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第7波

 コロナ感染の舞台が、大都市圏(9都道府県)から中小都市圏(38府県)に移行したのは、オミクロン株から第7波に至る期間と思われます。大都市圏、中小都市圏感染なる変数設定は、感染が中央から地方へと広がる過程を大雑把ながら知りたかったためでしたが、タイミングがよかったと思っています。今日は遅ればせながらアルファ、デルタ、オミクロン各株の感染波形を基にして、両都市圏の感染の違いから話を進めたいと思っています。

 9都道府県数と38府県数とでは、対象数差に懸念があるかもしれませんが、2022年総務省の「統計でみる市区町村の姿2022」によれば、人口は大都市圏が68467(単位千):中小都市圏が58605(単位千)で、対比はほぼ同数の54%:46%(1.2:1)となりますから、比較するに十分と思われます。

        図1:大都市圏型のコロナ感染者数推移

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 大都市圏感染者数は、図1の3グラフにあって各グラフ中央に位置する濃青面の波形をさします。その3波形は、いずれも三角形もしくは放物線様波形のピークを中心に、上昇成分と下降成分がその前後に連続します。青棒状面の中小都市圏感染者波形は、大都市圏波形と常時間隔を維持し、類似した波形でその下面に位置します。上面の線グラフは、大都市圏感染者数、中小都市圏感染者数を併せた全感染者数となります。
 各株の大都市圏感染者数と中小都市圏感染者数のピーク差は、アルファ株2.2倍、デルタ2.6倍、オミクロン株2.8倍ですが、これには主として両都市圏の1.2倍の人口比、ウイルス感染力(感染者数)と都市機能レベル(人の移動、密度等)によって構成されるものと思われます。

 グラフ上、大都市圏優位型はオミクロン型BA.1型感染まで続きますが(図1最下段グラフ)、BA.2型感染後半になって、両都市圏で感染者数はほぼ等しくなり差を認めなくなります。
 波形重なりの発端は、オミクロン株2番目ピーク成分辺りです。感染者数が等しくなるということは、固定値の人口、都市機能レベルを除く感染者数が主因で、大都市圏で感染者数が減り、オミクロン株2番目から中小都市圏の感染者数が増えたことが背景にあると思われます。残念ながら、オミクロン3番目波形については有用な臨床情報が手元にありません。
 註1:9都道府県とは、オープンデータで感染者数トップ9の常連で、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県です。38中小都市圏は大都市圏以外の全てとなります。
 註2:オミクロン3番目ピーク成分を、グラフでBA.2.12.1型と記したのは入国時検疫から推定したものです。丁度この頃、同型感染国だったアメリカからの帰国者は日本では検疫不要となり、以後本邦におけるこの変異型による継続的確認は失われました。
 註3:グラフは全てデータを7日加算平均したものです。

   図2:オミクロン株から第7波へ、都市機能別の感染者数と死亡者数

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 BA.2.12.1型が、続く第7波とどのような関連をもっているのかを知りたく、再掲ですが図2を載せました。注目すべきは、感染者数も死亡者数も、第7波に入って両都市圏では等しくなる傾向が窺えることと思われます。
 第7波の感染者数には、その感染初期に大都市圏都市機能が残されているのが、薄青面部分がかなり残っていることから推測されます。これは新たなコロナ感染波の場合、勢いを得るために初期感染にはつきものと思われます。それでもオミクロン株に比べれば、第7波感染者数の両都市圏間差は著しく減少しているのは確かと思われます。
 死亡者数は、図2下段グラフの右側部分の第7波を見ますと両都市圏間に殆ど差を認めなくなります。都市機能(人の移動、人の密)に便乗して大都市圏をなめ尽くしたウイルスが日本国津々浦々まで染み込まんとする勢いを感じさせます。

 大都市圏優位の感染者数、死亡者数がベンチマークだったオミクロンBA.1型までの防疫体制では、中小都市圏の医療キャパシテイは第7波に伴う感染状況の激変について行くのは難しかったのではないでしょうか。平時は対応可能だった中小都市圏医療環境も、大量に発生する感染者に当然悲鳴を上げることになります。第7波に入った頃の6月下旬~7月は、死亡者数は大都市圏を上回る日が続き、以後も土曜休日等の人手が手薄な日々に大都市圏以上に死亡者が急増する事態を迎えるようになります。その詳細な経緯は、データを7日間加算処理したグラフでは認め難く、加算平均未処理の生データを経時的にチェックする必要があります。

 しかしながら、中小都市圏の都市機能ではこの事態を長期に受け入れる余裕はあるとは思えません。またウイルスにしても大都市圏よりも都市機能レベルが低い中小都市圏での旨味はすぐに消化してしまうでしょう。地域末端まで侵入を企むコロナですから、都市機能(人の移動、密度等)に依拠できないとあれば、行きつくところ都道府県人口に依拠した自然感染を頼りにする以外になさそうです。その辺りが少しでも分かればとの今回シリーズでしたので、中小都市圏の感染者数を更に中都市圏と小都市圏に分けて空間を広げ、同様の分類に従ったオミクロン株と比較することにしました。

 図3はその結果です。左側列のオミクロン株では明らかに優位な大都市圏型ですが、右側列の第7波では感染者数、死亡者数共に都市規模による優位差は著減し、全体の変化は感染広域化を推測させます。

          図3:オミクロン株→第7波:感染者数の3都市圏比

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 註3:人口、感染者数等を勘案して、滋賀県、沖縄県、鹿児島県、熊本県、三重県、福島県、岡山県、群馬県、栃木県、岐阜県、長野県、新潟県、宮城県、京都府、広島県、茨城県、静岡県の17府県を中都市圏とし、他21県を小都市圏としました。

           図4:都市規模別の人口割合い

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 ちなみに、3都市圏別人口をグラ化すると図4となります。第7波が今後人口に依拠する感染に変化するとあれば、その3都市圏グラフの今後暫くは第4図の人口構成グラフに近似していくのではと推測しています。現在では死亡者数グラフが人口構成グラフに最も近似しているようです。

 異型ながら、BA.2.12.1型に続いてBA.5型も大都市圏型感染の消退が見られるとあっては、広域化すればするほどどウイルス全体の活力が失われていく傾向を感じます。感染者数ゼロ県が、何時、何処に現れ、どのように広まっていくのかが当シリーズの最後の課題になることを望んでいます。
                  2022/9/10 精神科 木暮龍雄











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