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コロナ感染死亡者数が過去最高を持続した背景

 コロナ感染死亡者数が、過去最高を記録する日が続き、社会的な関心が高まっています。致命率が低いのに、何故今頃コロナ死亡者数が最高なのかとの疑問から発したものと思われます。そんな記事の少なからずを読みますと、お決まりの「死者に高齢者や基礎疾患を持つ人が多い」ことをあげ、過去最高の原因があたかもそこにあるかのように述べるものが多いのに気付きます。稀ならず「以下は有料記事だから知りたければ購読者に」と宣うのもありますので、高齢者でもあり幾つかの余病を経験している私にしてみれば、避けようのない不快感を感じます。
 
 都市人口依存型感染によって、ウイルスの主要な矛先が大都市圏ばかりでなく中小都市圏にも向かった感染経過をグラフ化すると図1となります。
 
     図1:デルタ株から現在までの感染者宇数と死亡者数推移

中央の下方矢印線は都市人口依存型感染が始まったと推定されるおよその頃。
都市人口依存型感染は、青、赤の中小都市型感染に鮮明であることに注目。 

 右側の死亡者数推移グラフを見ますと、中小都市圏の死亡者数(赤折れ線)が各株(波)順に増加し、その右端で大都市圏死亡者数を抜いて過去最高に達したことが分かります。両グラフ左端に見るデルタ株期では、大都市圏:中小都市圏の感染者数比は75%:25%でした。感染者数が膨大となった2022年12月のpost第7波では、49%:51%と逆転していますから、今まで大都市圏に向かっていたウイルスの少なくとも25%が中小都市圏に向かい、膨大な量のウイルスが地方へ流れこんで2023年が始まったことになります。
 常識的にも、この25%の感染者数に高齢者数や基礎疾患を持った人が多数を占めていたと考える人はいないでしょう。高齢や基礎疾患は、コロナ感染死亡者の属性であって、その死因とは関係ありません。
 過去最高の死亡者数なる現況は、大都市から中小都市へと矛先を変えた都市人口依存型感染がもたらした結果であることを、そろそろ知ってもらいたいものです。

 私にしてみれば、第7波期よりpost第7波期の感染者数が減少しているにもかかわらず、何故post第7波期の死亡者数が第7波期のそれより増加しているかが問題でした。
 2023年1月上旬、関東、関西両地方の感染(特に東京都と大阪府)が、感染者数、死亡者数の増減に共通性(もしくは連動性)があるのに注目していました。コロナ感染をP1型、P2型、P3型の3タイプに分けた折、P1型に関東4都県、関西2府1県が共に含まれ、変異株BF.5型がその感染タイプの中核と推測していました。共通性の源は、おそらくその辺りではと思い、感染タイプという新たな情報を基にしてコロナ感染の波形化を試み図2としました。

 念のためにP1型~P3型感染を簡単に説明します。
 P1型感染は、第7波の始まりから大都会圏を中心に広がったコロナ感染で、波形上は図2左のピークP1形成に関与し、背景にBF.5型の変異株が中核にあること、
 P2型感染は、同波形上のピークP2形成に関与し、都市人口依存型感染によって関東以西に浸透したもので、背景にBA.2型変異株が中核にあること、
 P3型は、post第7波初期に北海道、東北地方、信越地方に侵入した感染で、同波形上のピークP3形成に関与し、P1型やP2型より遅れてグラフ上に現れ、背景に変異株BA.5.2.1型が中核にあると推測されたものです。

 以下の表1、表2は、投稿後に追加したものです。一回の投稿文としては重量オーバーになりそうなので省略していたのですが、上記説明では不十分に思われ、2023/1/27追加したものです。

感染タイプは感染者数が示す波形上の分類です。
推定中核変異株とは、この期間の国内主流3種をおよその発生順で感染タイプにマッチさせたもの表1、2のP3型の死亡率は、当時の北海道の感染を象徴していると思われます。

 P1型、P2型の始まりはオミクロン株末期と推測されましたが、経過が波形上分かりやすい第7波からの検討とし、図2としました。

  図2:第7波以降の感染タイプ別感染者数(左図)と死亡者数(右図)

中央の下方矢印線は、感染者数から第7波収束と判断された日です。
P2型感染がコロナ死亡者の中核であり、P1型と死亡者数ピーク形成に差を認めます。
post第7波期で、感染者数、死亡者数共にP2型>P1型が鮮明になりました。

 感染波形から抽出した3タイプですから、P1型、P2型波形は当然図1の大都市圏型、中小都市圏型グラフに似ます。けれども、3タイプは別々の変異株が加わることによって図1の大都市圏型、小都市圏よりもはるかにピークを鮮明にしたグラフになりました。加えて、P3成分が分離されP2成分がより単純化されたことでも波形の鮮明化が得られた可能性が推測されます。
 死亡者数推移の右端を見ますと、P2型感染(地方型感染)が下降しつつあるのに、P1型感染(関東、関西超地方)が上昇する時間差が明らかので、2023/1/22現在の感染状況を如実に示しています。また第7波の死亡者数ピークが感染者ピークより遅れて現れるのは従来通りですが、post第7波期の死亡者ピークも感染者数ピークより同じく遅れているのを図2で認めます。
 些細な変化がグラフから読み取れるようになって、P1型~P3型のタイプ化が、感染状況との整合性を増した可能性が推測されます。感染者数減であるにも関わらず死亡者数増となった背景に、3変異株が関与して死亡原因を複雑にし、post第7波期に死亡者を増加させた可能性を推測しています。

 post第7波に関する限りですが、今や収束の気配濃厚です。図3を見ますと、感染者数や死亡者数が正常化するには、オーバーヒートした中小都市圏による大都市圏:中小都市圏が逆転し、少なくとも人口比の1.2:1に近づくことが今後の感染の道筋ではと推測されます。
 
      図3:post第7波の感染者数と死亡者数推移

左右の下方矢印線は、第7波収束を判断した日です。             
       中小都市圏の死亡者数増加傾向は、大都市圏よりも顕著な可能性があります。     
     人口比1.2:1を考慮すれば、とりあえず青線が赤線より上位になるのが正常化の指標。

 けれども、現在 rebound 中の大都市圏感染(もしくはP1型感染)が、1.2:1になるのは大変なことで、今後も大都市圏死亡者数増が長期に続く可能性もあるのは皮肉なことです。新型コロナ感染消退の兆しも無いまま、死亡者数増に耐えることになりかねません。

 こんな状況下でコロナ感染の5類化が決定されることに、私としては違和感を覚えます。国が決定することですから、豊富な情報を基にしてのことと思われます。後顧の憂いをなくすためにも情報の公表徹底化を切望します。 

              2023/1/23
              精神科 木暮龍雄



 

    




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