率をみますと、溢れたウイルスが感染過疎地に向かう様はまさに感染が「水が低きに流れる如」き感じです。
 
 表1は、第7波になると感染浸透地でも感染者数は増加していることを表1は示しています。感染過疎地も感染浸透地も同じウイルスによる感染ですから、感染率はともかく相応の感染者増加があって必然なことに留意する必要があります。

 以上の感染者数及びその全国的推移は、現在のコロナ感染が都市人口依存型に至る過程を明らかにしているものと思われます。この都市人口依存型の感染が何時まで続くのか、今後何をもたらすのかを注意深く見守りたいと考えています。
 補追:表1のオミクロン株の感染率にミスがあり2022/12/1訂正しました。本論の主旨に支障なかったの訂正し、付随する説明文も若干の修正をしました。 

                  2022/11/11
                  精神科 木暮龍雄



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